第35話(花を回収しました)

 一般人である僕達に頼むのはどうか、と一瞬冷静になった僕だけれど、そこでヒナタ姫が、


「分かりました、必ずや一般市民の方を救出してみせます」

「ぎゃああああああ」


 そこで一歩前に出たヒナタ姫がそう告げた。

 お姫様にしては男らしい気もしたが、そういえば男性としての教育を受けていたといっていたのを僕は思いだした。

 だからこういう答えになったのだろうが……と思って悲鳴を上げて逃げて言ったあの中年男性を僕は見る。


 ちょうど人影に隠れて見えていなかったので先ほど助けた中年男性は気づかなかったようだった。

 だが、今、僕が彼女の覆面をとっていた。

 そしてそれを見てその中年男性は先程よりも速い速度で逃げて、見えなくなる。


 とても逃げ足は速いようだ。

 ヒナタ姫はそれを見てしょんぼりしていた。

 ちなみにヒナタ姫を見ると卒倒するミナトは何か予感があったらしく、まったく別の方向を見ている。


 そんなこんなでヒナタ姫がいそいそと覆面をつけ始めていた所で、僕は魔女エーデルの方を見て、


「どうしましょうか。一度入場場所まで行って、例の人達や、アジトがある事、捕まった人がいるといったこのことを伝えた方がいいかな?」


 僕が言うと魔女エーデルが、


「さっきの逃げていった男が何かしら伝えるでしょう。どうやら仲間が捕まったといっていたし。それよりも今は人質の方とそして貴重なあの花のことが私には気になるわ。準備が整う前に少しでも早く攻撃を仕掛けた方がいいかも。それに……」

「それに?」

「さっきの奴らを捕縛して、人質救出をしたならしばらくはその辺りに現場検証みたいなことがされるでしょうから私達が入れなくなってしまうわ」


 言われてみればそうだなということに僕は気付いた。

 これでは必要な花は手に入れるのはさらに難しくなって……でもそこは、ヒナタ姫の力で何とかなるのではと思ったが、そのための手続きのようなものが時間が更にかかるだろうと思った。

 今ならば僕たちが目の前でとってくれば終わる。


 その分、早くヒナタ姫の呪いは解ける。

 そこまで考えて次に敵だが……と考えた僕は、とりあえずはこの前のように、スコップで殴っておけばいいかなと僕が決めた所で、僕達はさらに奥にむかったのだった。






 開けた広場のような場所に僕達はやってきた。

 上部には大穴の開いた広い場所である。

 天井からはさんさんと光が降り注いでおり、地面には可愛らしい小さな花の蕾がいくつも見て取れる。

 それを見て魔女エーデルが、


「“ぽぽたん花”は、あの白い花なんだけれど、随分踏み荒らされているわね」

「じゃあ後でアレを回収しましょうか」


 そんな会話を僕達がしているとそこで、僕達と相対していた例の怪しい風体の人物たちが起こったように、


「お前達! ここまで追ってきてその会話は何だ! 我々を前にしてその態度か!」

「えっと、きゃ~、怖い~……という感じですか?」


 悪人らしい人達からリクエストが来たので、とりあえず僕は怖がってみた。

 それを聞いたらしい、アオイ、ミナト、リン、ヒナタ姫が、


「きゃ~、怖い」

「きゃ~、怖い」

「きゃ~、怖い」

「きゃ~、怖い」

「……お前達、バカにしているのか」

「「「「うん」」」」


 僕とメイドのミミカ以外が口をそろえて頷いた。

 それに、その彼らは怒りを覚えたようだ。と、


「この人質がどうなってもいいのか!」


 見ると、この前逃げてきたあの中年男性と同じ格好をした、歳が同じくらいの男性二人がロープで縛り上げられている。

 震えている彼らにナイフがつきつけられている……と思っていたら、ヒナタ姫と魔女エーデルが飛び出して行き、


「人質を取るなど卑怯者は、成敗!」

「また私の悪名を増やされると困るから真っ先に倒させてもらうわ!」


 ぼこすかぼこぼ。

 人質の側にいた彼らの仲間達は即座に瞬殺された。

 もちろん人質にけがは一切させていない。


 文字通り瞬殺である。

 のびている彼らを見てぎょっとしている残った悪人達だが、そこでその隙を突いたのかメイドのミミカが鍋で殴っている。

 僕も戦わないとと思って、そこで僕達は参戦する。


 スコップで殴り倒していき、気絶した人達もスコップで軽く叩いていく。

 それから約一分後。

 そこには気絶した悪い人たちの山が出来上がっていた。


 とりあえず気絶している人達の中で僕が倒していない人達をスコップで軽く叩いている間、魔女エーデルは花を回収し、とりあえず僕たちは人質を開放して、その場を後にしたのだった。

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