30酔っ払いドワーフ

「一人か二人位食ったことあるやつだっているさ」

そういってドワーフの集団がゲラゲラ笑った。

ドワーフ領と人間領の間にある畑の一角、そこにすでに集まっていたドワーフ達と合流し、自己紹介ついでの挨拶の流れでこういう話がでた。


ドワーフ領、といってもそれは古代の名残で、ウェイバー伯爵の土地というのは変わらないとの事。

別に人間が出入りしてもエルフが出入りしても問題はないし、ドワーフにしても他所の領で商売をやってるやつもいる。しかしがわざわざそこに住もうってやつは店を構えてるとかでなければ少数派。なのでニュアンスとしては「ドワーフ村」が近いだろう。

そのドワーフ、というのはちいさなおじさんって感じだった。

いやほんと。みんな僕より頭一つ分か二つ分くらい小さい。その代わりみんなマッチョだった。取っ組み合いなんかしたら直ぐに投げ飛ばされるだろう。そして髭

「お前異世界から来たんだってな?異世界の同胞たちはどんな感じなんだ」

「ドワーフ、ファンタジーの生き物って感じの扱いでしたね」

「なんだ、同胞たちはだらしないな」

そういってまた笑う。こういうのがドワーフなのかと思ったが、違うなこれ。

「昼前から飲んでるんですか?」

「あ、お前ら飲むな言っただろうが、顔洗ってこいボケ」

ドワーフの中で比較的髭が薄い(といっても人間基準ではモジャモジャといって差し支えない)赤毛の若者がそう怒鳴りつけ、ほかの連中を水場に走らせた。

リーダー格なのだろうか?

「まったくもう。人の言うことききゃしねぇ」

「彼はドワーフ領の長の息子だよ」

おじさんがそういって紹介してくれた。

「よろしくお願いします」

「エッダだ。こちらこそよろしく。歳若なせいかで誰も人の話を聞きゃしないんだが、一応今回の頭ってことになってる」

「新人の領主様が見くびられるのはどこも同じだ。伯爵様みたいに実績を積んでいくしかないよ」

「伯爵様に弟子入りでもしようかね。まぁ今日はよろしく。異世界から一人来たってなれば不便なこともあるだろう。何かあれば遠慮なく言ってくれ。ここいらじゃ若者同士だ。出来る限り力になろう」


エッダはそういって握手を求めてきたので僕も返す。ゴツゴツした力強い手。

確かに髭だらけな顔は僕と同じくらいの年齢だろう。しかしなんとなく下働きをしているぼくよりしっかりしてる。長の家系という奴か。

「若者、って言ってもそいつは人間の数え年だともう40手前とかだかだぞ。俺が餓鬼の頃一緒に遊んでた覚えがあるからな」

後ろで弓の調整をしていたおじさんの人がそう口を挟んだ。

「僕の一回り上にちかいじゃないか」

そういったらみんなに笑われた。

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