第23話(招かれざる客達)

 事前にとっておいた宿は既に満杯だった。

 どうして分かったのかというと、店の看板の前に、満室ですと書かれてイオタ看板が掛けられていたからだ。

 魔法学博物館に行く前にこの宿を予約しておいたのは、正解だったようだ。


 いい宿だから早めに取らないとと思ってやっておいたのは良かったらしい。

 一応仲も確認したら部屋も綺麗だったのだから。

 そう思いながら宿の主人に鍵をもらい、僕は部屋に向かう。


 事前に重い荷物はスコップ以外全てここに置いて移動したのである。

 もちろん貴重品は持ち歩いていた。

 というわけで部屋に戻って少し椅子に座ってから、現在、僕は近くのスーパーでスープとパン、鶏肉の唐揚げを購入して部屋で食事をとっていたりする。


 この辺りのお店は外に出ている看板を見る限りとても値段が高い。

 なので旅行者は自分で料理をしたり惣菜などを購入して済まして節約する場合が多いそうだ。

 さっき歩いていた人がそう話しているのを聞いて、なるほどと思い僕もそうすることに。

 他の地域では安い店もあるらしいのだが都市に来たばかりの僕はよく分からない。


 この宿周辺は宿もそこそこ立ち並んでいて都市観光客目当てのお店が並んでいて、それもあって、観光者向けの値段の高い店が立ち並んでいるのだろう。

 明日辺りにアオイ達に安い料理のお店を聞いてもいいかなと僕は思った。

 そしてそれを知った僕も、そのような理由から食事をスーパーで購入してきた。


 ちょうどスーパーには、出来立ての総菜が並んでいたのは運が良かったと思う。

 そして机の上に並べられたそれらの総菜を僕は見渡す。

 野菜スープは温めたものを今買ってきたばかりなので暖かく湯気が出ている。

 パンはサクサクでバターをたっぷり使ったものが丁度焼きたてて出てきたので、迷わず購入したものだ。


 しかも唐揚げも丁度揚げたてを購入できた。

 つまり全てできたて熱々。

 なのでそのサクッとした食感を楽しみたいとまずは肉にフォークを伸ばす。


 いい音がすると思って口の中に放りこむと、旨味と程よいスパイスの効いた肉汁が舌の上で踊った。

 むっしゃむっしゃむっしゃ。


「旨い、もう一個!」


 もぐもぐぱくぱくごくごく。

 味付けも程よい塩加減でとても美味しい。

 そう思いながら僕は食事をする。


 一人で。

 ……。


「何だか寂しい気がする」

『そうなの?』

「そうなんです」


 ぼやいたら返事が帰ってきた。

 女神様の声だったので僕は食事をやめて(食事中に話すのは失礼だと思ったので)、明日の予定について知っているだろうが、どうするのかについて報告しておく。


「明日から魔女エーデルと一緒に材料を探しに行きます」

『そうね。その作りたいものの材料も都市の近郊で採れるものばかりだから良かったわね。ただ……』

「ただ?」

『邪魔する人達もいるかもだけれど、ユウトちゃんなら大丈夫よね。いざというときは盾代わりにもなるから、その“万能スコップ”。それでサクッと倒しちゃってね』

「そうですね、そうやって使えばいいのか……ありがとうございます」


 そうお礼を言った僕。

 女神様がどういたしましてと言ってそれ以上聞こえなくなったので、仕方がなく僕は、むっしゃむっしゃと食事をしていたのだがそこで、こんこんと部屋の扉を叩く音がする。

 どうやらだれかが来たらしい。


 とはいえ現在食事中だったので、


「ただ今出ることが出来ない状況になっております。しばらくお待ちください」


 と答えてみた。

 とりあえずこの熱々の食事だけでもしたかったのである。

 だがそこで僕の部屋の扉が蹴破られた。


「姫様をお待たせしようとする不届き者の意見など聞いていません」

「扉の修理費は払ってください」


 そこで僕は即座に返した。

 今金具がぽぽーんと飛んだのを僕は目撃したのだ。

 借りている宿、その扉の修理費まで僕が出すのはきついのである。


 なので壊したお金の有りそうな方にお願いすることにした。

 そう告げると、以前会った姫のメイドのミミカは、


「その程度のはした金、いくらでも払えますわ」

「そうなんですか。それで、今日は入口の扉のないまま僕に眠れということでしょうか」

「……この程度の大工仕事、私だって出来るわ」


 そう言って扉の方に向かい直しに行き、そのミミカと入れ違いに顔を布で隠した人物が一人。


「お食事中、失礼いたしました」

「ヒナタ姫?」


 声からすぐに分かったが、こんな外が暗くなってやってきたのは、昼間に話をしたヒナタ姫だったのだった。

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