御庭番福事始 -鴉編-

「城主を殺せ。さもなくば、妻の命はないと思え」

天下をわけた大合戦が集結し、はるかな時がたった時代。

生活の苦しさから暗殺の仕事に手を付け始めた百姓・萬國 万蔵(まくに ばんぞう)は、その優しい心根から殺しに手を出すことが出来ず、同胞から虐げられる日々を送っていた。

病弱な妻を抱えた萬國に告げられた次なる命令は、

『狛犬城の城主、犬江直隆を討て』

自分の属する国の国主を殺す命令だった。

従わなければ妻の命も危ない萬國は、命を捨てる覚悟で犬江暗殺の意を決するのだった。

一方、犬江暗殺の話を聞きつけた狛犬城の御庭番・鬼城 京之介(きじょう きょうのすけ)は、主である犬江直隆の命を守るため、犬江暗殺を企てる暗殺衆の元へと潜入していた。

妻を守るため道を踏み外した男か。

国を守るた…続きを読む