39 VS.教育制度



39 VS.教育制度マインドコントロール



 有名な一貫教育学校であっても、いや、だからこそ、‘ みかけ ’の仕組みであっても、伝統という権威に執着する共犯者や、教育を利権としてしか考えない‘ みかけ ’やその共犯者は、内に潜むものだ。


 先ず、討魔者として‘ みかけ ’から‘ 魔 ’を祓い、その共犯者たちを《浄化》する。


 一瓏イチロウという個人のためではないが、それが援けになったらしく、一瓏イチロウは入学を果たした。


 学費は、非合法な国家組織の‘ みかけ ’を祓った際に、国家に押収されないように集めた貨幣で造った基金の奨学金試験に正規の方法で合格した事で得たものだ。


 理事には‘ 魔 ’の穢れがほとんどない者を選び、彼等と受験者を《浄化》してはいるが、選抜には一切関与していない。


 現時点の学力よりも、社会をより善い方向へ導きたいという意志や、‘ みかけ ’の仕組みに影響されていないかという面を重視した心理試験の結果を第一に考える資格審査だったが、一瓏イチロウは学力でも抜群の成績で合格を果たした。


 この基金は‘ みかけ ’の影響を祓いながら、教育制度の変革に向けた役割も果たしていく事になるだろう。


 この島域で名門と呼ばれる一貫教育学校は幾つかあるので、一瓏イチロウは、その全てに転校しながら在学していく予定だ。


 伝統という権威に含まれる‘ みかけ ’の仕組みで、子供達が‘ 魔 ’に染まらないようにするためだ。


 当然、一瓏イチロウに、注目が集まる事になり、その異常性に気づく者も増えるだろう。


 あれから3年経った事もあり、‘ 幼児退行症候群 ’との関連に気づく者はいないだろうが、人間の限界以上の身体能力は気づかれる可能性はある。


 もともと、‘ 命気 ’を纏った時点で、ミサイルの直撃でも死なないので、気にしても仕方ないと、生物としての練成強化を肉体に施したのは、ある意味で失敗だった。


 討魔者としては、当然過ぎる強化ではあっても、こちらの世界で人間と認識されなければ、‘ 人 ’として生きる事はできない。


 ‘ 魔 ’が実質化せず、見る事もできず、‘ みかけ ’の仕組みで争いあう事を強いられ続けたこの世界の人間達は、‘ 疑心暗鬼という呪い ’をかけられている。


 利と情で結ばれた相手でなければ信じられず、利権で結ばれた相手と利用しあい、利権を奪いあって争う生き方ができなければ、‘ みかけ ’に奪い尽くされるからだ。


 そうして、‘ みかけ ’や、その共犯者達が利を得て、正直者や不器用な優しさを持つ者達は、貶められ蔑まれ奪われ続けていく。


 “ 国家という‘ 争いあう征服統治組織 ’に認められた証として、貨幣という利権を得る生き方 ”以外の在り方など、考えもつかないように教育制度マインドコントロールで思考の自由を縛られた人間は、虚構の数字を求めるだけの奴隷とされる。


 そして、奴隷以下の人間だと、貨幣利権を得られない人間達を差別して‘ 社蓄 ’などと呼び、下卑た優越感で自らを慰める事で、‘ 魔 ’に魅入られていく。


 そうして造られた階級主義ワールドカースト という‘ みかけ ’の仕組みを変えようとするものは、‘ 利権という呪い ’に捉われた‘ みかけ ’や、その共犯者に陥れられ、害され、殺される。


 ‘ 人 ’として‘ みかけ ’の仕組みに抗うとは、そういった悪意や害意にさらされる事でもある。


 討魔者として、その危害が取るに足らないものであったとしても、一瓏イチロウが人間として見られなくなれば、‘ 人 ’として‘ みかけ ’の仕組みを変える事はできなくなる。


 それは、でき得る限りの努力で避けねばならない。


 ‘ みかけ ’でない共犯者に狙われる事になれば、討魔者でなく、人間としてそれに相対あいたいさなければならず、その時に一瓏イチロウの身体能力は役立つだろう。


 だが、それは人間として見られなくなる危険性も持つ。


 だから、ある意味では失敗ではあるが、銃で頭を撃たれても傷一つつかないなどというのに比べれば、遥かにましではあった。


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