第39話 証拠
「いや……やっぱりなかなか見込みがあるヤツだな! うむ、アタシが見込んだだけはある!」
な、――!?
なんか褒められたし!?
「そ、それより! 追わなくて大丈夫なのか!?」
「追いかけたいのはヤマヤマだが、お前がぶっ倒れているのを放ってはおけまい?」
「申し訳ねぇ!!!」
ダメだ、思いっきり足を引っ張っている。
「立てるか?」と、シーラ。
「それが……、肩貸してもらってもいいかな?」
……なんというか、全身が虚脱しきっているような状態だった。
よく、『魔力とは生命エネルギーで云々』というどこかで聞いたことのあるような設定があるが、実際、魔法銃一発撃った結果、元々手持ちが少ないだろう魔力とやらをごっそり持っていかれたらしく、フルマラソン走り抜けた(やったことないけど)後のように足腰からは力が抜けていた。
……あと、意識的にも眠気が凄い。このまま倒れたら間違いなく寝落ちする……。
幸か不幸か、そのせいで左腕の傷は、どこか身体から遠く離れたところから痛みを放っているように感じる。
「相変わらず……世話が焼けるヤツだ」
と、いつぞや出会ったときのようにシーラは俺の身体を支える。
小柄な癖に何気に筋力あるんだもんなー……。
「先に……一つ確認しておきたい事がある……」
既に寝落ちしかけながら、俺は一つは注文をつける。
「ヤツの……泊まった部屋……」
「調べるのか?」
「おう」
宿屋の主人は先程の銃声に恐れをなしたのか、簡単に口を割った。
合鍵を引ったくると、俺たちは犯人が借りた部屋に侵入する。
殺風景な、辛うじて眠ることぐらいにしか使えない一室。
襲撃時に着ていたコートが床の上に放置されている。
「ヤツの……銃……」
「分かった!」
コートの内側をまさぐり、見つからなかったのだろう、シーラはそれを投げ捨てる。
他にありそうな場所は……。
ベッドサイドの小机には無い。
ひとまず、俺は椅子に腰掛ける。
……このままシーラの家にまで歩いて帰るのはなかなか大変そうだ……体力……持つだろうか……。
どうにも、魔法銃の発砲はリスキー過ぎる。
一撃で一人倒せれば御の字なのだから、複数人を相手にしたなら、一発撃ってヘトヘトになる以上、後はやられっぱなしって事にならないかこれ?
「むー……、見当たらんぞ……!」
元々隠すところが少ないもんな。
机の引き出しにも無いようだ、と確認し、辛うじて出来る手伝いする。
机の引き出しが二重底……みたいなトリックも無かった。
しかし……犯人が手元に持って無い以上どこかに隠してるはずなのだが。
部屋以外に隠してるとなれば探しようが……。
……眠い。
あ、ヤバイこれ。
むしろ心地良い意識の消失感が……。
「アサクラーー!?」
ばたり。
と、今度は頭部を強打する痛みで無理やり目覚めさせられた。
椅子から寝落ちして転げ落ちたらしい。
傷んでささくれだった木の床のトゲトゲした感触を右頬に感じながら、俺の視線はベッド下の暗闇を凝視する。
エロ本の隠し場所の基本中の基本はベッドの下……。
……という謎理論を思い出したのは脳が半分寝てたからに違いない。
しかし、その隙間に腕を突っ込んだところ、何か硬いものを包んだ布の感触があった。
「……見っけ☆」
眠気と疲れで自分がキャラ崩壊をしかけている気がするが――見つけた包の中には確かに、俺の世界では一般的な形をした機械式の銃があった。
そして、いよいよ抗いきれない睡眠欲の中へと俺は落ちていく……。
「ア・サ・ク・ラ騎士見習い!? 任務中に寝るとは何事かーーっ!?」
という騒々しい声でさえ、今の俺には子守唄だった。
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