第22話 黒髪解放戦線
騎士というものを遊びなのか本気なのかわからないでやってるようなヤツに、『ごっこ』呼ばわりされた……。
「えー、コホン。街の安全を守る聖刻騎士団団長としては、国家転覆などという不遜な行いには加担しないし、せいぜいごっこ遊びで終わって欲しいところだが、この黒髪たちへの圧迫はやはり見逃すわけにはいかない」
シーラが演説する。こいつのことだ、半分はおふざけだろう……。
「アサクラ。言い出したのはお前だ。聖刻騎士団の一員として、そして、なによりも……『偽人』の一人として、黒髪街排斥問題の矢面に立つ覚悟がお前にはあるんだな?」
「え……?」
俺? というかシーラ、その目は完全に……。
マジで言ってる時の目だ。
「『革命』なんて大それたことはきっと不可能だ。しかし、この弾圧に抵抗するとあれば、アタシはなりふり構わず力を貸すぞアサクラ!」
「え、つまり?」
「現王国を維持したまま、世の中を変えるのだ。そして、言い出したのはお前だ、お前が規範を示せ」
「けど、こんな勢いで決めるなんて急すぎるのでは……」
「アサクラ! お前以外に今、誰が動くというのだ! 他ならぬお前自身が他人任せにしてしまってどうする!?」
……まったく、酷いやつだ。コイツ自身、自分の『仕事』の件など、まったく正しくない奴だってのに、こんな時だけ棚上げだし、また無駄な正義感が顔を出している。
しかし、シーラのこういうところが、俺はどうにも嫌いになれない。
「……分かった。責任と犠牲は払うよ」
「ちょっと、あんた何勝手に決めてんのさ!」、カラス少年が声を上げた。
「確かに信用できないと思う。勝手に盛り上がってごめん。……けど、ここの立ち退きに異議のある人間と一緒に俺は出来るだけのことをする。
それが俺が矢面に立ち、リスクを引き受ける事なら、いいだろう、やってやる!」
「聞いたか黒髪!」と、レオンハート。
「ふむ……。アサクラくんと言ったか、君、なかなか面白いこと考えるな」
アニキさんの声色からはイマイチ何を考えているのか判断ができない。
「じゃあ、ゴネてみるか。やるだけやってみるのも……悪くはないわな……。
良いのか、あんた? 正直楽ではないだろし、あんた、別に俺たちに借りがあるわけでもないだろ?」
「借りがないと協力しちゃいけないなんて決まりもないだろ?」、俺は答える。
「悪くない、悪くないよあんた……! 乗った! やろう。な、カラス?」
「レニーがそう言うなら……でも、何をすればいいんだろう?」
「アサクラ! なんでもいいから意見を出せ!」
お前、やっぱりノープランなんだな……。
その間、ずっと黙りこくっているアレックス君が気になった。まずは……彼を取り込まないと勝機がない事は俺にも分かっている。
そうだな。まずは彼を味方につけるのもが先決だ。なら……
「まず俺たちは、エルドリッチ・ルーサー大臣殺害犯を見つけ出す!」
そして、騎士団とのつながりを証明できれば排斥側の力を弱めることも可能かもしれない。
「俺たち黒髪の権利を犯す騎士団の好きにさせるか。奴らを弾糾し、……ついでに黒髪街を取り戻す。最終的には勝ち取ってやろう自由と平等!」
我ながら無茶苦茶だとは理解しつつ、でも、やらないよりはいい。
やらずに後悔するより、やって後悔しろ。それは、俺の世界ではよく唱えられる決まり文句だ。
果たして、『普通の高校生』になにができるのかは分からないままだけど。
それでも、やる。ただ『やる』のだ。やらないよりマシだと信じて。
かくして、『黒髪解放戦線』は結成した。
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