第38話「魔王軍、────立つッッ!(前編)」
間諜報告第8報【緊急】
『超至急伝!』直接魔王様にとどけること!
拝啓、魔王様───。
危急につき直送します。
前回報告から日を置かずの再報告をご容赦ください。
それでは、取り急ぎ用件のみ。
勇者パーティの動向を察知したので続報をおくるものです。
これは確度の高い情報筋より入手したものです。信頼度は99%。
さて
勇者パーティの次なる目標は、海路にて魔王領への上陸───及び魔王城への直接侵攻する見込みです。
大至急、対応行動を進言します。
魔王軍四天王、隠密のヴァイパーより、敬具。
まる
追伸、
そろそろ有給休暇が溜まってきているのですが、取得方法を確認したく思います。
また、休日出勤分の代休の買い上げは可能か、魔王府人事部に連絡願います。
まる
※ ※
まる…………。
……まる?
「って……」
ま、
「……まる────じゃねぇぇぇええええ!!」
うがーーーーー!
報告書をグシャグシャと丸めた魔王。
もう、ぐっしゃぐしゃに!!
二度と開かないで良いとばかりにグッシャグシャ。
そんでもって、
「ぬがーーーーーーーーーーーーーー!!」
窓を開けて、「そぉい!!」とぶん投げる!!
「もーーーーーーーー!!」
もう!!
もぉう!!
「───遅いッッ!!」
遅い!!
遅いッ!!
「一歩、遅いッちゅうねん!! この情報大事よ?! むしろ、今までで一番大事よ……!」
大事なんだけどぉぉぉおお!!
「魔王軍壊滅してから言うなっつーーーーーーのーーーーーー!」
「あはははは~」
力なく笑うシェイラに対し、魔王様大激怒。
もう、備品ぶっ壊しまくり。枕をぼっすんぼっすんと殴って中の綿をイジメ倒す。
「どーーーーーーーーすんのよ、もーーーーーーーー!!」
勇者、来ちゃったじゃない!?
海を渡ってこっち来るじゃない?!
魔王を殺しに来ちゃうじゃない?!
「どーーーーやって対抗すんのよ! もーーーーー!! あと、休暇なんてあるかボケぇぇえええ!!」
もう!!
「どーーーーーーーーーしよう?! ねぇ、ねぇえええ、姉ぇぇええ!!」
どうしよう!
どうしよう!!
ねぇ!!
ねぇぇぇえ、シェーーーーーイラぁぁぁあ!
「───し~らないっと」
シェイラにつめよる魔王だが、プイっとそっぽを向かれてしまう。
「いやいやいや、なんかアイデアだしてよ。ねぇええ!!」
そう言われては仕方ないとばかりに、シェイラは少し考える素振り。
う~ん、と中空を睨み付け、
「…………………………無理ぽ」
いや!
いやいやいや!!
「なんかあるでしょ?! なんかーーーーー!!」
「ねーよ。万策尽きたっつーの……」
どこか投げやりな態度のシェイラ。
再建し、最後の戦いに臨もうとしていたところを───ヴァンプによって壊滅させられたのだ。
もう、こればっかりは……もうこれ以上はどうしようもない。
先日、人材だって根こそぎ費やしたばかり。
つまりスッカラカン。
「いや、そこをなんとかぁぁあ!!」
うっせ…………。
「あーもう。…………一個だけありますよ」
シェイラはそれこそ、蜘蛛の糸のように救いの一手を差し出した。
「マジか?! なに? なになになに??」
その一手とは、いかに───……。
「───降伏しましょう」
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