第52話(多分違うだろうな)

 その場所は、都市に近い台地の上にあるらしい。

 “モロキュー台地”と呼ばれる台地の傍にあるらしい。

 周りには“白きゅうり”と呼ばれる、細長く僕の身長の半分くらいになるような真っ白なきゅうりの実る“木”が何本も生えているそうだ。

 そしてその植物が多く生えているから、その名がついた……らしい。


 現在はキュウリがなる時期ではないので果実は見当たらないが、その時期になるとそのキュウリを求めて大量のスライムがここに押し寄せるという。

 そして台地の上に蠢くその色とりどりのスライム達の動きから、その時期には“スライムカーニバル”と呼ばれて、その奇妙な光景から観光客も多い。


 そもそもスライム自体が生態に謎が多い部分もあるという。

 何故このキュウリにそれほどまでスライムが惹かれるのか、未だに分かっていない。

 さて、そんな無駄知識はいいとして、


「こ、この、何でスライムは私ばっかり狙うのよぉおお!」

「あ、エーデルさん、大丈夫です。僕とミナト以外何故か全員襲われていますから」

「そ、そういう問題じゃなぁああああい!」


 現在唐突に遭遇したスライムの集団に僕達は襲われていた。

 その一方で僕達、つまり男性である僕とミナトは、男には用は無いというかのようにスライムが襲ってこない。

 なので女の子達の悲鳴が今は周りでしている状況で、この美味しい……ではなかった、そう、自分から襲いかかってこない魔物を傷つけるのはどうかという観点から、僕達は事態を静観していた。


 ミナトも嬉しそうにそれを見ている。

 やはりこの光景は、目に焼き付けておかねばと思っているのだろう。

 ただこの中で、リンだけはあはははは、面白ーいと笑ってしばらくスライムを弄んでいたが、帽子にそのスライムが触れた瞬間に鋼線で細切れにして倒していた。


 やはり“本体”というだけあって大切なものなのだろう。

 そう僕が思っていた所でスライムを倒したらしい、幼馴染のユナに頭を叩かれた。


「あんた、見ているばっかりで助けないのはどういう了見なのかしら」

「……ユナ達の力を僕達は信じていたんだ! うごゃあ」


 そこで再び僕は、ユナに叩かれて、その後ユナはリンと一緒にスライムを全部倒して、更に僕達はスライムともども倒された。

 理由は、ただ見ていただけだからだそうだ。

 べ、別に何も手を出してこなくて見てただけなのに叩かれるなんて酷いのではないだろうか、と言い訳しようと思ったけれど更に怒りを煽るだけの気がしたのでやめた。


 そうしながら途中で何匹も魔物を倒しながらやってきた場所は、現在立ち入り監視区域と書かれていた看板と、そこの警備をしている人がいる。

 僕達が近づくと、話は通っています、と言われてあっさり中に入れた。


「さすがはお姫様効果?」


 魔女エーデルが呟いていたが、多分違うだろうなと僕は思う。

 そういえば他のことについてまだ皆に話していなかったなと僕は思った。

 なのでこの台地の上に行くまでに一通り賞金の件も含めて話しておこうと思いながら、獣道を歩いて登り始めたのだった。


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