第22話(次の日の約束)
魔女エーデルは僕に聞かれて嫌々と言ったように、話しだした。
「いい加減私も大人気なかったなと思ったのよ。いつまでも私が悪く無いって言い続けるわけにもいかないなって。一応祝福としては機能しているのもあるけれど、このままにしておくのもよくないだろうって。それで、私自身よく“魔法”を失敗するから、いざという時のために、前にその“祝福”を解除する道具を庭の端っこに埋めておいたんだけれど……」
「けれど?」
「箱の中が空になっていて」
「……」
僕は沈黙せざる終えなかった。
だが閉まっておいたものがないというのはこう……親に“かたずけをしなさい”と言われるような……と思いながら魔女エーデルを見ると、エーデルは顔を真っ赤にして、
「本当だってば! 確かにあの箱のはずなのに中身がなくなっていたの! “
嘆くように言うエーデル。
伝説の魔女というだけあって自分の自宅には特殊な結界が張られているのだろう。
そういえば魔女エーデルについては色々と謎が多かったはず。
伝説上の存在のようにも言われていたとか聞いたことがある。
だから住処すらも確認できていないのかもしれない。
とはいえ僕は思うに、
「あの、スライムが飛んできたんですよね?」
「……そうよ、結界張ってあったのにそれを突き破って私の寝室に……これだからアルバ村人間は嫌なのよ。あいつら絶対おかしいわ……まてよ?」
そこで魔女エーデルは何かに気づいたらしく、はっとした表情で僕をじっと見て、
「そう、犯人はアルバ村の住人、つまり貴方よ!」
「僕ですか?」
ビシッと指差し僕に宣言した魔女エーデル。
どうやら僕が犯人らしい?
そんなことを言われてもと僕が思ったけれど、そこで魔女エーデルが深々と嘆息し、
「まあそれは冗談として、私の屋敷に埋めたものがなくなるなんて、アルバ村の住人か、お姉ちゃんが何かをやらかしたくらいしかなくなる理由が思い当たらないの。でも、書いておいた場所にないとすると……そうなるとどこにあるのか分からないから、それを探すのもきついから、材料を探すことにしたのよ」
「そうなのですか」
「そうそう。それにお姉ちゃんは全部知っているんじゃない? 知っていて私が酷い目にあっているのを見て、ニヤニヤ笑っているのよ。性格が悪い……ではなくて、一応は女神様だから、全部見えているしね」
そう嘆息した魔女エーデルだが、そもそも女神の妹なら、何でこの世界にいるのだろうと僕は思う。
もっと女神ティラス様などと同じところに住んでいても良さそうなものだ。
そしてその女神様と同じような場所ならば色々見えるらしい? ので、そうなってくると、
「この世界にいるので見つけにくいなら、女神様のいる場所に一度エーデルさんも行って、何処にあるか探せばいいのでは? そうすればどこにあるのかも見えたりするのでは?」
「無理よ。この世界創るのも維持をするのも含めて面倒くさいから全部お姉ちゃんにお任せして、人間達が作って面白いもの見て遊んで、食べて、だらだらしていたら、少しは手伝いなさいってここの世界に放り出されて以来、戻れないのよね」
「……ちなみに戻ったらどうするんですか?」
「もちろん以前のような気楽な生活をして、後、自分好みの男を手に入れてやるわ! 逆ハーレムよ!」
あっさり答える魔女エーデルを見て僕は、多分この人はまだしばらくこの世界にいることになるだろうという確信じみた予感を覚えながら、
「でも呪いを解くにはいくつか必要な材料があるんですよね?」
「ええ、都市で購入できるものは一通り集めたから、明日から残りの必要な材料を森やらなにやらから集めに行くのよ」
「じゃあお姫様の呪いを解くので僕もついていきますね。お手伝いします」
「……」
「どうかしましたか?」
「いえ、誰かと一緒に何かをするのって久しぶりで」
僕はそれ以上何も言うことが出来ず、とりあえず僕は魔女エーデルと約束をするとそこでリンが、
「あ、私も付いて行っていい?」
「いいけれど、貴方、何だか“変”じゃない?」
「ああ、私ね、女神様の暇つぶしで、魔女エーデルを見つけるゲームをしていたの。でも見つけたからそのゲームは終了で後は好きにしていいらしいから、面白そうだから付いていこうと思って」
「そうなの? お姉ちゃんって自分は遊んでいるくせに、む~。……いいわよ」
リンに答えるとすぐにアオイとミナトも一緒に来るという。
春休みで暇だし面白そうだからという理由らしい。
そんなこんなで僕達は明日の約束をして、その日は別れ、僕はアオイの魔法学説明から逃げ切れたのだった。
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