第27話(採掘跡に、go!)
ミナトが手を全面に手を伸ばして、何やら呪文を唱える。
僕は“ファイヤー”と言えば炎が出る程度にしか魔法は知らないので、こういった呪文を使う本格的な物らしい魔法を見るのは珍しかった。
周りでもあまり使っている人もいなかったし。
というわけでミナトのその魔法を僕は真剣に観察していた。
「“古の業火は、全てを焼きつくす”“その力を、片鱗たる輝きを、我に示せ”“炎の演舞”」
そう唱えると同時に、ミナトの前面に大きめの光り輝く魔法陣が地面に展開して、そこから炎が吹き上がる。
赤く大きく燃えるちょっと大きめなキャンプファイヤーのように見えた。
そしてその炎が消える頃には半分程度スライムが消えていた。
「小規模の魔法だが、普通に魔法を使っていたり独自色を出さなくてもここまで出来る!」
「「「「おおー」」」」
手を叩く僕とリン、魔女エーデル、ヒナタ姫。
アオイはなんとなく頷くのが嫌なのかそっぽを向き、ミミカはどうでも良さそうに、取りこぼしたスライムが襲ってきていたのでフライパンで撃退していた。
フライパンでボコボコ倒すのはよくあること(村では日常的な光景)だなと思ってみているとそこでリンが、
「よし、次は私の出番~」
と言ってスライムに突っ込んでいき半数近くを一瞬にして細切れにした。
細い糸が光の中でかすかに輝いて見えるも、すぐにそれは消える。
こう一体と関係は匠の技らしい。
これにてスライムの集団はいとも簡単に倒されてしまったわけですが、そこで魔女エーデルが、
「スライムは弱いけれど集団になると大変で、そこそこ優秀な魔法使いが数十人集まったり有能な剣士もいないと大変じゃなかったかしら」
そう不思議そうにつぶやく。
だがそれを聞いて僕は、
「そうなんですか? 僕達の村ではいつも農作業なんかの合間に遊びで打ったり倒したりして駆除していましたが。作物を荒らしますし」
「……貴方の村の話はおいておくとして、何でこんな子供達がこんなに強いの? しかも集団で? おかしいでしょう?」
「偶然を必然に見るようになると騙されるって僕は教わりました」
「……それもそうね」
僕のその言葉に魔女エーデルは嘆息して、そのまま僕達は更に進み適当に魔物を倒したりしながら山道を進み、採掘場に向かったのだった。
入山料を千二百コールド支払い山の中にある採掘場に向かう。
僕達の他にも数十名が山に入り込んでいるらしい。
ちなみに採掘場は、この山だけで十スポット近くあるそうなのだけれど、
「とりあえず周辺で“探査”の魔法で、必要な材料の波長は確認したから付いてきて」
とのことで、魔女エーデルについていく。
必要な材料のある場所が程度絞れるらしい。
ただピンポイントでここ、というのが分かるわけではないようだが。
そしてそちらに向かうも木の根が所々に大きく張り出していて歩きにくい。
この山の中でも一番深い所にあるらしいそれだが、あまり人が行き来しないせいだろう、道があまり整備されていない。
仕方がないと歩き出す僕達だが、そういえば、
「姫様は大丈夫ですか? こういった山道はあまり慣れていないと思うのですが」
「ええ。でも大丈夫です。体は鍛えておりますから」
との返事が返ってきた。
ヒナタ姫はこう見えて体力があるらしい。
なのでそのまま僕たちは、岩の切り出しそのままの階段を登ったり、砂利道を歩いたり、細いロープを伝って歩くこと三十分。
他の場所は入り口からもっと近いとはいえ、意外に時間がかからずにその場所にやってきた僕たちは、これからその採掘していた穴の中に入ることにする。
中には所々魔法のランプが灯っていて、足元が見やすく整備されており、それほど周りは暗くない。
なのでただ歩いている分には危険は少ないように感じた。
そこで分かれ道のようなものがある。
どちらに行くのだろうと僕が思っていると魔女エーデルが、
「ここからこの中に入って散策するわ。ここが採掘場のようね」
という魔女エーデルの言葉を聞いて僕は、
「この中のどのあたりにあるかまで分かるのですか?」
「ええ、大まかには。あとはその辺りを掘るだけ。はあ、魔力とか魔法とか、お姉ちゃんに制限されていなければこんな場所に来ることなく好きにできるのにな~、嫌になっちゃうわ~」
そんな風に嘆く魔女エーデルについていくように僕達は採掘用の穴へと入っていったのだった。
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