番外編(幼馴染が都市まで村から走って追いかけてきたときの出来事・2016/01/17~18に投稿した内容です)

 その日私、ユナは熱を出していた。


「うーん、うーん」


 やはり一昨日、ユウトを追いかけ回したのがたたったらしい。

 だがあれは全部ユウトが悪いと思うのだ。

 それは一昨日の出来事。


「あれ? 最近ユナ、ちょっと“たる”みたいになった?」


 ユウトが悪びれもなく私にいってきたのである。

 何でも寒がりな私が服でもこもこになっていたのを見て、この村特産、“ロールブトウのワイン”樽という他よりも細長い形をした樽の形にユウトは見えたらしい。

 だが、それを言われた瞬間私は、デリカシーなく、“太った”? と聞かれた様に感じたのだ。


 女の子に、そう素で聞くというアホさ。

 はっきり言って私はユウトが“好き”である。

 幼馴染としてこの村でずっと一緒に育っていったのだが、いつの間にか恋心を抱いてしまったのだ。


 だが素直になりきれず、そうはいえない私は気付けばユウトにとって女性としてではなく何か違う男の遊び友達の様なものになっている気がする。

 焦りはするが素直に何てなれないし、一応は、髪を結ったり化粧をしたり、アクセサリーを付けたり服装を気を付けたり、おしゃれにも気を使っているのだが……ユウトは全く気付かなかった。

 全く気付かなかったのだ!


 ちらっとその事を言うと、ユウトは真剣に何かを考えてから、


「そういえばちょっと違うような気が……あ、石鹸変えた?」


 と私の化粧をした顔を見て言いやがったのである。

 確かに化粧をしたが、ナチュラルメイクにしていたので分かりにくかったかもしれないが、明らかに違う答えに辿り着くのはどういう事なの!

 そこまで考えて私は熱が更に上がってきた気がしてぐったりした。


 先ほど母が薬を持ってきてくれたのでそれを飲み、大人しく眠っている。

 体中の痛みは少し減った物のだるくて動けない。

 頭の上には濡れたタオルが乗せられているがすでにぬるくなっている気がする。


 体調が悪い。

 やっぱり一昨日、ユウトを追いかけ回したのがいけなかったのだろうか?

 最近は私が怒ってもすぐに逃げてしまうので報復が出来ない。

 

 雪の降る森の中を走り回ったのがいけなかった。

 だが最終的にユウトを森の一角に追い詰めて捕まえて、よくも“たる”といったわねと締め上げた所、その様な意味だと分かったのだが。

 だがもう少しユウトは、私に対してこう……こう……。


「なんだだか頭が熱くなってきた。寝て早く風邪を治そう。うん」


 私はそう小さく呟いて、瞳を閉じたのだった。










 かたんと窓が開くのを感じたが眠くて目が開けてられない。

 同時に頭に重みを感じたがよく分からない。

 私はまだまだ眠くてそのまま意識を失う。


 そしてどれくらい時間がたったのだろう。

 私はふと頭の重みに目を覚ました。

 頭の上にタオル以外の感触と重みがある。


 一体何だろうと額に手を触れると、何か丸い物が乗っていた。

 冷たくてつるつるしたそれを掴み、ボールかなとぼんやりした頭でそれを手に取る。

 それを目に見える範囲に持ってきてそれは赤い色をしているのだと気付いた。


 赤くてつやつやして白く鈍い輝きがある。

 新鮮な証拠だと言えるかのような赤くはりのあるそれ。

 この村の特産品の一つである“雪トマト”だ。


 試しに裏返して見たりしても、“雪トマト”である。

 ここの村の風習で風邪をひいたときは、この“雪トマト”を額に乗せておくことが聞くと言われているのだ。

 だが額に“雪トマト”をのセルという間抜けな構図になるのは私だってやるのは嫌だ。



 そもそもそんなで早く風邪が治るわけがないじゃないかと私は思う。

 なので母さん何でこんな恥ずかしい事をするんだと思いつつ、喉も渇いていたのでその“雪トマト”をかじる。

 みずみずしくて甘くてとても美味しい。美味しいのだが……。


「なんでユウトの家の“雪トマト”なのだろう?」


 味が少し違うのだ。

 はっきり言ってユウトのうちの作る“雪トマト”はとても美味しい。

 だから食べてみればすぐわかるのだ。


 美味しいなと思っていると母が来たので私は、


「頭に“雪トマト”を置かないでよ。恥ずかしい」

「あら、おいていったのはユウトちゃんよ」


 それを聞いた私は、一瞬何を言われたのか分からなかった。

 次に私の中で湧いてきた物は、たとえようもない怒りだった。

 熱が更に上がっていく様な頭が沸騰するような感覚を覚えながら、


「ユウトぉおおおお、ユウトぉおおおおおお」


 しばらく呪詛の様に繰り返し繰り返しつぶやいて体を震わせて、けれどそれをやっていたら頭に熱が上がっていてそのまま私は再び眠りについたのだった。










 その怒りによってか、私の風邪は回復傾向に向かう。

 その夜には風邪はほぼ治り、普通の食事をとる。

 肉を食べて元気を付けようという事でお肉料理が並び夜は豪勢な食事をしていた。


 それから薬を飲んで私は再びぐっすりと眠る。

 大事をとってその次の日もゆっくりとして眠る。

 ただその間に私が思ったことといえば、


「ユウトがお見舞いに来ない」


 何時もなら来てくれるのに薄情だなと思う。

 いや、一度だけ来ていた。

 額に“雪トマト”を置きに。

 

 それを思い出すと私の中でふつふつと怒りが再燃していく。

 やはり次に会った時には、“雪トマト”の件に関して問いただしてやろうと思う。

 大体お見まいと言ったら、花を贈るだの他にも色々あるだろう。


 特に今のこの時期には、雪を養分にして育つ“硝子の花”が見頃なのだ。

 それを持ってきても良かったはずなのだ。

 なのに“雪トマト”。

 

 そう、“雪トマト”

 それも私の額の上に。


「絶対に許さない。後で絶対に捕まえてやる」


 私は総呟きながら再び眠り、次の日……驚愕の事実を知ったのだった。







 風邪がだいぶ良くなってほぼ治ったので私は外を散歩することにした。

 久しぶりにユウトの家にいってユウトにお仕置きしてやると私が決めているとそこで母に、


「ユナちゃん、どこに行くの?」

「ユウトの家に行くの! ユウトのやつ一度しかお見舞に来なかったし」

「あら、それは無理よ」


 のほほんと母が言った。

 何でだろうと私が思ったけれどそこで、


「なんでもユウト君、春休みにでっかいことがしたいと言い出して、女神様から伝説のシャベル? だかなんだかを持って都市に行っちゃったわよ?」

「でっかいこと? というか私と高校行く話は……」

「それまでに一回戻ってくるんじゃない?」


 母親がほのぼのとしたようにそう告げてくるのを聞きながら私は、怒りに任せて少ない小遣いを持って、


「ユウトの所に行ってくる」

「あらあら、ユウトちゃんと一緒に帰ってくるの?」

「その予定、それじゃあ行ってきます」


 そう言って私が走って行くと途中でこの村に住む、メイサさんに会った。

 その昔魔女エーデルといろいろやりあったらしい彼だが未だに二十代前半と言える容貌だなと私は思いながら、


「ユウトはどのルートで行った感じですか!?」

「あれ、ユナちゃんはもう風邪はいいのかな?」

「大丈夫です完治しました。というわけでユウトを追いかけていくことにしたのですがどっちの道ですか?」


 都市に行くには二つの道がこの村にはある。

 なのでその二つについて見ると、メイサが、


「そうだね、もし魔法を使って走って行くなら、ノーラ村の方のルートがいいんじゃないかな。どうせもうユウトは都市についているだろうし」

「そうですね、分かりました。馬車台も節約も兼ねてそっちから行きます」

「いってらっしゃーい」


 そう言われて見送られつつ私は魔法を使って走りだす。

 足に風系の魔法を使い、体を軽くして少しでも早く進むのだ。

 普通に走るよりもずっと早くこの状態では走れる。


「待っていなさいよ、ユウト。絶対にそんなアホな理由でアホのことなんてしているようだったら村に連れ戻してやるんだからぁアアアア」


 そう私は叫び走っていったのだった。








 土の道を走り続ける私は途中、魔物に遭遇した。

 人通りが多めのこの道なので魔物が出るのは珍しい。

 魔物がどのように生まれ増えていくのかはあまり詳しくないというか、様々な方法、それこそ動物のように多種多様に子供を増やすのでよくわからない。


 その魔物でさえもただ単に魔力を持ち魔法で攻撃してくる動物を定義としているだけなので実質、動物と変わらない。

 なのでその子孫を増やす速度と、こういった街道で倒されてしまう量を考えると、人通りが多いこの街道で魔物が出るのはそれほど多くないはずなのだ。

 だって既に攻撃したので倒されたり、こういった人通りの多い街道では魔物駆除隊という国の機関が見回りをして倒しているはずなのだ。


 なので今ここで五匹ほどの野犬の魔物が私の前に立ちふさがっている。

 全く、どうしてこんな時にと私は思わざる負えない。

 私は今あのユウトを怒りに任せて追い掛け回している最中なのである。


 そんな機嫌の悪い私の前に出てきてどうしろというのか。

 しかもこの魔物たち、集団であることで自信をつけているのだろうか。

 赤い血のような瞳出目の前の私を“エサ”だとでも思っているのだろうか?


 弱肉強食というが、私が弱い肉になる存在だとこれらは思っているようだ。

 この魔物たちは毛のない茶色の肌を震わせて、大きな口を開き私に白い牙を見せつけている。

 唸るような声を聞きながら、私は笑った。


「この私を襲おうというのだからそれ相応の覚悟があるってことでいいわね!」


 そう告げて私はその魔物全てを倒し、粗悪品と分類されるだろう魔力の結晶である石を手に入れる。

 粗悪品と言ってもそこそこ使いではある。

 これらは茶色い濁った泥水のような小さなものだが、こんなものでも植木鉢に埋めると育ちが良くなったり花の色が鮮やかになったりする。


 もっともまれに突然変異を起こし、鉢の上で踊っていたり、部屋を走り回ったりすることもあるらしいが。

 そういった突然変異を使う品種改良の方法もあるらしい。

 さて、そのあたりの話はいいとして、


「うーん、いきなりこんなに魔物が出てくるなんてね。せいぜい出てくるのはスライムぐらいだと思っていたのにな」


 ここはそこそこ人通りが多いので魔物が出てくるとは思わなかったのだ。

 出てきてもすぐ倒されてしまうだろうと思ったのだ。

 しかも今の時期は、スライムが何故か少なくなる時期なのだ。


 あのドロドロベチャベチャネチャネチャしたスライム。

 品種によっては春頃に大量発生して、森から出てきたそれが野菜の芽を食い荒らすことがあるので、森で大量発生している所を駆除したりする。

 やはり人間の作る野菜のほうがスライムたちには美味しいらしく、鳥にも気をつけないといけないがこのスライムの食害は侮れないのだ。


 というわけで春頃に発生するスライムを村総出で駆除するのが、私の住んでいるアルバ村の風物詩である。

 ただ、今は春でも早い方なのでまだスライムの大量発生は起こっていない。

 とは言うもののスライムは生命力が強いので倒してもすぐに増えて街道に出てくるような気がする。

 

 現に私の目の前でスライムの大群が……大群が?」


「え? いや、ちょっと待って、え?」


 私はそこで見た。

 普段はそれほどたくさん見ないスライム。

 今回は緑色のものが沢山列をなして蠢いて道をよぎっている。


 その数は数百で足りるのだろうかという量だった。

 まるで何かの石に導かれるように道をよぎっていくスライム。

 この先には確か、ノーラ村があったはず。


 村は大丈夫だろうか?

 そんな気持ちになるもののそこで私は気づく。

 このスライム軍を倒さなければ、この先に勧めないのだと。

 

 これも全て、ユウトの策略か! と全く関係ない自象を繋げつつ怒りのボルテージを上げていき、


「わが前を立ちふさがりしスライム達に、その身の程を教えてくれるわぁあああああ」


 叫んで私は駆け出しスライムを倒していく。

 あとからあとから湧いてくるスライム、

 面倒くさかったなら何処かに蹴り飛ばして星にしてしまえばいいのだが、量が料だけに分散させるのも気が引ける。


 面倒くさいと思いながらそれらスライムを凪ぐように力強く蹴り倒していく私。

 やがて私がそれら目に見えるスライムをほとんど倒した頃。


「あ、ノーラ村が見えてきたわ。あれ?」


 そこで私は気づく。

 ノーラ村の結界が強化されている。

 結界は外から害獣がこないようにするためのものだがそれがまえきた時よりも強くなっているようだ。

 

 これは一体何を意味しているのか?


「もしかしてさっき見たスライムが関係しているのかな?」


 でもこの結界だと村の入口まで行かないといけないやと思ってそちらに向かう。

 その村の入口には一人の男性が立っていた。

 なので休憩も兼ねて私は何かを飲みたかったので、


「すみませーん、何か飲ませてください」

「! え? どうやってこの村に?」

「? スライムを倒してここに来ました」


 正直に私が告げるとそのおじさんは驚いたように目を見開いて、


「スライムは!?」

「だから倒しましたって」

「……もしやアルバ村の住人?」

「そうですけれど」


 そこでその男性は何かを考えるかのように沈黙してから、


「すみません、あのすら見を倒すのをてっつだって貰えませんか? 礼金は幾らかお支払いしますので」

「是非させていただきます!」


 丁度お小遣いが心もとないと思ったのだ。

 このおかげで都市までの馬車代が出るかもと、私はニヤリと笑ってその男性について行ったのだった。










 実はその男性は村長さんだったらしい。

 年齢は、30代前半のようだ。

 このノーラ村の村長をしている家系であるらしい。


 さてそんな彼に私が頼まれたのが、


「スライムを集める“ドロドロ石”?」

「うん、都市の土産物屋で売っていたので面白半分で買って、持って返って来たら大量のスライムに襲われて慌てても森に捨てて結界を強化したんだ」


 困ったようにいう村長さんだがそれを聞いて私は、


「何でそんなものを買ったんですか? スライムなんて集めてもしょうがな無いじゃないですか」

「沢山来るから、珍しいものを捕まえられたらいいなと思ったんだ。そもそも安かったしそこまで効果がないだろうと油断していたのだけれどね……」


 遠い目をする村長さん。

 一体幾らぐらいなのかと重って聞いてみると私の所持金よりも少なかった。

 これは効果がないと思うだろう、普通。


 それで面白半分で買ってみたら効果が抜群で、あの私が遭遇した緑色の濁った夏の池みたになっているのだろう。

 あのスライム集団がこの村の直ぐ側の森に集まっているようだ。

 なので結界を強化しているがそれにも結構お金がかかるし都市に妖精を出したら自分達でなんとかしろと返って来たらしい。


 スライム程度なんとかなるだろうと思われてしまったようだ。

 そんなわけで丁度アルバ村の住人である私が来たのでお願いされたらしい。

 しかもこれから食物と飲物もご馳走してくれるようだ。


 それを聞いて私はいい人だなと思いつつパンなどを食べる。

 それからそのスライムを放り捨てた場所をこの村長さんに聞き、結界の内部からその場所を教えてもらう。

 入口付近だけ結界を弱くしているので、そこから出ないと出入りできないそうなので内側からだ。


 大体の場所はわかった。

 結界に張り付くようなスライムの山が見えたのでその場所だろう。

 村を定義するような木の柵が連なっているので、結界の外に出たらそれを伝って動けば自ずと目的地にたどり着くだろうと私は思った。


 そして礼金とご飯にあっさり釣られた私は、スライム狩り、及び魔道具の破壊を目指して走りだしたのだった。

 








 スライムを集めるその石はスライムが集まっている場所にあるのだろう。

 そしてスライムが惹かれるので、彼らの中心部にあるに違いないと私は推測する。

 それらから導かれるのは、


「ここにいるスライム達をかたっぱしから倒していけばいいってことね。というかそれ以外方法はないか」


 スライムが群れをなしてあそこに集まっているんだからその中心部まで行かないといけない。

 つまり一番集まっていた利回りからスライムが供給されるとその削った部分が埋まるのを考えるとその全てのスライムを、全部対しておく方が良いのだ。

 面倒な依頼と思わなくはない。


 けれど村の大量発生はその中心部は誰が一番初めに見つけ倒せるかの競い合いの部分もあったので、この程度倒せなければこの先あのイベントで私が勝利できることはないだろうと思う。

 それにあの程度なら私だって倒せると思うのだ。

 そもそもご飯もたくさん食べたし。


 ごはんを食べると魔力の回復力がアップするのは当然のことなので、これだけあれば、


「よーし、病み上がりのうっん動を兼ねて倒しますか」


 私は小さくそう呟く。

 村の入口付近には先程私が大量に倒したためか、列をなすスライムの存在は見当たらない。

 と言っても何匹か逃げ遅れたのか遅れてきたのか分からないスライムがいたが私を見ると逃げていった。


 臆病なスライムなのかもしれない。

 逃げるものを追っていても仕方がないので私はそれを無視し、村の柵に沿って歩き出す。

 緑色の雑草が茂っていて少し歩きにくい。


 所々や部になっていてまだ雪が残っているのも更に歩きにくい。

 しかしスライムがいる場所がいる場所なので、ここを歩かざる負えない。

 あの場所に行くのにいい道はないか聞いたが特にはないようだ。


「スライムが大量に闊歩しているから、それらが通った後という道がありそうだけれど、あのスライムがどういった動きをするかわからないしね、仕方がない」


 変な回り道をしたらそれこそ、その分の大量のスライムを倒さないといけない。

 あの集める石を壊せば視線にスライムは解散するだろう。

 出来ればそれに労力を使いたい、


 弱い魔物とはいえ量が沢山になるのは倒すのには大変なのだから。

 そう私が思って歩いているとそこで私は見てしまった。

 はぐれたらしい数匹の緑色のスライム。


 それらがその場所に留まり、何やらブルブルと震える。

 それはゼリーがぷるんと震えるようでそう思うと美味しそうに見えた。

 だが思ったのは一瞬だった。


 その緑色のそれは震えていたかと思うと同時に、ぽんと音を立てて二つ、三つにわかれたのである。

 私は思わず立ち止まってしまった。


「あんなふうにスライムって増えるんだ。いや、そういう種なのかも」


 かと言ってどれほどの感覚で増えるのかわからないし、あの石にくっついたまま延々と膨れ上がり……そこまで考えて私は、今の状況はまずいと明確に理解した。

 できるだけ短期間であのスライムを倒さないと。

 そう私は思いながら更に走るとその先に巨大スライムが見えたのだった。









 私が見た時より若干スライムが大きくなっている気がする。

 嫌すぎると思いながら私はまずその巨大な塊になったスライムに魔力を込めてケリを入れる。

 まずは炎の力を持って一発。


「だいたいこれくらい減るか。次は風!」


 切り裂くような風の刃を纏いながら蹴りを入れる。

 このスライム達は特にその体内にある球状の核を壊すといいとされている。

 なので、足に刃をまとわせた岩場ぢ離塁ょうにしてそこに突っ込むが……。


「スライムの粘性が強くて一気に仲間で掘り進められないか。火の魔法よりは効果があるけれど、地道に削っていくならこっちかな。でももう少し楽に倒したいな 。次は水というか氷だね」


 そう告げて足を引き抜いてからそのままスライムの表面を走り上がる。

 走った足元からスライムの表面が凍っていく。

 そこまで深くは凍らせられていないのだけれど、スライムの主成分が水の魔力と関係しているので、水は凍ると体積が膨張するためにその影響で書くにヒビが入ったり壊れたりしてスライムの原型が保てなくなる攻撃である。


 ただ凍らせる効果はこのスライムの表層にしか効果がなかったようだが、それでも削れた量は今までで一番多いようにも見える。

 範囲が広かったというのもあるかもしれない。


「ようはどれが効率的かなのよね。あれ?」


 そこでそのスライムの集団がブルブルと震えだした。

 さっきスライムが二つに分裂した時のその様相にとても良く似ている。

 ここにいるスライムが集団で分裂するのだろうか?


 嫌すぎる、私は小さく心の中で思って、スライムの上から遠のいた。

 少し離れた場所で様子を見たほうがいいと判断したからだ。

 このままスライムに取り込まれたら、窒息するかもしれないし。


 スライムって体につく飛べちょっとして気持ちが悪いのだ。

 そう思いながらスライムを蹴って地面に降りた私はそこであるものを目撃する。

 それは村の結界を張っている柱のようなものだ。


 先ほどの震えるスライムの動きによって柱が小刻みに揺れて、どことなくヒビがはいっているように見える。

 結界のそういった柱は特に要となる場合が多いので魔法で強化されているはずだった。

 けれどそれが維持できる以上の力で攻撃されれは壊れるのが道理。


ぽきん


 何かが折れるような音がした。

 どうやら今のスライムの動きでその結界を作る柱が折れてしまったらしい。

 なんて事だと私が思っていると更に自体は予想以上の展開へ。

 

 先ほど震えていたスライムが、中にいっぱい核の球を沢山持っていたスライムが、その核を一つにまとめて巨大なスライムとかしてしまったのである。

 そのスライムはゆらゆら揺れてそのまま村を目指しているようだ。

 結界の柱が一本おられたので村のいつ部が結界が張られていない状態である。


 しかもそのスライム、質量が大きいのでメキメキと裂く自体を重みで壊しているようなのだ。

 嫌すぎると思いつつもここでこの一匹を強力な一撃で倒さねばと思う。

 この核の部分に力を届かせないといけないが先ほどの風、炎、氷では表層部分しか行けない。

 

 だってその核はこの中心部にあるのだから。


「うう、一気にここのスライムを伝って出来る攻撃じゃないと駄目か。……待てよ?」


 そこで私は考える。

 氷攻撃が水の効果によって効果的ならば水が電気を通すように核にまで到達できないかと。

 不純物の少ない水ならまだしも、こんな外に出ているような水である。

 

 しかもスライムは土の道を歩いているのだ。

 電気が通らない心配もおそらくはないだろう。そう思って私は魔力の四分の一を持ってそのスライムの頭上高くまで風の魔法で飛び上がり、


「雷よ、降れ!」


 そう叫んだ。

 同意時に稲光りが真下と周辺に走り、ちょっと離れたところの結界の柱に落ちたような気がして肝が冷えたけれど、


「みゅみゃあああああ」


 一発で済んだ。

 その一撃でそのスライムは小さく弛緩してそのまま濁った少し大きめの魔力の石になる。

 これは売れば少しお金になるかもと思って私はそれを拾い上げ、その側にあったスライムをもし対しの像のようなものを見つける。


「これかな?」


 多分そうだろうと思ってそれを破壊しておく。

 これでもうスライムは大丈夫だろうと思っているとそこで先程の村長さんが慌てたように来て、


「ど、どうしよう、魔力の柱が……作るのにも沢山のお金が……」


 焦ったような村長さんを見つつ、結界無しで暮らすのは魔物が来てきついようにも思える。

 そしてここに今倒したばかりの魔物の魔石。

 しばらくはこれを代用品にすれば結界は維持できる。


 だから私はその倒したスライムの魔石を使って、簡易的な結界の柱を作りその場を後にした。

 うっかり礼金をもらいそこねてしまったが、感謝されて恥ずかしくて逃げ出してしまったのは私だから仕方がない。


「よし、このまま走って、ユウトのところまで一気に行くぞ!」

 

 こうして私は、再び走りだして、ユウトと新しい友達と合流したのだった。

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