冒頭から読者を引き込む魅力あふれた作品です。
記者エミリアが若き司教アオイの半生を取材する過程で次第に明かされる秘密や過去の事件。クアドラードという正方形の街を舞台に、宗教的背景や住民の暮らしが独自の世界観を作り出し、その中に自然と没入できました。
また、重厚なテーマを扱いながらも、ウィットに富んだ会話やシンプルな文体が作品全体に軽やかさをもたらしてくれます。緻密な構成と静謐な雰囲気が、読後にも深い余韻を残します。最後まで引き込まれ、一気読みしましたが、適切な文章量にまとめられており、爽快感が残りました。どうかご一読ください。アオイの人生に共感しながらあなたの心も揺さぶられることでしょう。
幸せを想うこと、生きること、優しい賛美歌が歌い上げます。
本作は、特徴的な宗教概念によってたつ街クアドラードに生きる人々と、彼らに寄り添う第四十一代司教のアオイ、司教記録本の担当記者となったエミリアが織りなす物語です。
若く、ともすれば奔放に見えるアオイに惹きつけられるエミリア、読者は彼女の瞳の中に、ちょっとお邪魔させてもらうような感覚でしょうか。
澄明な空気感と鮮やかな色彩のイメージ、異質な世界とそれでも変わらない人の営み、エミリアの眼差しに導かれて愛おしい時間を共有できます。
やがて、少しずつ過去の事件と、人々の心を紐解く展開に触れる頃には、もう読者は彼女として、同じ空間で息づいていることでしょう。
異世界ファンタジーの醍醐味、真骨頂とも言える体験を、あなたも是非、味わってみて下さい。
正方形の街クアドラートに就任した若き司祭アオイ。新聞記者のエミリアは、彼の半生を綴るために、5日間の取材を行うことになる。
穏やかで、茶目っ気があって、およそ厳格な司祭とは程遠い彼。しかしその裏側には、美しくも悲しい出会いと別れがあった――。
一文目から引き込まれ、物語の最後のシーンで涙しました。
この物語は、とても透明で美しいと思います。アオイという一人の男の人生を辿っていき、それを記述する。エミリアが書物として残す言葉は非常に簡素です。けれど、短く書かれた一文の事柄を知る最中で、彼女は多くの人間に取材をして、その感情に触れている。その事実の上に立った時、簡素に書かれた書物の一言が、冒頭のアオイの演説に込められた意味が、じわりじわりと胸を締め付けてくるのです。
この物語は、美しい宗教画そのものです。謎めいていて、深く掘り下げれば掘り下げるほどに、込められた意味に心が震える。本当に贅沢な読書体験でした。
ぜひ皆様、ご一読くださいませ…!