7話 考えてみなよ?君の目の前に生まれも育ちもわからないよくわからない人間が来たらどうする?

姓名、住所、年齢、生まれ、人種(黄色人種で通じた)、ここに来た経緯、云々。

だいたい身分証に書いてあるようなことを聞かれた。海外旅行に行ったことはないが、入国審査ってこんな感じなのだろう。

「さて、書類はできましたが、日本だと、前例がないですね。こまったな」

「あのですね。さすがにそろそろ色々聞かせてもらってもいいかと思うんですが、あの、ここはどこなんですかね」

「えぇ、ここはヴィンセント皇国のウェイバー庄です。首都から600キロ、ラット公国国境沿いの地域ですね。田舎ですが治安は良いほうです」

「はぁ、それで私はその、異世界、ちがう世界から来たらしいんですが」

「そうですね。結構な頻度、というわけではありませんが、我が国だと十年に一度といった頻度でそういった方は現れます。この国では、えっと、11年前にアメリカ国ケンタッキーから来た方がいます。近所ですか?」

「いえ、海の向こうの国です」

十年に1回異世界からやってくる、惑星大接近とか世にたまに出てくる変人奇人とかそんなノリか。

「前に来た方はどうなってますか?帰れますか」

「それについてはなんとも。例えば前に来た方は首都で貴族、意味わかりますか?」

「えぇ、わかります。なんとなくですが、王様の親戚とか、地位と権力がある着飾った金持ち」

「そういうわけじゃありませんが、まぁその、首都の貴族の三女様と結婚しまして集合住宅の経営に精を出してます、ですから」

「異世界に来て成功したから帰ろうと思ってないと」

「簡単に言っちゃえばそういうことですね。異世界から来た人ってなぜか読み書きができるらしくて、物珍しさで投資してくれる人を探して商売始めたり、魔物狩りしたりするんですよ。ただ成功するのは一握りで、外国だと事業に手を出して失敗して行方不明だったりする。そもそも我が国のように管理体制に含めるという発想がなかったりで追跡調査がなされていないことが多い。そこで国際的な現状の把握、という意味でヴィンセント皇国を中心に取扱管理規定ができました。と言っても全部把握できてるとはおもえませんがね」

つまり

「帰れるか帰れないか云々以前に、異世界人がどうなったとかということ自体を確認してないという理解でいいですか」

「申し訳ございませんが、そういうわけですね。帰りたいですか?ですとやはり首都のほうが情報が集まるかと思いますが」

「どうでしょう。自分でわからない」

そんなもんだろう。人生。

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