はまじ本を出す

『はまじが本を出すなんてすごいなー』と地元の知り合いに驚かれた。まあ、そうだ。ぼくが本を出版するとは、誰もが思わないことだ。

二〇〇二年の二月に『ぼく、はまじ』(彩図社)の本を出した。なぜ本を出したかというと、二十六歳頃、興味からUFOの本を読みたくなり、本屋で気に入った本や月刊『ムー』を買って読んでいた。図書館にも行くようになった。

特に図書館にはよく行き、館内に入ると本がジャンル別に並べてある。多数の本があり圧倒された。UFO関連の本も大分ある。始めはUFO関係の本から読みだし、社会情勢のルポタージュ、人生訓、犯罪ルポ、自伝などを読んできた。いまは賞を受賞した日本のミステリー小説を読んでいる。さすが受賞した小説だ。読み始めから引きつけられ、思わぬ転回や結末に面白味があった。

そんなとき、自分も本を出せればいいよなと、図々しく思う。ぼくがこのようなミステリー小説などはムリだ。理由は簡単、アイデアがうまく浮かばないし、変な文章になることが主だから。元クラスメイトのさくらも本をたくさん出版している。

よし、さくらやサクラプロには何も言わないで悪いが、『はまじ』を使い自伝を書いてみるぞ、となり三十四歳の時、手書き原稿を自分流であったが、八カ月で三百枚ほど書き上げた。当時、二トントラックの運転手をしていて、昼飯時や待ち時間などにも原稿を書いている。家で焼酎のお茶割りを飲んでいる時も書いてはいた。まるで以前行っていた通信高校時代に戻ったようだった。

全部書き終えた瞬間は『よし、やったぞ!』と自分を励ました。

作家の脱稿はこんな感じかと思ったりした。書き上げると一度も読み返さず、次なる作業へ移った。

それは全てコピーを取ることだった。コンビニを一日何店も変え、一週間ほど掛けて行った。そして雑誌の公募ガイドの中から、自主出版会社の彩図社という出版社へ原稿コピーを送った。なぜここに決めたかと言うと、出版本の料金がそこの社だけ出ていたから、ここなら安心できると思い決めた。他社は出版料金が掲載されていなかった。

一週間後、彩図社から電話がある。浜崎さんは『はまじ』なんですよね。と笑いながら聞いてきた。『はまじ』から原稿が来たのが意外らしく、検討しているようだった。

三、四日後に電話があり、文を直すのとサクラプロさんから『はまじ』の絵を貰うこと。それに『ちびまるこちゃん』に添うこと。

それが条件になった。ダメなら出版はムリとなる。

早速、サクラプロダクションの住所を調べ出す。当時東京に住んでいた妹へサクラプロの住所をタウンページで調べてくれと電話をした。折り返しの返事は、サクラプロはどこにも電話番号が掲載されていないというではないか。困ったことになり、アニメ漫画を放送しているフジテレビの電話番号を聞いた。そしてフジテレビへ掛けてみたが教え出来ないと言われた。彩図社もわからない。これでは手紙も出せやしない。どうしようか。考えに考えたら一人さくらと仲がいいヤツがいた。それは山田かよちゃんだ。彼女へ聞けば間違いない。早速かよちゃんに電話をした。だが母が出ていないという。四回目で繋がり、いきなりサクラプロの所在を聞いたが教えてくれず、事情を話したら驚いて教えてくれた。『やっと所在がわかった』となり所在がわかるまで数日を費やしたことになる。そして『はまじ』の絵を貰えないかと経緯を述べ、文面を丁重に考えて手紙を出すと、結果を待つことになった。

数日後、サッカー観戦から帰って来た夜の十二時頃に電話が鳴った。あーイタズラ電話だと思い受話器を取ったらなんと、聞き覚えのある声であった。『はまじ、私さくらだけど……』ぼくは『えっ、さくらか?』となり驚いた。『ほんとにさくらかー』と何回も連呼していた。『そうだよ、私だよ』とさくらも何度も言っている。あまりの本人から電話が掛かってきたことが信じられず舞い上がっていた。ぼくはテンションが一挙に上がり、昔話しに盛り上がった。四十分位会話をし、絵を貰えることに決まった。ぼくはまた嬉しくなりお礼も連呼した。さくらははまじが本を出すなんて偉くなったねと、誉めていた。そのときなぜか先生に誉められている様な感じだった。その夜はさくらと話したことや絵を貰えることで頭の中が嬉しさでなかなか寝付けなかった。さくら様々な日であった。

よし、絵は貰えることになったので次は文の手直し作業になる。ぼくの文章はメチャクチャだった。なんたって読み返しをしていないので、変な文章になっている。読み返しをすると、初めてメチャクチャな文章と気づいた。そしてノロノロと徐々に直していくがとても面倒くさい。どっちにしろワープロに起こすことになるので、一次その手直し作業を中止してくれとなる。ぼくはそのとき解放されたと思い助かった。だが追加の文を書かされた。ちゃんと書いたら何度も見直せとなる。原稿の文はぼくが上京し、編集者と徹夜で重要な箇所をワープロで打ち同時に手直しをした。他の所は編集者が直してくれた。大変に感謝した。自分の文を何度も何度も読んでいると、とても苦痛の一言だ。多分、このようなことを作家やもの書きの人はは何度も行い訓練していくのだなとつくづく思った。その後デビューしていくのだとも感じた。手直しが終わっても追加文が何度もあり作文浸けになる。不思議と編集者は徐々に文がよくなっているよと、年下で辛口編集者に少し誉められた。書くことと見直すことで文がよくなったのか。小学三年から四年に進級した感じだと編集者に言われた。全ての作業が終わっても、ぼくは居残り小学生のようにまだ文章を書かされていた。編集者が文章のトレーニングをしてくれている。ぼくは最初ブーたれた。だが編集者は、書いてるとだんだんよくなっているからとおだてられ、書いていた。どうやらアメとムチを上手く使い分けているようだ。とにかく何のネタでもいいから書けとなった。だが電話で添削を受けている時は相変わらずの辛口攻撃であった。その時の心中は、チキショウいつか文章で見返してやるからな。それか編集者になって現れてやるからなとも思っていた。だけど自分が編集者になれたとしても、とんでもなく売れない本が出来上がり、社長や作家にすぐ怪訝されるだろう。

 日々が経ち、ワープロ原稿がとうとう完成した。それを送られて来た時は感動だった。印刷屋に入稿して、本の元が完成した。ゲラ刷りが出来た。それにはサクラプロさんから貰った挿絵も入っていて、送られて来たときはまた感動し半涙であった。そして最後のチェックをして、とうとう自分の本が出来るのだと鳥肌もたった。

最後に本のタイトルを考えることになる。ぼくは仮題で『はまじ心』『Theはまじ』『浜崎はまじ』と三つ考えていた。しかしどれもダメとなり出版社で考えた『僕、はまじ』に決定した。初め何だそれ、となった。理由は題に『ぼく』ってダセーなと感じていたからだ。だが結果的にはよかったのだ。表紙漫画の絵もサクラプロさんから貰えて、出版が可能になった。このような段階で出版が出来た。友人達やさくらももこさんとサクラプロの方々、彩図社編集者のお陰です。有り難うございました。

二〇〇二年二月の出版の日に清水の書店へ行ったら本が並んでいた。その時、『おーあるな』となぜか少し恥ずかしかった。自分の本が書店にあるのだと素通りした。だれも見ない。はたして売れるのか疑問だ。

朝の目覚ましテレビでも紹介したと、弟の奥さんから電話で知りビックリ仰天した。友人、知人から電話が掛かって来たり、ぼくが意外にも本を出したことで、みんな驚ろいていた。あのはまじが本を出すとは……。

ある日、ハローワークへ行ってみると受付の人に『はまじ』だとバレた。その時はかなり気まずかった。職業を探す所で知り合いに会うのはお互いに気まずい感じがある。その受付にバレたので十倍位恥ずかしいことだった。今後、職安に行くたびに『まだ職探し』と思われる。そして郵便局の職場でも少数の人にバレて仕事がしにくくなった。やっぱりそれだけ本を出した威力の結果だ。それと本を読んでくれた全国の方々から手紙を頂き有り難うございました。お礼の返事をみんなに返した。とても反響があって自分でも驚きだ。自分がよく通う図書館にも並んでよかった。

その後月日が経ち、古本屋に行ったら古本としてあった時、少しガックリした。一度読めば内容が解り、いらなくなる気持ちは自分でもわかるが、へこんだ。          

 その年の十月頃、リサイクルショップで中古ワープロを二千円で買った。なぜ買ったかというと、以前出版社の社長が『ワープロを覚えれば原稿書くのが全然楽だよ』と言われていた。ぼくはその言葉を頭から離れず機会があったら欲しいなと思っていた。そんな時に買う機会があり買った。

早速、家で中古ワープロの電源を入れ、分厚い説明書を見て四苦八苦しながらいじり出す。その日、書式とか関係なく、たった四行打つのに四時間位掛かった。ぼくはどこが楽なもんかと思った。しかも疲れる。次の日も次の日も毎日ワープロで文を打っていた。だんだんキーの位置を覚え、買った日から二週間後に『自家用車』についての文が書式設定をして完成した。はじめて自分でのワープロ文だ。果たして二千円のワープロは印字出来るのか印刷してみた。なんと印字出来た。初めて印刷された文を見たとき自分で全部やったんだと、本を出しているくせに自我自賛していた。ワープロだと挿入が出来るので原稿がきれいに仕上がる。そして彩図社社長の言ったことはやはり、慣れれば本当に楽だとつくづく思った。フロッピーで文章も保存でき便利だ。手書きで書いてた時は間違えた所を塗り潰し、その横に小さく書いたり、大幅に文をペンで塗り潰したりで原稿用紙がきたないことが多々あった。だがワープロで仕上げたのはそれがない。が文がダメだと意味がない。 それからの日々、自分が体験したことや思ったり感じたことを文章で書いていた。ほぼ毎日ワープロを打っている。誰かに依頼されたとか、締め切りがあるとかではない。自分の意志でワープロをやっているだけで苦ではない。だけど原稿が完成していて編集者からの追加文だと苦である。(実は今現在九月二十日に今回の本の追加文を二千円ワープロで打っている)

 年が明け正月もワープロを打っていた。郵便配達のアルバイトをしていたので正月も仕事だ。いつもの日と変わらなかった。ワープロをいじらない日もあった。そのような日はネタがないときだ。ネタが出てくるとまたワープロにはまるのだ。そんな日を繰り返すと原稿もだんだん増えて来た。

五月中頃、郵便配達のバイトをやめた。一年程前に原稿用紙に書いてあった体験談をワープロに起こそうと、文を直しがてら打ちだした。この作業を一カ月半掛けやったら、原稿がかなり増えた。最近の出来事文を入れたら本に出来る位の原稿がある。出来ることならまた本にしたくなった。そして七月上旬から今まで打った原稿の直しに入った。この作業がとても辛い。一カ月後、自分では終了した。次なる段階を踏む。ぼくはまた公募ガイドなどで見つけ原稿を送ろうと思った。その前にサクラプロさんに許可を取ろうと、八月一日に電話をした。するとOKの返事がもらえた。そればかりではなく、出版社まで紹介をしてくれるではないか。とてもありがたかった。昨年お世話になったサクラプロさんなのへさらなる感謝だった。

紹介してもらったのが、この徳間書店だ。この出版社を紹介されたとき正直びびった。図書館や書店でこの出版社の名を知ったている。大手の出版社だと。そして編集者の石井健資さんを紹介してもらった。この人は以前、徳間書店からさくらの本を出版したときの担当編集者だった。    

そして恐る恐る石井さんの携帯へ電話をした。はたしてぼくのことがサクラプロから伝わっているかと。すると留守伝だった。『大きな出版社だし多忙なんだ』と思い、自分の身分を留守伝に伝えた。

数分後、石井さんから電話がきて原稿を送ってくれと言われ、早速送った。

数日後、石井さんからの総評はダメである。起承転結が弱いし、ぼくの苦手な『ちびまるこちゃん』に寄り添っていないと言われる。

やはり彩図社と同じだ。ぼくは石井さんへ電話であるが出版したい意向を伝えるとやってみましょうとなり、それから追加の文を書くことになる。石井さんと電話でのやり取りは毎回穏やかな口調でちょっと不思議だった。徳間書店の編集者となればかなり忙しいと感じるので、とても荒い人とイメージで思った。ところが気長な性格なのか穏やかな人だった。

 石井さんはさくらの本を自社から出版している。さくらと一緒に取材にも同行しているではないか。『ももこのトンデモ大冒険』には石井さんの顔写真も出ている。ぼくはそれを見たとき、これが石井さんかと。この本を読むとさくらへ気を使うし、とても親しいんだとも感じた。

そんな石井さんは、さくらの本『富士山』という本に全身が写真で出ている。それを読んだときまた驚いた。さくらと友達のようだ。

実はより驚くこともある。ぼくはよく本屋へ行くのだが、大きな本屋に行くと、図書館のようにジャンル別に棚がある。神秘やUFO関連コーナーもあり、そこへ行ったら徳間書店の本がたくさんあるではないか。今までそのコーナーで出版社など意識していなかった。

 出版社を見るとほぼ徳間書店だ。しかも編集者はすべて石井健資さんだった。『えっ、すげー』と。これにはびびった。石井さんてUFO好きなのかと、ちょっと師匠のように感じてしまう。

石井さんに聞いてみたら、やはりUFO関係の話しが大好きとのこと。この人は秘密の話しを知っているだろうと、いつか聞いてみたいものだ。そんなこともあり徳間書店の石井健資さんへお世話になる。ちなみに石井さんは昔の予備校生の風体だ。これがこの本までの経緯である。ぜひ読んでいただきたい。    

 ぼくは前回の本を出して、いろんな経験をさせてもらい人間的にも向上した感じだ。今回もはまじの本を出版してまた、自分が向上することだろう。でも向上しなかった場合は、寅さんの口上でもしらっくら言うしかないか。


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