34 白馬に乗ったエルフ

そんな話をしていると向こうの方から馬が駆けてきた。

白馬、馬というのは速くて大きいんだな。やはり豚や牛とは違う。

「ありゃだれだ?急いでるな」

人間の一人がそう周りの人間に聞く。その答えが出る前に馬が近づいてきた。

緑色の丸い帽子に長い金髪を一つにまとめた美丈夫。白馬の上だからジャケットの緑色と携えた真っ黒な弓が目立つ。

「ヤァ、やぁ」

その掛け声で馬を器用に止めて降りてきた。

「皆様。申し訳ない。今日の狩りにエルフは参加できない。みないそがしくて伝令も忘れていたのだ」

「困った事ってのはなんだい」

皆を代表してエッダが聞く。身分的にはここで一番偉い。

「朝方から子供が一人どこかに消えてしまった。おそらく朝の仕事の際に森の方にでもいったのだろうが、朝食になっても戻らない。迷子ならいいが、けがや人さらいともなれば大ごとだ。だから領の物で手が開いている者がみなで探している」

「そりゃ大変だ」

ドワーフのおばさんは驚いたようにそういいました。

「あんたら、狩りなんかどうでも良いから子供探すのを手伝ってやんなさい」

「母ちゃん勝手なこと言ってはならんで」

「奥さんの言う通りよ。どうせあんたがた、狩りも適当に切り上げて酒飲むだけでしょ。なら子供を探した後に酒を飲んだ方が神様が喜んでくれるわよ」

狩りもしないうちから酒を飲んでたドワーフの旦那方は返す言葉もない。

「そうだな。エルフ族の方はどうかな?」

「手伝っていただけるならぜひともお願いしたい」

「ならドワーフ族長代理として、諸君、死後に神のご加護を得るために今功徳を積もうじゃないか」

エッダの一声で決定したようだ。

「人間の皆さんはどうする?」

「どうするったてな?」

一応代表となっているおじさんがそういって

「手伝うのは良いが、子供がいねぇって事ならまず衛兵さに伝えるのが筋じゃろ」

「それなら親方様にも伝えなきゃな。エルフ領とは言えこの領地の子供だで、それも筋だ」

「俺は手伝おう」

「俺もだ。家帰っても嫁さんに嫌味言われるだけだしな」

「それじゃぁ、俺が親方様と衛兵に伝えてくるからその馬を貸してもらえんかな?牛よりは早い。代わりにみなと一緒に牛車に乗って帰ってくれ」

「いや、人を出してもらうのだ。一緒に行こう」

そういって二人はうまい具合に馬に跨った。

そこまで大柄な馬には見えないが、大人二人を乗せても平気な屈強な馬。さすがに先ほどより速度は遅いが、それでも牛より早い速度で駆けて行った。

「君はどうする?こんなことになっちまったけど、君はよそ者だからな。帰っても誰も文句は言わないよ」

「そんなこと言われて帰れると思いますか?手伝いますよ。早く見つけて昼前には終わらせましょう」

そういわけで、狩りは中止。人探し。

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