第26話(採掘場へ向かう道)

 その鉱石採掘場に行くには一時間ほど山道を歩かないといけない。

 ただ現在その採掘場は、採掘が行われていないそうだ。

 その鉱石採掘場への山道は以前採石していた関係……そして現在はちょっとしたハイキングなども行える近場の観光スポットのようなものとしての利用があるため、そこそこ道が整備されている。


 土がむき出しではあるが途中で雑草もそこまで生えることもなく、草を割って森の中を突っ切っていかねばならない山深い場所、というわけではない。

 その点ある気には楽な道だった。

 そして、今回の目的の材料は“ブルブル震える緑色の石”という物体なのだそうが、実の所その採石場は主にそれをとっている鉱山ではなかったらしい。


 別の、ランプや電灯の原料になる“月明かりの石”を採取する時に出てくる副産物が、“ブルブル震える緑色の石”だそうだ。

 但し現在では主目的の“月明かりの石”があまり産出されなくなったために、個人の魔法使いが必要な場合もある(実は安価で“月明かりの石”は都市内で購入できる)趣味で採掘する人用に、山の管理費として入場料が取られるものの開放されている。


 そういった状況であるため、一般人でも気軽に採石できる場所だった。

 まれに大きな“月明かりの石”が採れて、入場料も含めてお小遣いまで出る場合があるらしい。

 また、原石を飾っておいたりする趣味の人にもそこそこ人気で売れるそうだ。


 そんな感じで、都市の人が週末になると遊びに来たりするらしい。

 そしてその採掘場は実は結構深かったりするので、まれに事故や道に迷った人が出たりするため入山する時に名前を記録したりする等の対策が行われている。

 さて、その辺りの登山関係の事情は置いておくとして、山道を行くと必然的に魔物に遭遇するのだが、


「よし、またスライムが現れたぞ!!」


 と僕は呟きスコップを持って、構える。

 今回は赤い色をしたスライムだった。

 透明な塊で、プルプル震えている。


 そして僕たちに襲い掛かろうと、ちょうどいい場所にスライムがぴょんと飛び跳ねた所でそのスコップを横になぎ、


カキーンっ


 小気味の良い音がして空高く飛び上がったスライムは星になった。

 結構いい感じに飛んだなと僕が思っていると、そこでスパーンと誰かに僕は頭を叩かれる。

 見ると魔女エーデルが紙の束を持っている。


「あまり痛くありませんが、何するんですか」

「それのせいで私がどんな目にあったと思っているの!」

「あ、また一匹」

「……え?」


 そこで何処からともなく飛んできた水色のスライムが、魔女エーデルに襲いかかり、


「や、やだってばっ、ちょっと、胸の間に入って……やめっ、スカートに入ってこないでよぅうう」


 というような惨状に陥っていたけれど、とりあえず僕達の方には襲ってこなかったので、


「おー」

「おー」


 ミナトと一緒に状況を観測していたらアオイに本で強く叩かれた。

 そして何故か姫さまが魔女エーデルに近づきスライムを倒す。

 それに魔女エーデルは複雑そうに、


「え、えっと、ありがとう……」

「いえ、女性に優しくするのは当然ですから」


 微笑むヒナタ姫。

 魔女エーデルは沈黙して、どこか冷や汗を垂らしながら、ふっとあさっての方向を見たのはいいとして。

 そこで僕は気付いた。


「あ、スライムの大群が来ますよ。珍しいですね、100匹近くいるんじゃないですか?」


 見るとそこには色とりどりのスライムの大群がいる。

 “スライムの大行進”と呼ばれる現象で、理由は不明だがある一定数のスライムがいると爆発的に増えてその後合体したりして巨大スライムになって襲ってきたりもする危険な現象である。

 ただこの集団化して巨大化したスライムは、大きいまま打ち返すと、打ったまま四方八方に飛び散りそれはそれで面白……綺麗である。


 しかもどれくらいに分裂するのかを競いあったりして、村ではよくある遊びの一つだったのだが、


「絶対に打ち返すんじゃないわよ!」


 そう魔女エーデルに僕は、釘をさされてしまった。

 これ、結構楽しいのにと僕は残念に思う。

 と、そこでミナトが元気よく、


「よし、そろそろ俺の出番が取れそうだ!」


 そう言って嬉しそうに僕達の前に踊りでたのだった。

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