19 やっぱり仕事
「いただきました」
食べ終わったあとなんとなく習慣でそのように唱える。
料理長は二言三言、なにかよくわからない言葉をつぶやく。お祈りかおまじないの類か。
メイドは特につぶやかないが、料理長に合わせて少し待っている。
「すまんな。片付けようか。そういえば君は何か仕事がきまってるのか?」
「特に何も、とりあえず豚小屋と家の仕事をなんかやらせる、的なことはあの執事のおじさんが言ってましたが、たぶん今日決めるんでしょう」
そう答えた所、
「そうか、じゃぁすこし手伝ってくれないか?」
と言われた。
断れない。そういう人間。
頼まれた仕事は芋の皮むきだ。
「手が冷たいから手伝い風情で皿洗いはしたくない」
とごねたところこっちに回された。
「兄ちゃん上手だな」
一緒に皮むきに回された新人にそんなことを言われる。新人、と周りはよんでるがもう40過ぎ。10年は働き一人で厨房を切り盛りすることもできる男だが、新しい新人が入ってこないのでいまだに周りから新人呼ばわり。
そんな状態だから芋の皮むきを新人がやってトップの料理長が皿洗いをしている今の状態は特におかしくない。
「得意なんですよ。こういうの」
手先は器用なのだ。それが人生で役に立ったのは、小学校の図画工作位。
実際問題、異世界に来てここで初めて発揮された。あとは力仕事だったし
「そんだけ上手なら即戦力だなぁ。ジョンウェイさんに言って台所に回してもらえんかね?」
即戦力、というのは彼なりのお世辞なのだろう。
実際、ゆっくりと剥いてる私が芋を一つ片付ける間に新人は二つ片付ける。
「どうでしょうね」
確実なことは言えない手前、そんな曖昧な言葉で濁して私はもう一つ芋を取った。
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