28 休めない男

「おはようございます」

「おう、お前今日休みだろ?朝っぱらからどうした?」

朝晩の新人は先にご飯を食べている。

料理長はできるだけ集まって食べることを優先するが、暇があるうちに各自食べて早く仕事に取り掛かれというのが彼の流儀。

そして休みといっても朝食は出るのがここの素晴らしいところだ。

しかし時間帯が時間帯なので、メイドの水汲みとかち合う。

そうなると結局手伝う羽目になる。みなわかってるのだ。僕がそういう人だということ。

「えぇ、村の狩りに誘われまして朝飯だけ食べたら行こうかなと」

「村の狩りか、ありゃ大変だぞ。村の年寄り共はみんな元気だからついていくのがつれぇんだ」

「休日まで手伝わせたんだからお前ちゃんと返せよ」という新人の指示で、メイドが僕の朝食の給仕をしてくれた。

考えてみると新人の仕事じゃないか、と思うがまぁいいや。

今日の朝食は、青色の具だくさんのごった煮。なんだこの色、と思うが芋の色だ。例の緑色の芋をつぶしてから、玉ねぎ、ピーマンと煮込むとこんな色になるとか。

香辛料を聞かせたこの料理が新人の得意料理だが、使用人からは賛否両論。味がよくよく冷めていてもおいしいと賄いとしてはベストなのだが、どう考えても見た目が悪い。

「狩りは男の仕事ですからね」

メイドがそういって、コーヒーを出してくれた。

「あぁいう催しはあまり好きじゃありません」

「どうも田舎臭いからなぁ。お前そういうの嫌いだろ?」

「根っからの都会育ちですから」

「田舎の女だって似たような事言うぜ」

新人はそういって笑った。

16歳ながら都会生まれを鼻にかけるこのメイドを笑って受け入れる程度にはこの屋敷とこの土地は寛容なのだ。

いい職場だよな。

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