第46話 薬莢事件 エピローグ
ナッツを一つ摘む。
口に運ぶ。
なんかローストしてあるみたいだし、一見種子っぽいので多分ナッツであっているんだろう。味はしょっぱい。
だからたぶんナッツで、それを例のドクペ味のする飲料で流し込む。
ポリポリ。
グビグビ。
胃の腑に妙に熱を感じるが、あくまでアルコールに準ずる飲料であってたぶんアルコールではないのである。
こちらの国の飲酒可能年齢がいくつかは知らないが、日本国の俺には日本の法が以前適応されるのである。たぶん。
「おーおーアサクラー? ペース早いぞー? お姉さん酔いつぶれても知らんぞー?」
と、なんかパワハラ上司みたいなのが絡んできている。なお、この上司はといえば既にジョッキを一つ空けている。そろそろ2つ目が物凄い速度で飲み干されようとしていた。
そのチッコイ身体のどこにそれだけの液体が詰まってる?
そして、そんなシーラの隣では、
「王子……かわいい……」
と、美人のお姉さんが喜々としてお酌をしている。
どういう店なんだここは。
一方の、俺のペースが早いのには理由がある。
ハッキリ言って……、自棄ドクペだからだ。
本日の、自分の至らなさ弱さ情けなさを思い出すだけで非常に自己嫌悪に嵌って抜け出せなくなりそうになる。
そんなとき、露骨に体に悪そうなこの液体は思考力をいい感じに奪ってくれるような気がして……
ポリポリ。
グビグビ。
「勝利の美酒はもっと味わって飲むべきだぜ、アサクラ少年?」
「勝利……って、いえるのかね……」
お前の活躍が無ければどうなっていたことか、とまでは本人を前にしては言えない。が、引導を渡すのが俺だけであったならば、あの後の展開は、最低でも子供が一人犠牲になっていたことは確かだ。
そして……最終的には、犯人は死亡して幕が引かれた。
「どこが……勝ったっていえるんだよ」
「まーまー、そういったって起こってしまったことは変えられまい。
アサクラだって十分頑張った。上司のアタシが褒めてやろう。誰も犠牲にならなかった。万々歳だ……」
「犠牲は出なかった……か……」
だから、犠牲が出なかったのはお前のおかげで、だけどな。
……あ、何か俺って今普通に、飲み屋で上司に愚痴聞いてもらってる部下っぽい立場になってる……(『上司の愚痴を言っている』部下ではない)。
「……それに、飲むなら楽しくにょめ。シケたツラしてて飲まれる酒がもったいにゃいのにゃ」
あ、久々に猫化した。
……つか、酒って言ったような気がするのは俺の空耳に違いない。だから酒ではない。
シーラの隣では美人のおねーさんことカンナ嬢が、ドクペ酔いによる猫化現象に目をキラキラさせた視線を送っている。
……だから何やってんねんお前ら(ドクペ酔いによる関西弁化現象)。
そうこう、酔っぱらいが二人飲んだくれていると……、
「レオンハート卿! シーラ・レオンハート卿はいるかー!?」
と、今回の舞台最大の主役が満を持して酒場に現れたのだった。
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