第32話崩れ行く先に。
けへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへけへ
あるものは笑う。
魔界の空は依然として、滅びようとするかのように赤く染まり、
事実。その終わりは訪れるようだった。
「何故だ!! どうして貴様が、それを守る? 考えられない!!」
天使は気が狂ったように、いや。
恐らく本当に気を狂わせて。
もだえる。
「別にこの子を助けようと思ったわけじゃあないよう? 」
彼は嗜虐的に乗っ取った依り代の体を抱きしめる。
さも嬉しそうに。
「私はねえ? この子の壊れ方を、この目で見ておきたいんだあ」
ケラケラと笑う。
「……そんなことをせずとも、その男は時期に消えてなくなるだろう!
一体何がしたいのだ!?」
天使はミツルの状態を改めて認識する。
今現在、体自体はマトンに乗っ取られてはいるが。
彼は、欠けているのだ。
「その男はお前では埋まらないのだぞ!」
それを聞いたマトンは、天使を蔑むように目じりを吊り上げる。
「うーん?? 言っている意味が分かんないなあ」
首をかしげる。
「消えるのは、私たちのほうじゃないのかい?」
は?
「何を言っている? どうして私たちが消えるというんだ?」
天使が問うと、
「……よくもまあ、ここまで大それたことをしようと思ったものだと、甚だ感心するもの何だけれど。お前は、気が付いてない」
幼子のような口ぶりで悪魔は言う。
まるで、大好きな食べ物を、最後まで取っておくようなそぶりで。
「この子には、生きる意味なんていらないんだよお、
この、無自覚な、災害にはねえ?」
災害。
そう、言うこともできるのだろうか。
もとはと言えば、天使の、ミカエルの計画が狂ってしまったのは
物部三鶴という欠落者の出現のせいであるのだ。
それに、彼という人間の存在が、いくつもの『存在』を作り出した。
例えば、ツムギという悪意に飲み込まれた女性。
例えば、世界の全てに劣った劣等感の塊。
例えば。
人間を捨てた、人間モドキ。
たった一人の感情や性質が、魔界という一つの世界の『仕組み』
そのものを作り変えてしまった。
「私たちは、感情というものを知らなかった。
だから、キミも、この子の結末を予測できなかった。
……キミも、私も、ヒトみたいには生きれない。」
悪魔は空を見上げる。
「私たちは、終わりどころを探していたし、キミだって、
世界を、終わらそうとしている。」
「貴様に私の何がわかるというんだ!! これまで、これまでずっと!!
時が経てばたつほどに、気力は削れ、存在も消えていく! このまま消えてしまうくらいならば、壊したほうがましなのだ!」
「いやはや、ハハハこりゃあ、ずいぶんと人間みたいなことを言うようになったじゃあないかあ? いったい、」
悪魔は、ミツルの体の壊れた腕を凝視して、
「誰の、影響なのかなあ!!!!!」
そう叫んで、目を赤く、ぎらつかせた。
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