ちょっとずれてる兄妹アゲイン(番外編)
妹「ところでさ、兄貴」
兄「……どうかしたか」
妹「最初にさ、わたしの人生の一割は兄貴だって言ったんだけど、兄貴の人生は何割くらいがわたし?」
兄「なにを言ってくるのかと思ったら……」
妹「正直なところ、不安」
兄「何がだ」
妹「このままだと、わたしにとって幸せな未来は待ってないんじゃないかって」
兄「……なにを言っているのかわからない」
妹「わたしの未来がかかっているのにきれいごとばかり言っていられないので。どうなのそのあたり?」
兄「考えたことすらないわ」
妹「えー……じゃ、わたしとのデートと、オリジナルメンバーでのミスター〇ッグのライブだったら、どっちを選ぶ?」
兄「ミ〇タービッグに決まってるだろ! パットトー〇ーが亡くなった今、もうオリジナルメンバーでのライブは見れないんだぞ!」
妹「……じゃあ、わたしとのデートと、コミックマー〇ットだったら、どっちを選ぶ?」
兄「コ〇ケに決まってるだろ! 逃した同人誌は大きいんだぞ!」
妹「……じゃ、じゃあ、プレミア〇フライデーの吉里家(よしりや)の無料牛丼と、わたしとのデート、だったら?」
兄「順番を変えても同じだ! 当然牛丼だ、無料に抗(あらが)う術(すべ)などないわ!」
妹「………………」
兄「………………」
妹「…………ぐすっ」
兄「!?」
妹「ううっ……牛丼にすら負けた……わたしなんて風の前の塵(ちり)に同じ……」
兄「……いや、おまえ、それ以前に盛(たけ)き者として君臨してないだろ……」
妹「ひっく、だって……あれだけ親愛の情を示したのに……」
兄「……俺、困惑していい? じゃあ逆に聞くが、おまえは、俺と期間限定のショートケーキ味焼きそば、二つあったらどっちを選ぶんだ?」
妹「兄貴」
兄「即答かよ!? いいかよく考えろ、この機を逃したら二度と食べられない期間限定焼きそばだぞ?」
妹「カレー納豆味焼きそばだったら悩んだけど、ショートケーキ味には食指が動かない」
兄「……じゃあ、俺とサ〇ドウィッチマンのお笑いライブだったら?」
妹「兄貴」
兄「またまた即答かよ!? あれだけ好きなサンドウィッ〇マンのお笑いライブだぞ?」
妹「だって、それはもう何十回も行ってるし。ヱガちゃんだったら悩んだけど」
兄「……そうだった、おまえ一時期学校サボってまで行ってたもんな……じゃあ、コーラの期間限定大麦若葉味と、俺なら?」
妹「もちろんコーラ……じゃなかった、兄貴……って、なんでそこだけ順番入れ替えるのー!」
兄「……自分の仕掛けた罠に、自分で引っかかるなよ……」
妹「とーにーかーくー! 何を比較対象に持ってきても、わたしは兄貴を選びますー!」
兄「ならば、十億円と俺なら?」
妹「………………兄貴」
兄「ふっ、迷いが出たな。まだまだ青いわ」
妹「そんなこと言ったって……じゃあ兄貴は、十億円とわたしなら、どっち選ぶのよ?」
兄「おまえ」
妹「でしょ? 当然だよね…………ええっ?!」
兄「何びっくりしてんだ」
妹「だって、だって、普通そこは『十億円』って言うところでしょ、兄貴なら」
兄「んなこと言われても……十億円などあまりに現実離れした金額すぎて、想像つかないからな」
妹「そういうもの?」
兄「俺にとっては。同じ現実離れしてるなら、大金抱えてピリピリするより、おまえを見て爆笑してるほうがよっぽど楽しいだろう?」
妹「爆笑ってどゆこと? ……なんか、わたしが現実離れしてるって言われてるようで、素直に喜べない……」
兄「まあいいじゃないか。俺の人生の一割くらいはおまえだと思えば」
妹「…………うん。そうだね。わたしは十億円の女!」
兄「はいはい。……おっと、そういや今日はプレミ〇ムフライデーだった。吉里家行かないとならないな」
妹「あ、わたしも行く! スマホとってこなきゃ」
兄「早くとってこい。一緒に行くか?」
妹「もちのろんだよ! ちょっと部屋に行ってスマホ持ってくるね!」
兄「おう」
パタパタパタ。
兄「まったく……十億円どころか、四百円でお釣りがくる女だろ、あいつは……」
兄「…………」
兄「……しかし、俺ってあいつの人生の一割程度なはずなんだが……一割ってなんだろうな……」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
妹「あ、あったあったスマホ。……へへ、待ち受けのお兄ちゃん、本当に男前だなあ……」
妹「…………」
妹「……顔がゆるんじゃう。『人生の一割くらいはわたし』だって……お兄ちゃんたらツンデレだから、きっと裏をとって人生の九割はわたし、ってことよね」
妹「…………」
妹「……わたしと、同じだあ……うふっ」
ーーーー 番外編 完 ーーーー
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