13 伯爵家だっけ?公爵家だっけ?
「貴族様のお屋敷、ってのは見たことありませんけど、結構素朴なお屋敷なんですね」
お屋敷から外に向かう道すがら、メイド長にそう聞いた。
「あなた、一応ここはお城なのよ。屋敷じゃないわ。ここで働くなら人から聞かれたときはそう答えなさい」
そうメイド長は笑った。城と屋敷の定義の違いは知らないが、どう見てもここは屋敷だろう。
長い廊下、木と石と漆喰で作られた壁。窓ガラスは三角形ながらちゃんと入ってる。まぁ豚小屋じゃないから当たり前か。
屋敷はでかく二階建て、お城という感じではなく、先程世話になった衛兵の詰め所を豪華にした感じだ。
今の時間としては昼が過ぎたくらいか。日光が廊下に入り込んで眩しい。壁にかけられた絵や武器を照らす。
絵の内容は、戦争絵巻とでも言うべきか。
「お城、というか砦みたいなやつですか?前線基地というか、事務所というか」
書かれている絵は、ドラゴンと戦う騎士。オークなのかゴブリンなのかよくわからない人形の集団との戦争。銃と弓と剣。人と人の戦争。
「そう。もともと初代ウェイバー伯爵が国境最前線で怪物や人が居座ってたここを開拓したのよ」
メイド長はそう言って壁にかけられた絵の前で止まった。
白髪の老人が、おそらく敵だろう、黒い鎧の大男を殺している一枚の絵。
「自画像にしては勇ましいですね。こういう絵を見るとこの屋敷も武張ってるって印象に変わります」
「この絵、殺されている黒騎士の方がウェイバー伯爵よ」
「自分の先祖が死ぬ瞬間を掲げておくなんて随分と変わった趣味だ。まぁそういう人だから雇っていただけたでしょうけど」
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