第48話 AAA,Copy

 視界がまわる。

 ぐるぐる、と。

 あのスマホが複製品なわけない。

 なぜ複製品だって言うんだ?


 だって……あれは転移する以前から、ずっと俺の手元にあった。


 どこかですり替えられた?

 いつ? 誰が? なんのために。


 アレが複製だというのなら……


 俺は、俺の記憶は、何だ?


「カイ?」

「悪い……」


 俺、席外すわ。


 ゆらゆらと立ち上がり、ひとまずの飲食の代金をその場に適当に置いておく。


 グラグラと脳が揺れるようなのはきっと、飲みまくっていたドクペの効果だけではないだろう。とにかく、今の自分には外の冷たい空気が必要だ。


 息が、詰まりそうだった。


 転がるように店を出て、路地裏へと身を隠す。

 どこか冷たい夜風が、少し火照った頬を撫でた。


 この夜の暗さには、俺はまだ慣れていない。

 俺が元居た世界では……夜は比較にならないぐらい明るかった。


 元居た世界。


 そんなものが本当に存在するとでも……? と、存在しない批判者の声が頭の中で嘲る。

 そして、それに反論できる証拠は、俺の頭の中に詰まった、俺だけが知っている、『記憶』だけだった。


 記憶。それ以外は、偽物。


 視界が揺れる。

 ぐるぐる、ぐるぐると。

 視界が黒く染まる。

 意識が遠のく。

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普通の高校生が異世界に迷い込んだけど、別世界出身だと誰も信じてくれない話。通称「ふつまよ」 椎名アマネ @shiina0102

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