第27話 そのような甘言飲んでやるものか

;しばらく更新が空いた理由は近況にて。別に大した理由じゃないし、逃げてねーし!(作者)


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「アサクラが妙な表情でこちらを見つめている……、まさか、命を狙われる恐怖でおかしくなったか……!? だ、大丈夫だアサクラ! 世の中そこまで悲惨ではないぞ!」


 おいこら、なんだ今の悪魔の囁き。この俺、アサクラ・普通の一般人・カイがそのような甘言飲んでやるものか……!


 そこから男を見せたら、普通の異常者という矛盾したカテゴリーになってしまうではないか!


「なんでもない! ……思えばお前には命を助けられてるよなと思いだしただけだ! 何も(俺の中でお前の)好感度が乱高下したりしてはいない……!」


 そんな妄想に突き合わせるなんて、きっと罰が当たるのである。何がこの状況を利用するだ。このシビアな状況に着の身着のままほっぽり出されれば本当に悲惨な末路しか想像できない。


 どっちかというとそこはラブコメより人情話展開を希望する。


A.へタレ。


 黙れ潜在意識。それにこれ以上どう進展すると言うのだ? ある意味これ以上ないぐらい距離狭まってるぞ。これ以上の展開は倫理コードに引っかかるはずだ。


「おーおー! ようやく分かったか? この韋駄天の聖騎士様の魅力が!」


「み、魅力なんか感じてないんだからな! なんだよ韋駄天の聖騎士って!」


 なにかと調子に乗りやがるから褒めにくいよお前!

「み、魅力なんか感じてないんだからな! なんだよ韋駄天の聖騎士って!」


 なにかと調子に乗りやがるから褒めにくいよお前!


「ツンデレなのか? アサクラは?」

「なんでこの世界にツンデレという概念がある!? 何故今のワード自然に俺の思考へ翻訳されてるんだ!? じゃなくて! 断じてお前にデレてなどいない!」


「デレても良いのだぞー、この大人のおねーさんに!! おーおー、周りに知り合いの一人も居なくて寂しかろー?」


「調子に乗るんじゃない! というか、なぜ当たり前のように俺の方が年下だと見抜いている!?」

「わかるー、わかるぞー、アサクラはガキっぽいからおねーさんには全部お見通しだぞー?」

「いっこ上だけどな! そんなに俺は幼く見られていたのか?」


「ふむ。人生経験の浅いお前が大人ぶったところでたかが知れている!」


「……お、お前に言われとうないわい! この合法ロリ!」


「……ろり?」


 ……あ、なんか、口が滑った。

 完全に見た目幼女に向かって、『合法ロリ』発言はあらゆる方面的に問題発言だ。


「な! なな! なぜアサクラの口からそんなワードがっ!?」


 何故、合法ロリなんて言葉まで存在するんだよこの異世界。


 しかし、仮に甘ったるい展開があったところで今の発言で完全にアウトになっただろ……。我ながら『ロリ』は無いわ。


 なんとか……誤魔化さないと。


「ああもうなんかごめん!! 仮にも女の子に使う言葉ではなかったし、別に俺がそういう趣味を持ってるわけとかそういうわけじゃ!?」


「むー。そういえばこの間お前にまじまじと裸を見られたような……」


「よりにもよって一番都合悪く思い出しちゃいけないシーン思い出しやがった!!」


 甘ったるい展開から突き抜けてお縄につくなんて狂った展開、どこの異世界だろうと存在するわけがない。ないよな? この流れで性犯罪者ルートとか、ありえないってば!


 誤魔化せ! なんでもいいから誤魔化せ!


「あー、なんだ? 甘いものでも食っていくか?」


 まずい。よけー犯罪者っぽいことやってしまったか!?


「甘いのなぁ……日も暮れてきたことだし、ここは一杯やってガバーと寝たいところだな……」

「そういうところは無駄に老けてるなぁおい……」

「んじゃ、いつもの店で一杯やるか、部下よ……」


 話題、水に流せたのかなこれ……?


「しかしなぁ、アサクラよ……」

「お、おう……?」


 やはりそれは虫が良すぎたか……?


「あたしゃー、アンタをそんな子に育てた覚えはないよ……!」

「おかんのセリフなそれ!?」


 何から何まで間違いまくっている上に、俺はお前をどの辺の属性クラスタに売り込めばいいんだよ。


「まったく、ムッツリめ……!」

「なぁ? この会話俺がどういう反応するのが正解なの……?」


 もはや異次元のからかわれ方をしている気がする。


「では! いざ行かん!」と、結局は一杯やりたいだけであろう飲んだくれ少女は俺の手を取り駆け出した。


 ところで、潜在意識よ。

 ……一応、手を握るところまでは常態化しているようだ。これは進展なのか?


 

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