穢れなき大僧正
第9話「勇者パーティの攻勢」
大陸において、魔王軍の大部隊を打ち破った勇者パーティ。
次なる目標は占領された村々の開放と、滅ぼされた国々の復興だ。
魔王軍も大打撃を受けたらしく、軍の動きが著しく鈍化している。
そのため、追撃と戦果の拡張のため唯一の遊撃戦力にして最大戦力である勇者パーティによる攻撃が決定した。
まず当面の目標として、魔族の占領地域の開放だが、駐留している魔王軍を撃破しなければならない。
しかし、広範囲に分散している魔王軍を一つ一つ叩いていては効率が悪すぎるので、まずは分散している魔王軍の補給を一手に担っている大規模の補給処の攻略を決定。
補給を絶ち、分散している魔族を兵糧攻めにしようという作戦だ。
もちろん、略奪を誘発する恐れがあるので一番の目的は、兵糧攻めの姿勢を明らかにし、補給処の再奪還に乗り出した魔族を攻撃することだった。
籠城戦ではなく、有利な場所での決戦を企図していた────。
──ぴゅううぅぅぅ~……。
そして、勇者一行は既に魔族軍の最大の補給処────
もちろん斥候ヴァンプの活躍あればこそだ。
すでにヴァンプの働きは勇者パーティになくてはならない者であり、最初は懐疑的であったメンバーも徐々にヴァンプを信頼し始めていた。
入隊した当初の、ヒョロリとしたひ弱な印象を覆す程の俊敏な動きと静粛性。
そして何よりも目立たず、印象の薄さから来るのはまさに影。
その影の薄さを生かした、敵陣への浸透力はまさに驚愕の一言だ……。
「勇者ナナミ」を除くパーティの面々でも、時々ヴァンプの顔を忘れそうになるほどだから───本当に相当なものである。
で、ヴァンプ。
「───見るッス! 聞くッス! ほらほらアソコ!! あれこそが連合軍が血眼になって探していた魔王軍の補給拠点ッス!! 俺ッチ、何日も調査してようやく見つけたッス! 凄い? ヴァンプさん凄いっしょ!? んで、見てよ聞いてよ! あの
「「「うるさいッ」」」
聞かれてもいないことまでペラペラと話すヴァンプに、オーディ、サオリ、クリスティが揃って抗議。
勇者ナナミはニッコリ。
「…………さーせん。───申し訳ないッス」
シュ~ンと反省して見せるヴァンプは全身泥まみれでちょっと臭う。
補給処の捜索と、規模解明のためついさっきまで肉薄していたらしい。
たった一人で偵察活動を終えると、勇者パーティを現場に呼んで、報告していたのだ。
ちなみにまだ泥の中に突っ伏している。本人曰く───補給処から見つからないようにするための偽装らしい。
「いや……。静かにしてくれればそれでいいのよ」
「あぁ、言い過ぎたな。──それにしても、よくここまで調べたな」
「ホント……!──凄いね。まるで魔王軍の使っている地図を映したみたい」
ドキ。
「わー! ヴァンプ凄い、凄い! これが補給処の詳細図なんだね?!」
少しばかり感心している三人に比べてナナミだけは手放しでヴァンプを褒める。
「そっス! 地べたを這いずり回って、近くまで行ってメモッて来たッス。スケルトンは感覚が鈍いから、さほど難しくないっスよ────ちょ、お嬢、近い近い!!」
泥の中から半身を起こしているヴァンプに、うっすい胸を押し付けるようにして、その顔に縋りつくナナミ。
先日、ベッドに潜り込んできて以来、やたらとヴァンプに懐くようになったんだけど……。なんで?
あ。王族から庇ったからかな?
……──まぁ、いいや。
「───って、お嬢……丸見えっす」
「??…………───キャア!」
ガッツン!!
──────いっだ!!!
いいいいっだぁぁああ!!
今、靴の硬いとこで蹴ったよね?──よね!!??
うわ、内出血してるし……。
「───いった~~~!!……お嬢、いてーッスよ。あと、一応は敵地なんだから、静かにしてくださいッス────あ、お嬢。今日は白いパン」
グシャ!!
「──きゃぁ、もーーー! 見ないでよッ!」
「……うぐぐぐ。じゃあ、しゃがまないで欲しいッス。っていうか、間髪入れず踏まないで欲しいッス!!」
ヴァンプの頭にクッキリと靴の跡。
目線だけを上に向けたヴァンプの目の前には、ナナミのスラッとした足と、その付け根が───。
……白で水玉───か、うむ。優秀──ガンッッ「見るなって言ってるでしょ! もー♪」
いって~……!!
い、痛ぁぁぁああ!!
勇者パワーで頭を踏むとか……この子、絶対俺のこと殺しに来てるよね?
うわ……。
なんか、頭がブヨブヨしてる──?!
つーかね。勇者だからって、舐めプ全開でヒラヒラした服着てるってのも……。
まぁいいか。
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