実を言うと、僕も今、この物語の紺野と同じような閉塞感を抱えています。
それを打破するには、たとえば誰かを好きになることや、何かに夢中になること、あるいは思い通りにならない「光」を追いかけることが必要なのかもしれません。
仕事中も休みの日も、孤独や飽きに突き動かされるような思いを抱えていて、「捉えようのない光が欲しい」と思う瞬間がたくさんあります。
紺野の物語は、そんな僕にとっても他人事ではありませんでした。
青い鳥の寓話のように、幸せが実はすぐ近くにあるとしても、なかなかそれを実感できないのが現実です。
でも僕は、紺野とは違ってまだ生きている。遺影にしたい風景もなければ、あやめさんのような存在もいませんが、それでも生きています。
もしかしたら、この物語はあなたに「ひとりぼっちじゃない」と気づかせてくれるかもしれない。
疎外感の正体を問い直す力を持った、そんな作品です。
ご一読をお勧めします。
私も一時期写真を撮ることにのめり込んでいました
一日中、カメラを首から下げて
新たな景色、見慣れた景色……関係なく
一瞬を切り取っていました
私にとっての写真は、日記のようでした
元来、筆不精で、なにかを書き残すということが
億劫だった私に、手軽にできる
記憶の保存
でも、いつしかそれは……
目的を見失ったような気がします
そんな私が、今……こうして文字を書き付けている
写真よりも鮮やかに、鮮明に……
小説は、写真と違ってカメラやレンズが自分を助けてはくれません
ですが、時折……
直接脳に映像を描き込んでくることがあります
この筆者の描写は、
私が、欲しくてほしくて……堪らなかった
あの日の写真のような、そんな景色を
私に刻みました
この映像は、きっと消えない
そして、いつまでも鮮明に私に囁く
そしてもしかしたら……励ましてくれるのかも
五千字程度の作品でしたが、感想を書けと言われれば、ゆうにそれを越える文字数が書けてしまうほどに濃密な作品でした。タイトルから崇拝を思い浮かべましたが、本作はもっと深い意味をこの言葉に持たせていた印象です。それをどう解釈するのかでも、本作に対する見方は広がっていくと思います。考察の捗る一作でした。
また、地の文の並べ方も秀逸。平易な文章の連続でもなく、難しい単語の羅列でもないのに、自然と物語に入り込むことができました。その秘密を研究したくもありましたが、今のわたしのレベルでは無理そうです。無駄がなく、それでいて乾き過ぎていない。むしろ、読者を引き込む力がある。そんな文章に圧倒されるばかりでした。
素通りするには惜しい作品です。せめて一話だけでも、目を通すことを強くお勧めします。きっと、気づけば二話目も読んでいるはずです。