第17話(原因不明のアジトの壊滅)
こうして僕たちは魔法学博物館にやってきた。
ここには来たことがなかった僕は、大きな建物だとその博物館を見上げる。
レンガ造りの大きな建物で、周りには花壇が置かれて黄色いや青などの花が咲き乱れている。
ここがアオイが来たかったところであるらしい。
僕の魔法の概念は、アオイ達とは異なるようなので今回の展示物の見学で、新しい何かが得られるといいなと楽観的に僕は考えていた。
そんなこんなで入場して中に入る。
そこそこ広い部屋には幾つもの絵付きのパネルや、ガラスケースに入った“魔道具”や“本”等が飾られたり、ちょっとした魔法の道具(水が噴水のように流れるもの。けれど小さなお皿位のミニチュアの噴水として飾ってあった)の展示などがあった。
ざっと見た範囲ではそうだったのだけれどそこでアオイが、いつも以上に楽しそうに、
「さて、魔法に詳しいこの私が説明してあげるわ!」
ビシッと僕を指さしながら、アオイが僕に宣言した。
とりあえず教えたくてウズウズしているアオイが可愛いし、教えてもらえるならまあいいか、むしろこちらからお願いした方が良いかもしれないと僕が思っていると、ミナトが一瞬僕の方を気の毒そうに見てからアオイに向かって、
「アオイ、程々にしておけよ」
「わ、分かっているわよ」
それにリンも、確かにあれはきついよねと同意して、アオイが怒ったように頬をふくらませた。
折角説明してくれるのに、そんな風な言い方はないんじゃないかなと僕が思ったのはその時だけだった。
実際に僕自身が体験してその意味を知る。
「も、もう限界です。休憩を……」
「あら、まだ三分の一しか来ていないし説明だって途中じゃない」
「へ、へるぷみー」
僕は、アオイと僕から離れて様子を伺っていたリンとミナトに手を降って助けを求めた。
これ以上は僕ももう無理だと思ったのだ。
だが二人はにっこり笑って、
「頑張れ、君の犠牲は無駄にはしない」
「きっとユウトなら頑張れるはず!」
「へ、へるぷみぃいいいい」
そんな丸投げっぽいことを言われても僕はもう限界だった。
僕のそういった危機的状況の信号を受け取ってくれたらしく、リンとミナトがやってきて、リンが、
「あっちに休憩所があるからそっちで休みましょうよ。今日はユウトはここについたばかりであの“お姫様鬼ごっこ”に出ているわけだし」
「……仕方がないわね。いいわよ」
とのことでリンの助け舟のおかげで、僕はようやく休憩をとれたのだった。
緑色の甘く香りのあるシロップを炭酸で希釈し、その上にバニラアイスをのせた飲み物を飲みながら僕は傍で流れているラジオを聞きながらアオイに聞いてみた。
「でも都市って、まだ国を乗っ取ろうという人達がいたみたいだね」
「ここの所数年でそういう人達が出てきているのは確かね。女神様の言う悪い事を考えている奴らという物でしょう。確か都市で起こった大きな事件一覧に、ここ最近の話が載っていたかしら」
食事をしているそばの雑誌の置いてる棚に、それらのラジオでたまたま聞いた出来事が年号まで全部記載されているらしい。
そこについ最近の物があったのだ。
というわけで何となく気になったからという理由で雑誌を開いてみていく。
確かに一覧はあった。
ただ、原因不明のアジトの壊滅で全てが収束しているが。
そこでアオイが珍しく難しい顔をして、
「そこそこ遠い国が経済破綻しちゃってね。そこの人達がこの国の都市に雪崩れ込んでいるの。そして、全てではないけれど一部の人達がそういった行動に出ているの」
あきれたように呟くアオイ。そこで、
「でも普通にそんな人を傷つける事をしないで、その時間を仕事や別の生産的な事に回せばいいのに」
「ものを作ったりする能力が欠如しているから、略奪することでしか食べ物すらもえられない人間ているの。一応、犯罪者の場合は警察が捕らえた後で職業訓練をさせたりする場合もあったりするらしいけれどね。……最近、都市も不穏なの」
「でもそんなで都市の維持とかそういったのはその人達に出来るのかな? 出来なければ略奪する意味がない気がする」
「出来るわけがないでしょう。理屈が逆よ。生産的な事が出来ない、都市の意地もできない、作れない、だから略奪しか出来ないの。さて、暗い話はおしまい。次に回るわ。折角だから魔女の特別展示物のところを先に見ましょう」
「まだ全部飲んでいないよ!」
僕は慌てて自分のクリームソーダに口をつける。
まだバニラアイスが半分以上残っている。
僕は急いで飲んでいく。
ミナトはすでにアイスも飲み物も食べ終わっていて、アオイモリンもほとんど食べ終わっていた。
どうやら都市に来た物珍しさで僕は、食べるのがゆっくりになっているらしい。
それに仕方がないわねと、アオイは呟き、そこで思い出したように、
「ちなみに壊滅させられたそのアジトは全部あの魔女エーデルによって引き起こされた、と言っているのよね」
「そうなんだ」
「ただ歴史上で、魔女エーデルを騙って何かをやると、その魔女自身が潰しに来るという伝説があるのよね」
まあ、流石にそれはないだろうけれどと笑うアオイだけれどそこでリンが、
「んー、本人じゃない? 自分の名前が騙られて悪さをされるのって物凄く傷つくらしいし」
「まるで本人に会ったことがあるみたいな発言よ、リン」
「ははは。でも私も今だから言うけれど魔女エーデルを探していたりするんだよね」
「そうなの? 知らなかったわ」
「でも急ぐわけじゃないから観光していただけ」
そう笑うリンに、ユウトも飲み終わったみたいだし行こうかと言い出したのだった。
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