2話 異世界転生は豚小屋から

「くせぇ」

異世界に来ての第一声はこれでした。

実際臭かった。どう比喩していいのかわからないのでストレートにいいますが、豚の匂い。

豚小屋の中に飛ばされた結果です。

「兄ちゃん大丈夫か?」

そして私に話しかけてくるおじさん。

頭が、痛いような痛くないような、という曖昧な答えも思いついたけれど

「多分大丈夫だけど、ここ、どこですか?」

ともっと曖昧な答え。


「ここは親方様の豚小屋だ。兄ちゃん、どっから迷い込んだ?」

「豚小屋?頭痛いなぁ。私がいたところの近所に豚小屋なんかなかったはずです」

多分。都会の街角は迷宮と同じだ。路地を曲がった先に豚小屋があったとか言っても驚かねぇ。

「酒くせぇな。昨日はずいぶんと飲んだかのね?」

「付き合いの酒って深酒になりません?特に深くはないけど関係はある人の送別会とか」

「そういうの、豚の世話だ言ってでねぇからな」

「いい仕事ですね。よくわからん連中と飲むより可愛い豚の世話のほうが楽しそうだ」

「ちょいとそこのあたりでまってな。家にもどって水くんできてやるで」

そう言っておじさんは豚小屋の外に出ていった。

僕は周りを見渡す。

豚が数十頭。レンガと木でできた建物。子豚もいる。臭いがそれなりに清潔という感じ。

木枠をはめているだけの窓から外を眺めると、緑豊かな地平線の向こうに小さな山。

おい待て、狭い日本のどこにそんな立地がある。

「頭痛い」

とにかく飲み過ぎは体に毒だ。

新鮮な空気を吸いたいとおじさんが出ていったドアから私もでました。

隣に並ぶえらく洋風な建物、石造り、農機具なんかが見える。多分倉庫か蔵の類、そして見たこともない字で書かれた落書き。

「どこだよ。ここ」

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