21 就労内容

 就労内容

「起きなさい」

体を揺さぶられながらそういわれたので起きてしまった。

そこにいたのはメイド長。

「あなた、なぜここで寝ているの?」

「そいつは早朝組の仕事手伝ってくれたんですよ」

怒られる前に新人が口添えしてくれた。

「またなんでそんな事を?」

「朝眩しくて起きちゃって」

「はぁ。変な人だね。まぁ起きなさい。今日は屋敷を案内するわ」

そういったが

「まず顔洗ってきなさい」

と一言。特に不満はないのでその指示に従う。


屋敷の内外を案内されたが、特別注意するようなことはない。

掃除の手順やら掃除道具の位置やら、仕事は二人一緒にやるのが基本よ。っといった事だったり。

屋敷自体は先に書いたように木と漆喰と石でできた二階建ての屋敷だ。

元々砦だった、というわりに部屋の配置はかなり規則的、片面は廊下でその横に部屋がならんでいる。よくあるアパートに近い。

そして外にあとから新設されたらしい食堂や、炊事場、トイレ。倉庫。遠くの方に昨日お世話になった豚小屋が見える。

「ここって兵隊の寮かなにかだったんですか?」

「宿舎ね、なんでそう思ったの?」

「入口の位置がおんなじような形で、部屋の中も基本似たような内装ですから。兵隊が寝泊まりする集合住宅みたいな場所だったのかなと」

「よく見てるわね。大昔は別のウェイバー家のお屋敷があったけれど、戦災で破損しまったの。そのころには兵隊の数も減っていたから大きな屋敷があってもこまる、ってことでここにこしてきたのね」

そういってメイド長は両手の人差し指を立てた。


「このお屋敷は横に長い四角の住居の片方に廊下がくっついたの形をしているわ。そしてその長方形を三つに切る形で階段がある。真ん中の階段は親方様や御家族、お客様専用だからつかっちゃだめよ。私達使用人は中央の階段から見て右(そういって右手で部屋の位置を差した)の一階で寝泊まりや生活してる。といっても住み込みじゃなくて近所から来る人も多いんだけど。それでもあんまりあいてないのよ。まぁあなたも正式採用になったら屋敷の部屋を見繕ってあげる。でその上は客人となる貴族様用のスペースと娯楽室があるわ。たまに狩りや休養を楽しむためにやってくる貴族様がいるからその時は礼儀正しくね。で中央から左手は親方様一族が全部使っているの。だから仕事がなかったり呼ばれないときはいっちゃダメよ。向こうには親方様専用のお手洗いや食堂があるけど私たちは外に見えるあそこを使う。客人用のお手洗いは別にあるけど、そこはお客様がいないときは使ってもいいわ。でも使ったらちゃんと掃除すること、いいわね」


「わかりました。で僕の仕事って何になるんですかね?」

「そうねぇ」

メイド長はそういって少し考えた。

「あなた早起きは得意?」

「夜早めに寝かせてくれるなら」

「基本一番人手が足りてないのは食堂なのよね。お客様がいないと屋敷の掃除や洗濯、雑務なんてたかが知れてるから通いのメイドを使えばいいし。だから早朝組の食堂の方の手伝いをしてくれる?終わったら昼過ぎまで休憩して、昼から豚の世話ね」

「重労働っすね」

「暗くなる前には終わるように調整してあげる」

そうは言ってもね?

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