第24話(違和感?)

 食事が終わるまで待っていてくれるらしい。

 お言葉に甘えて食事をさせてもらう事にした。

 やっぱり僕もお腹が空いているのである。


 とはいえ何もせずに待たせておく、というのも何なので。

 たまたま余分に買っておいた瓶詰めの、冷却魔法が加えられた“三ヶ月リンゴ”のジュースを二人分取り出し、おやつにと買っておいたバタークリームとレーズンを挟んだクッキーを取り出し、二人の前に置く。

 お茶の代わりだが、一応はおもてなしになるだろうと思ったのだ。


「僕だけが食べているのもなんですので、こんなものしかありませんが、どうぞ」

「ありがとうございます」


 微笑み僕から飲み物を受け取るヒナタ姫。

 今は僕の部屋なので覆面姿ではないため、こう、美少女がにっこりと微笑む姿を僕は間近に見てしまうわけである。

 なので男として見とれてしまうのも当然だったりするのだが、僕は直ぐに食べ物に目を移した。


 メイドのミミカがじっと僕を見ていたからだ。

 粗相をしない内にと思ってとりあえず食事をとる。

 美味しい。


 出来立ての鶏のから揚げにパンにスープ。

 どれもサクサクふわふわ肉汁のうまみと、どれをとってもとても美味しい。

 美味しいものは実はそれほど高くなくても沢山あって、世の中にあふれている。


 後はお腹の容量と相談だと思いながら僕は食事をしていく。

 そんな僕の目の前で、ミミカも毒味のためか姫のジュースを味見して目を輝かせつつ、自分の分をどことなく目をキラキラさせながら飲んでいた。

 新製品だったらしいこのリンゴジュースは、僕も味見をしたけれどお土産として持って帰ってもいいかなと思うような代物だった。


 そして食事を終わらせた僕は、ようやく話せる状況になったので、


「それでヒナタ姫はどうしてこちらに?」

「いえ、お礼の賞金なども含めて手渡しをしたいと思いまして。そしてできれば呪いを解くお手伝いをしてくださるユウト様についていこうかなと」

「? どうしてですか?」

「自分のことというのもありますし、その、初めて一緒にいて大丈夫な男性というのがその……興味がありまして」

「それはかまいませんが、お城の方は大丈夫なんですか?」

「身代わりをおいてきましたから、大丈夫です」


 影武者か何かいるのかなと僕が思う。

 お姫様とかそういうものだと、物語ではそういうものがいたような気がするし。

 確かに今は男性の装いで、自身が女性であるのを隠しているかのようそうだ。


 ここまですれば姫だとは分からないかもしれない。

 そう、剣まで持っているしと僕はそれらを見つつ、


「でも町の外は魔物もいますよ?」

「大丈夫です、私、いざとなったら女の子と結婚するかもということで王子としての教育も受けていますから、剣も扱えます」

「そうなんですか。凄いですね」

「はい!」


 微笑む彼女だが、何だかふと僕は違和感が合った気がしたけれど、それが何なのか僕は思いつかなかったのでそれは置いておくとして、


「でもメイドの子は大丈夫なのですか?」


 それにクッキーをちょうど食べ終えてたらしいミミカがむっとしたように、


「失礼ですわね。魔物なんて適当にフライパンや鍋で殴って倒すから構いません」

「それもそうですね」


 ミミカの怒った様な言葉に僕はそう納得した。

 言われてみれば幼馴染のユナも普段はそんな感じだった。

 ただいつもは鍋を常備していないので蹴りで倒していたが、さすがにドラゴンが出てきた時は深底鍋が必要だったと言っていた気がする。


 結局他の村の人がいて、それで倒したらしいと僕は聞いた。

 でも一度でいいからドラゴンと遭遇してみたかったんだよなとあの時、話をユナ達から僕は思ったのだ。

 ドラゴンのお肉は焼いたりしてもまずかったけれど、やはりドラゴンというと一度は戦闘してみたい。

 そこでミミカが僕の顔をまじまじと見てから、


「突っ込まないんですか?」

「? 何を?」

「いえ……そうですね、あの村の住人ならその程度……ぶつぶつ」


 何かを真剣に考えだしたミミカ。

 どうしたのだろうか?

 不思議に思うもそこで僕はあることを思い出したので、姫とミミカに、


「魔女エーデルと今日遭遇したので、一緒に解除する道具を作る材料を明日探しに行くのですが構いませんか?」

「……魔女エーデルが見つかったのですか?」


 驚いたようなヒナタ姫に僕は今日の出来事を説明する。

 それにヒナタ姫はまあという顔にになり、メイドのミミカはむ~といったしかめたような顔になる。そして、


「では私の呪いは確実に解けるのですね?」

「おそらくは」

「ではこんな風に女子にちやほやされるのも終わりですか。それもちょっと寂しい気がしますね」

「……そうですか」


 何か変なことを聞いた気がしたが、明日の朝の集合場所を伝え待ち合わせの約束をし、姫とメイドは他の宿に泊まったのだった。 

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