第36話(ぷりん)
入り口の所にやってくると先ほどの中年の男性がそわそわしたように待っていた。
先ほど僕たち血助けを求めてきた男性だ。
そして入場場所にいた管理の人がどこかと連絡をとっているのが見えるが、そこで、中年の人が僕たちに気づいたらしく、
「ふたりとも無事だったか!」
「……教授、まっさきに逃げましたよね」
「しかも僕達は色々な荷物を持っていましたしね」
恨むように助けられた人質の二人が言っていたのだが、それ以外は、目立った外傷もなく人質救出を出来たのは良かったと思う。
そして倒した彼らのアジトを確認に来た役人の人達にもう一度案内して、それから、また君達かと言われてしまった。
そして、やはりお任せしてしまった方がいいんだろうかと僕の方を見ながら言われてしまった。
僕、一般人なのですがと思ったのは置いておくとして。
それからその場でいくらか話を聞いてもらう事に。
事情により先に姫様達には帰ってもらっていたが(お姫様が一緒にいるというのも問題なので。でも気づかれているのか、すぐにお姫様たちだけは帰してもらえた)、そうして待っていると、今回はちょっと偉そうな人が来たように思う。
その人と少し話をして、すぐに僕たちは解放された。
まったく僕たちは“疑われていない”ようだった。
ちなみに宿にて、後で賞金は届けさせると言われてしまう。
ついでに後、二つほどアジトがあるらしいから、壊滅させておいてくれと言われてしまった。
そう言われた僕は困りながら、
「今回の二回ほどは偶然なのですが」
「二度あることは三度ある、ともいう。そんなわけでまた見つけたら頼む」
と言われてしまった。
そんな何度もこういうことがあぅてたまりかと僕は“常識的判断”を下しつつも、だがここで言い合ってもあまり意味がないので沈黙する。
けれどそれを聞いた魔女エーデルが、
「そんな偶然、何度もあってたまるか」
『そうかしら~、くすくす』
楽しそうな女性の声が聞こえて、魔女エーデルは空を見上げて、
「ま、まさか、お姉ちゃんが関与しているの!」
『私は関与してないわよ~。全部偶然の賜物。でも偶然がぐう戦でないなら何の理由があるのかしら。だから楽しいのよね、傍観者って』
「く、一番安全で楽しそうな位置……そろそろ私もそっちに戻してよ!」
『その前に、良さそうな男を見つけてらっしゃい。いい加減振られてばかりで、お姉ちゃん心配だわ』
「……う、うわぁああああああんんっ」
魔女エーデルが、泣きながらその場から逃走していく。
今日はどうやらここでお別れのようだ。
それを見送りながら僕達は、どうしたかというと。
アオイがポツリと呟いた。
「魔女エーデルがいないから馬車で帰れるわね」
その言葉に僕達は頷いたのだった。
結局、馬車を近くで待つ間、湖の湖畔のカフェでデザートを僕達は食べていた。
やっぱり遊びに行った後はみんなでデザートだよね、という話になったのである。
そうして何種類ものパフェやケーキが並ぶ中、僕達が選んだものは、
「お化けプリンパフェです」
「「「「おおー」」」」
僕の頭くらいの大きさの巨大プリンに、濃厚なカラメルソースのかかったもので、その周りには果物やクリームがふんだんに飾られたデザートだ。
とても大きなものなので一人で食べるにはあまりにも大きすぎる。
それを僕たちは小皿に取り食べていくのだけれど、そこでミナトが感動したように、
「そうだ、こうやって友人と一緒にこんなものを食べてわいわいやりたかったんだ!」
「願いが叶って良かったね。だが、これからが“勝負の時”なのだ」
僕がそう告げるとミナトがゴクリとつばを飲み、
「どういうことだ?」
「少しでもで遅れれば自分の食べる分が無くなってしまうのだ」
「な、何だと、く、負けてたまるか!」
というわけで僕達は、一斉にお化けプリンに手を出して取り分けつつも食べていく。
ここの周辺で鶏と牛も飼っていて、新鮮な卵とミルクが手に入るとのことで、プリンは絶品だった。
しかもちょっと固めで濃厚な生クリームと、バニラビーンズの種が入っていて甘い香りが微かにする。
カラメルソースも苦さの甘さのバランスが良く、ほんのりと洋酒の香りがする。
絶品以外の何物でもない。
こんな美味しいものがあるんだと僕は幸せを感じつつ、その大きなプリンを僕たちは皆で食べ上げたのだった。
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