概要
なお、本書作成担当記者、エミリア=テューア・ヴェーバー(壱地区・新聞社・扉)は、教会によって正式に選出された担当記者であり、本書作成のため零地区・教会に五日間滞在、司教への取材を実施している。本書に関する内容は全て、教会の承認のもと公表されたとし、取り扱いいただきたい。
クアドラートの街に、正方形のご加護があらんことを。
840年 エミリア=テューア・ヴェーバー
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!とっておきのファンタジー
冒頭から読者を引き込む魅力あふれた作品です。
記者エミリアが若き司教アオイの半生を取材する過程で次第に明かされる秘密や過去の事件。クアドラードという正方形の街を舞台に、宗教的背景や住民の暮らしが独自の世界観を作り出し、その中に自然と没入できました。
また、重厚なテーマを扱いながらも、ウィットに富んだ会話やシンプルな文体が作品全体に軽やかさをもたらしてくれます。緻密な構成と静謐な雰囲気が、読後にも深い余韻を残します。最後まで引き込まれ、一気読みしましたが、適切な文章量にまとめられており、爽快感が残りました。どうかご一読ください。アオイの人生に共感しながらあなたの心も揺さぶられることでしょう。 - ★★★ Excellent!!!唯一無二の世界観で紡がれる、普遍的な想いの物語。
幸せを想うこと、生きること、優しい賛美歌が歌い上げます。
本作は、特徴的な宗教概念によってたつ街クアドラードに生きる人々と、彼らに寄り添う第四十一代司教のアオイ、司教記録本の担当記者となったエミリアが織りなす物語です。
若く、ともすれば奔放に見えるアオイに惹きつけられるエミリア、読者は彼女の瞳の中に、ちょっとお邪魔させてもらうような感覚でしょうか。
澄明な空気感と鮮やかな色彩のイメージ、異質な世界とそれでも変わらない人の営み、エミリアの眼差しに導かれて愛おしい時間を共有できます。
やがて、少しずつ過去の事件と、人々の心を紐解く展開に触れる頃には、もう読者は彼女として、同じ空間で息づいているこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!物語の最後に、「あなた」に込められた意味を知る
正方形の街クアドラートに就任した若き司祭アオイ。新聞記者のエミリアは、彼の半生を綴るために、5日間の取材を行うことになる。
穏やかで、茶目っ気があって、およそ厳格な司祭とは程遠い彼。しかしその裏側には、美しくも悲しい出会いと別れがあった――。
一文目から引き込まれ、物語の最後のシーンで涙しました。
この物語は、とても透明で美しいと思います。アオイという一人の男の人生を辿っていき、それを記述する。エミリアが書物として残す言葉は非常に簡素です。けれど、短く書かれた一文の事柄を知る最中で、彼女は多くの人間に取材をして、その感情に触れている。その事実の上に立った時、簡素に書かれた書物の一言が、冒頭…続きを読む