4話 アメリカの近所 日本
「そんじゃあんた、衛兵さに事情話したほうがええで」
おばさんはそう言った。
「そんだな。俺が仕事終わったら連れて行ってやんべ。おめぇよ、ひとっ走り行って親方様に伝えて来てくれねぇか。ここは親方様の土地やで、知らせるのが筋だ」
「洗濯物終わってからでええかな」
二人はのほほんと言った具合に相談してた。
「よくあるってわけじゃないけど稀にあって珍しいけどすごく驚くわけじゃない」って感じの対応。こういう対応されると正直自分でもどうでもよくなる。
「ええんじゃないですか?豚のえさやり位は私も手伝いますよ」
「ええかな。そんじゃ餌やり頼むわ。向こうの家に餌の袋があるで一緒に持ってきてくれんか」
そういったわけで豚のえさやりを手伝うことになった。異世界に来て初めての体験。とくにおもしろみはなかったが、豚は結構可愛かった。
「これ出荷とかするんですか?」
「豚は親方様の家とその臣下が食べるの、あとまつりで食べるの以外は市場に出すよ。その豚は来週だな」
かわいそうに豚さん。とんかつ、この世界にはないか、ロースかつ、ないよな、豚しゃぶ、豚丼、これもないな、ステーキ、ぶたのステーキってうまいんだろうか?まぁなにか美味しく食べられるのだ。
お腹すいたなぁ。
豚の餌やりを手伝い、豚小屋の掃除まで手伝った私はおじさんに軽食をおごってもらった。何かの肉が挟んである硬く酸っぱいパンのサンドイッチ。古いわけではなく、もともとこういう味なんだとか。酸味と肉の味付けがうまく合ってるサンドイッチをおじさんの世間話とともに頂いた。
なんでも息子は都会に出て学問に励んでるとか、この家は継いでくれない、都会で生きてくだろうが学問を生かすにはそのほうがいいだとか、最近親方様が畑を広げた、土地があるから貴族らしく馬の育成でもやるべきだとか。
そして小休止。その上で衛兵の事務所に連れて行かれることになる。
その道沿いの細かい描写はやめよう。
特にないからだ。ただひたすら緑の平原。遠くに山。向こうから牛。それを連れてくる人。話す内容は「このこは異世界からきたそうだで」「アメリカから来たのか。珍しいなぁ」的な話。住人はみんな顔見知りだ。
要は田舎なのだ。流石にそれはわかった。
「衛兵さん」
木と石と、漆喰かな、白い壁の二階建ての建物の前でおじさんは衛兵を呼んだ。
「衛兵さんや」
「はいはい。なんですか?また隣の国からだれか来ましたか?」
出てきた衛兵は衛兵というより警察ぽかった。
警察といっても現代の警察ではなく、ドラマなどで見る明治時代の警察。金の筋が入ったパリッとした制服にズボン、腰にサーベル。ただ制服の前を開けて白いシャツが見えている当り少々だらしない感じ。
年齢を読むのはあまり得意ではないが、どう見ても30は行っていない若者。もしかすると同い年かもしれない。短髪に刈り上げた髪。
新人かな。制服がだらしないが、田舎だから気が緩んでるのだろう。
「うんにゃ、アメリカさの近くから来たいう人が親方様の豚小屋におってな。衛兵さ連れてくるのが筋じゃなかろうかと思って連れてきたんじゃ」
「え、本当ですか。それではとりあえず中に」
「気負いする必要はないない」
「えぇ、まぁ、たぶんそうでしょう。気楽に話しませんか。右も左もわからないので、そっちの方がありがたい」
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