第3話ノアの子供たち
「あんたの600ノア、あたしにチョーだい!!」
青髪の少女、ネルは助けた品の良い女性にお金をねだった。
「……はい。」
助けられた側である女性は茫然としたまま、持っていたお金をネルに手渡した。
ひゃっほう!とその場でくるりと回る少女は
「……で、お前どこのどいつだ?」
獣のような目で、「人間の女」を睨みつけた。
「一体、どんな手段を使えばただの!人間が!ここに来れるんだあ? 」
今さっきまで一緒にいて、あまつさえ怪我の手当てまでした男が
もともと人間だったことなどネルは知らずに尋ねる。
「わざわざそんな獣人の真似なんかして、ばれねえとでも思ったのかよ?」
「……」
「だんまり? 人間のくせに。それともなんだ? あたしの言葉が理解できねえのか?」
「……いえ、ただ、少し驚いただけですよ。ここ十数年、私の変装がばれたことなんてなかったというのに。たいした識別能力をおもちなのですね。魔物のお嬢さん。」
「……こいつら」
眼下で倒れている数人の男たちを見て
「殺そうとしてたよな?」
胸倉をつかまれた瞬間、その女性が「何か」をしようとしていたことを
ネルは直感で感じ取っていた。
今でも感覚が叫んでいる。この女は普通じゃない。危険だ。
「何より、アタシの『咆哮』を受けて無傷なんてのは初めての経験だぜ」
「……」
無言でその女は「箱」を出した。
「なん、だそれ……?」
「あら、、さすがにこれはわかんないか。」
女は愛しそうに「箱」を撫でていた。
「ねえ、あなた。魔族は誰から生まれたか、知ってるかしら?」
魔族の起源?
「そんなの、神様とかじゃねえの」
「違うわ。」
無知を笑うように女は言った。
「……まあ、知る必要もないわね。」
「なんなんだよ。質問ばっかしやがって、」
「黙りなさい」
「うあっ!!!!!!? 」
急にネルの体は、地面に叩きつけられた。
「か、、、はあ……ああ!! 」
起き上がれない。なんだこの魔法は?
重力?いや違う、もっと酷いなにか……まるで、
いくつもの見えない手が、「下から」引っ張っているような感覚。
「あなた、幸せそうね。」
女は顔を嗜虐的に歪めて、
「貶めたい貶めたい貶めたい貶めたい貶めたい貶めたいぃ……!!」
自分の顔を両手でかきむしりながら、ネルを謎の力で圧迫する。
抗えない、説明ができないような力の束。
それが今、彼女の体中を覆っていた。
ネルは思う。
あれ? しぬのか、こんなところで?
さっきの奴、仕事見つかったのかなあ。大丈夫だったのかなあ。
あいつ、またちゃんと来てくれたりすんのかな……あれ?
あいつの名前、きいてなかったなあ。
ネルの苦しむ姿を見ながら女は、
「あーつまんないの。神さまが洪水で殺そうとしてた時にだって、
もっと強い魔族どもはいたっていうのに。たった数千年でこんなにも
世界が変わってしまうだなんて、あの人も余計なことをしたものだわ。」
「おま、え、一体何を言って、、ん、だ……? 」
今にも落ちてしまいそうな意識を必死にこらえて、ネルは言った。
「人間界の話を、なんでここで、する必要があるんだあ?」
ウフフと女は「さあね」と笑って、
「すべては、パンドラさまのために。
……『フラン』!!」
詠唱とともに、あたり一帯が、黒い炎に包まれた。
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