第30話「こいつぁやべぇ……!」
アカン。
この人怖い……。
バレてるのもヤバイけど、コイツが一番ヤバイ。
何か知らんけど、気に入られたのが一番やべぇぇぇえ!!
「だから! 人間ですってば!! ニ・ン・ゲ・ン。オレーニンゲンデス!」
「素晴らしい! いつかこんな日が! こんな人が現れると信じて、アタシはずっと耐えてきたッ!」
だ、ダメだ……。
この人言葉が通じてない。
なんか、違う世界にトリップしてる。
目つきやべーし、瞳が何かグルグルと渦巻いてる。
……完全にイッちゃってる人の目だわ。
「さぁ、抗いましょう!」
あ、やばい。
演説モードだ。
「さぁ一緒に!! アタシと一緒に!! 時の牢獄に───世界の鎖に! 不老という呪いに!!」
さぁ、ヴァンプ!!
「共に生きましょう!」
「嫌です」
「共に歩みましょう!!」
「ゴメン被ります」
「共に生みましょう!!!」
「訴えますよ?」
「共に世界に抗いましょう!!!!」
「電波受信してます?」
ともに!
共に!!
TOMONI!!
「トモニセイヲツムゴウデハアリマセンカっ!」
あ、ダメだこの人……。
もう何も見えてない。完全に心がどこかに旅行中だ。
あ…………なるほど。
コイツは言っていたな───心が死ぬと。
つまり、
コイツもなんだかんだで心が壊れているのだろう。
それが長命種、不老種の死なのだ。
つまりコイツは喋れるだけの死体? 不老種のグールのようなもの……?
「は……!」
クソくらえだ。
そんな奴と共に歩める道などどこにもありはしない。
「丁重にお断りさせてもらいます」
はい。もう、それはそれは丁寧に、ね。
「ど、ドウシテアタシヲウケイレナイノ? なぜコトワルノ? アナタもユウキュウのときのロウゴクニトラワレテイルはずナノニィィィィイ……!」
バリバリと頭を掻きむしるサオリ。
髪がザンザラバンになって死霊みたいだ。
「……いや、俺ッチもう心に決めているのがあるッス」
うん。
「任務」という恋人がね。うん……。だって社会人ですもの。
「ナンデスッテェェェェェエエエ!!」
それを聞いたサオリは怒髪天をつくと言った表情でヴァンプに詰め寄る。
ここまでくれば、もう美貌など関係ない。
ただただ怖い。
だって
「ダレよ!! だれガアタシのヴァンプをぉぉおおオオ!!」
だれがお前のヴァンプやねん!!
つーか、ヤバイ!
さっきから大声出してるのに、誰も来ない??
なんかおかしい───……って!!
「ちょ! こ、これなんスか!? え、結界?!」
よくよく周囲を確認すればうっすらと透明のドームのようなものにヴァンプ達はスッポリト覆われていた。
半径10mほどの半球体。
そして、時折光を受けてキラリと輝くそれは古代魔術の文字がパリリッと走る。
「……古代魔術───隔離結界?!」
うっそ、メッチャ高度のやつやん!!
どうりで
占領した補給処には軍隊が詰めていて往来も激しいというのに、まったく誰も気づかないかと思えばそう言う事?!
最初っから、ヴァンプが目当てで閉じ込めてたの??
「や、やべぇ……」
コイツはやべぇぇ……!
「サァぁぁあ、ヴァンプぅぅうう……! そのオンナのナマエを言ェェェエ!!」
ひぇぇぇぇえ!!
サオリさん、全身に魔力が
なんか、岩のような、簡易ゴーレムのような球体がフワフワと舞っておりますよ?
え、なにそれ?
ファン〇ル?!
え、俺殺されちゃう?!
「ヴァンプゥゥゥゥゥウウウウウ!!」
ひぇぇぇぇぇええ!!
この人やべーーーーーーーー!!
「四肢ヲ捥イデツレ帰ッテモイイノヨぉぉぉオオオお!」
あ、ダメだ。
任務以前に、俺……生きて帰れない───。
(申し訳ありません、魔王さ───)
───バリィィィィイイイイイン!!
「ひぇぇぇえ!?」
遂に攻撃されたかと思いヴァンプが首を竦める。
四肢を捥がれて、ペットとしてサオリに連れ去られる……って、あれ?
「変な気配がすると思ったら」
こ、この声……。
「ちぃ……ジャマヲするナァァああ」
「ゴメンね、ヴァンプ───来るのが遅れちゃって……」
そう言ってヴァンプの前に敢然と立つのは……あぁ───幼き身に世界の命運を担った一人に少女。
……世界最強の戦士にして、一人の恋する乙女。
ゆ、
「勇者ナナミ……」
そして、
そして……!!
───魔族の怨敵!!
「助けに来たよ、ヴァンプ」
ニコリ。
ナナミはそうしていい笑顔でヴァンプに振り返る。
ギンギラギンに輝く聖剣を手にして───。
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