第34話(もう一度遭遇しました)
こうして食事を終えた僕たちは、湖に沿うような道を伝って、湖の東側に僕たちはやってきた。
その道も、ちょっとしたハイキングコースになっているそこを歩いて行くと、その先に洞窟がある。
観光用に開かれている洞窟で“サザナミ洞窟”と呼ばれているらしい。
先ほどのレストランでもパンフレットが置かれていた。
ただこう言ったものがありますよといったものだけで、一番のおすすめは周辺に生えている草花の鑑賞や、釣り、そして今の時期では果実狩りがおすすめらしい。
しかも新鮮な果実を使ったお菓子や料理を教えるイベントもあるらしい。
面白そうとアオイは言っていたが今回は見送りになった。
まずは目的の“サザナミ洞窟”で、必要なものを手に入れないといけないからだ。
ちなみにこの洞窟。
中が入り組んでいることもあって、入るのにも入口で登録が必要である。
また整備をする関係上、ここも入場料が必要になってくる。
その辺りはいいとして、ここに来た目的を魔女エーデルに聞いてみた。
「それでここには何を採りに?」
「えっと、国の指定保護対象の植物、“ぽぽたん花”が必要なのよ」
「国の保護指定っていいんですか?」
「ええ、咲いているものを天然ものだから保護しているだけで、街では他の時期に園芸店で出回るから」
「それを買うわけにはいかなかったのですか?」
「今は栽培中の時期なのよ。種も買いに行った園芸店では全部売り切れで、次回入荷未定だったから。なので天然物の花を一つもらってこようと思って。ああ、この花はね、一回茎を切ってある魔法をかけるとそこからまた花が咲くから、個体の数を測定していたりされていても大丈夫なの」
といった魔女エーデルの説明を聞いていた僕たちは、そこである場所に辿り着いた。
観光地だけあってこちらも洞窟中に魔法の灯りが灯されている。
なのでここも中はそれほど暗くはない。
それ故にその看板の文字もとてもよく見える。
「あの、“保護区域により立入禁止”って書いてあるのですが」
「ばれなければいいのよ。それにそこにお姫様もいるし、いざとなれば呪い解除の道具の材料を取りに来ましたって言えばいいし」
それでどうにかなるんだろうかと僕は思ったけれど、とりあえず僕は黙っていた。
必要なものをとりに行かないとヒナタ姫の呪いは解けないのだから。
そこでその立ち入り禁止区域の奥から悲鳴が聞こえた。
禁止区域は灯りが灯っていないので真っ暗だったのだが、誰かが走ってくる音とともにゆらゆら揺れる明かりが見える。
やがて現れたのは太めの男性だったがその背後からは、もう数人ほど誰かが追いかけてきている。
とりあえずは逃げてきた男性を後ろの方に下がらせて、魔法の準備をしていた僕達だけれど……。
「! まだこんなに沢山の……だが子供達が数人だ。我々でどうにでもなるだろう! 我々の居場所が知られてしまったのだから、ただで帰すわけがなかろうに」
どうやら居場所が知られたので目撃者を消すつもりであるらしい。
だが僕としては、否、魔女エーデルも含めて微妙な顔になった。
その悪役っぽい人物はどう考えても、服装がこの前であったあの人物たちにとても良く似ていたから。
悪い人間が同じように見えるようになるのは問題があると思うが、格好からなにから同じだとそういった集団だと思わざる負えない。
まさかアジトが今回の場所も近くにあるのではといったような嫌な予感が浮かぶも、僕は考えないようにした。
さて、そのあたりの事情は置いておいて、魔女エーデルが可笑しそうに笑った。
「それで、この私に逆らってただで済むと思っているの?」
「なんだと? ……まさかお前、あの我々のアジトを潰しまわった、金髪の魔王!」
「……何だか変な二つ名がついているけれど、こんな所で出会うのも運命だわ。早速ボコボコにして倒してやるわ」
「く、この、お前のせいで……ぎゃぁあああああ」
そこで男達が悲鳴を上げて逃げ出した。
とても恐ろしい化け物を見たような形相である。
その様子を見た魔女エーデルはくるりと僕の方を向いて、
「ちょっと、お姫様の顔を出さないでよ」
「いえ、一般の善良な市民らしき人がいるので、ここでの戦闘は危険かなって」
「はあ……まあ場所を変えるのはいいかもしれないわね」
嘆息する魔女エーデルだがそこで先ほど助けた中年男性が、
「あ、あの、まだ私以外の仲間が中に取り残されているのです!」
そう助けを求めるように僕達に告げたのだった。
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