12話 世間話はかくあるべし

「あした、じゃ早すぎるわね。明日はこの辺の地理とやってもらいたい仕事を教えてあげるわ。しばらくは見習いね。仕事ができなければ首よ」

「君は何ができる?」

おそらく下働きが働く休憩所なのだろう、屋敷の中にある共有スペースのような場所でメイドのおばさんにお茶を出されながら、執事のおじさんに聞かれた。

「コンビニ、って言ってもわからないか。雑貨屋のバイト、まぁ下働きとして働いていましたから、そういう雑用全般はできます。床の拭き掃除や商品の整頓から、店番、便所掃除に接客、そんな感じの仕事。あとその前は営業として雇われてました。商品の売り込みですね。すぐに潰れたんで働いたと言えるかも怪しいですけど」

「なんでだい?」

「売ってるものが不味かった。インチキ商品、で国から指導受けて倒産。まぁ倒産したほうが世のため人のためでしたが、騙された人と私は泣きましたよ」

「異世界も大変なんだねぇ」

The世間話、といった具合。まぁそんなもんだろう。異世界面白トークなんかできないのだ。


「それじゃああなたの部屋を見繕いましょうか」

この世界の世情、最近は物価が高いとか貴族ってなんだとか、魔物があって魔法があってエルフやドワーフが、見たことない?今度機会があったら知り合いを紹介してあげよう、とかそんな話を聞きながら雑談して、キリが良いところでメイド長がそういった。

「荷物はあるかしら?」

「着の身着のまま、手ぶらです。着替えもない。なので部屋は小さくて良いですよ」

考えてみると飲み会に行くために財布や携帯なんかを入れた小さな手提げかばんを持ってたはずなんだが、いつの間にか消えている。

まぁ携帯なんかあっても困るだろう。電波届かないし。

「大変だなぁ。僕の息子が着てたお古を持ってきてあげよう。作業着に使うといい」

「ありがとうございます」

「じゃぁ見習いの常で、外の倉庫の二階なんてどうかしら?ほこり臭いけど、すみごこちは良いわよ。広いしベットもあるわ」

「何出されても文句言える立場じゃありませんのでありがたくいただきます」

そう言ってメイド長はついてくるようにいった。

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