3話 頭痛により思考を停止しました
「頭痛い」
色々思いついたが上記の理由で思考が停止した。
ドアの横で座り込んでいた所にもどってきたおじさん、それについてきたおばさん。
おばさんの手元にはコップ。
「これを飲みなさいな。二日酔いによく聞きますから」
「ありがとうございます」
まずは少し口に含む。甘い。はちみつの甘さだ。
「はちみつですか」
「そんだ。うちは片手間で養蜂をやっとるでな。売る先がないもんではちみつは意外とあまるんだ」
おじさんはそう答えた。
あとから聞いた話だが、この世界でははちみつは意外と高価なのだ。隣の貴族に対抗しようと先代の親方様の命令ではちみつ作りを始めたがノウハウも気候も合わないこの土地では店に下ろすほど大規模化はできなかった。結果として親方様の屋敷で消費しているが、そのあまりを貰えるというこのおじさんは売る先もない。そのため自分の家や隣近所ではちみつを消費し放題というのは特例というわけ。
私はもらったはちみつを溶かした飲み物を飲み干す。
「ありがとうございます」
少しは頭が冴えるようになった。
「そんでだ。兄ちゃん、どっかの商人かなんかかね?貴族様にはみえねぇが」
「貴族でも商人でもないです。東京ってところから来ました」
「東京?聞いたことないねぇ」
おばさんの言葉。
「東京、そもそもここどこですか?」
これは二度目だ。
「親方様の豚小屋だ」
これも二度目。
「おまえさん。そういうのじゃなくて地名を聞いてるのではないかい?」
「あぁ、そうなると、ここはヴィンセント皇国のウェイバー庄の端っこだな。ウェイバー殿下の土地やで、住所いうもんはないな。あの山の向こうはもう別の国だ。兄ちゃん遠乗りかなんかでこっちまで来ちまったってことはないね?人さらいにあったとかいうふうにも見えねぇが、そういうことなら衛兵よんできてやるが」
「帰れるのなら帰りたい。けど地名がわからないんじゃ帰りようがない。むしろ衛兵にでも突き出してくださいよ。聞いたことありませんか、東京、地球、イタリア、フランス、イギリス、バチカン市国、アメリカ、木星、そんな感じの地名」
聞いたことあるわけないよなぁ。
「あぁ、あんたアメリカの近所に住んでんのか。なら別の世界から来たんだな」
聞いたことあったよ。どうなってんだまったく。
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