30 VS.不法雇用



30 VS.不法雇用サクシュ ノ シクミ




 “ 死と苦痛と不幸と‘ みじめさ ’と‘ 卑屈さ ’をばら撒く ”ための、‘ 人 ’が望まない‘ みかけ ’の仕組み。


 それを支えるのは、‘ 民主主義国家 ’と呼ばれる‘ 征服統治組織群 ’では、知らぬ間に‘ みかけ ’の共犯者とされた人間達だ。



 ‘ みかけ ’の仕組みも、“ ‘ 弱さ ’を認められない人間達の‘ 甘え ’ が創り出す‘ みじめ ’な幻影”だという事を誤魔化しながら。


 ‘ みかけ ’の仕組みが、“ 決して変えられない現実 ”で。

 “ ‘ 人 ’が望む在り方 ”は、“ 理想という名の美しい幻想 ”だ。


 そう信じ込ませて、‘ みかけ ’は、‘ 人 ’の心に‘ 魔 ’を吹き込む。



 “ 理想という名の美しい在り方 ”と“ ‘ 弱さ ’を認められない人間達の‘ 甘え ’ が創り出す‘ みじめ ’な在り方”。


 その二つの狭間で、自分の在り方を求める人間達に、それは無駄な努力で。


 ‘ みかけ ’の仕組みに従う事が賢い生き方だ。



 そう信じ込ませて、偽りの安寧と誤魔化しの幸福を与える事で、‘ みかけ ’は、共犯者を創っていく。


 



 無邪気な共犯者は、自らが“ 死と苦痛と不幸と‘ みじめさ ’と‘ 卑屈さ ’をばら撒く仕組み ”の中で生きている事に気づかず、愚民化と呼ばれる‘ みかけ ’の誤魔化しに縋り。


 卑屈な共犯者は、“ 強い者が弱い者を従える在り方 ”こそが正しいという‘ みかけ ’の理屈を利用して、‘ 貨幣の量という権力 ’に縋り。


 小賢しい共犯者は、“ 理想という名の美しい在り方 ”を敬遠させ、あるいは貶める理屈で、共犯者を増やし‘ 地位という権力 ’に縋り。


 ‘ みかけ ’の仕組みを広めながら、徐々に‘ 魔 ’に魅入られていく。


 犯罪や戦争やテロやハラスメントやイジメという“ 死と苦痛と不幸と‘ みじめさ ’と‘ 卑屈さ ’をばら撒く ”行いに加担はしなくても、止めようとは思えない無邪気な共犯者。


 それが増える事を、‘ モラルハザード ’とこの島域の人間は語る。


 ‘ 魔 ’を感知できないのだから、危機感はなく、小賢しい共犯者によって、‘ 魔 ’ジメツの恐ろしさから目を逸らされ、無邪気であり続ける事を平穏と感じる‘ 弱さ ’に甘え続ける限り、‘ 魔 ’は心を蝕み続けるのだ。



 浮浪者達に混じって情報を集めるチョウに、教授と呼ばれるホームレスが語る‘ 彼にとっての現実 ’は、そういう‘ みかけ ’の仕組みを嫌って世捨て人となった風情があった。


 ホームレス狩りから仲間を救ったチョウを、教授は気に入ったらしく、不法入国の外国人だと名乗り、文化や言語の情報を集めていたチョウを、教授が縄張りに迎え入れたのが出会いだった。


 教授は気のいい男で、以前は小さな出版社を経営していたらしい。


 大した黒字もでないけれど、文化の継承や地域のコミニュティと密接な繋がりを持つ出版社は、教授の誇りだったという。


 だが、一つの版権が教授の運命を変えた。


 それは海外でベストセラーを取り、ハリウッドでシリーズ映画化された小説の日本での独占出版権だった。


 今までの数十倍の売り上げと膨大な黒字と引き換えに、欲に塗れた人間達が、教授に近づいてきた。


 それだけなら、まだ耐えられたが、家族が欲のせいで変っていくのが、教授には耐えられなかったという。


 嘘ではないのは、《読心》など使わなくても判った。


 ‘ 擬身 ’の感覚は鋭く、嘘をつく人間を見抜くのは容易い。


 教授の家族は、‘ みかけ ’の共犯者としての生き方を選んだのだろう。


 文化の継承や地域のコミニュティから離れ、虚栄の享楽や利権のコネを、求めるようになっていったらしい。


 教授には、その‘ みじめ ’に変り往く家族を止める事ができなかった。


 それを悔いて、元の家族の容を求めて、利権の売却をしようとした教授を待っていたのは裏切りと離別だったのだろう。


 その顛末を教授は語らなかったが、笑顔の裏の哀しみの匂いが、それを物語っていた。


 長いつきあいではなかったが、そんな境遇でも‘ 魔 ’の翳りの見えない教授は、‘ 人 ’ として尊敬できる男なのだろう。


 だが、そんな教授を‘ みかけ ’の仕組みの共犯者達は、‘ 負け組み ’という醜い言葉で呼ぶ。


 ‘ 武族 ’ですら、人生を、勝ち負けで語りはしない。


 勝ち負けとは、争いの場だけで決められるもので、それで‘ 人の在り方 ’を測る‘ 卑しさ ’を理解できなくなれば、‘ 魔 ’に魅入られていくだけだ。


 ‘ みかけ ’の仕組みから外れる生き方を、望むのは敗北で、人生は争いあい蔑みあい憎みあうものだと、‘ みかけ ’の共犯者達は騙る。


 そして、その誤魔化しを、流行とするのが、マスコミと呼ばれる‘ 情報の操作売却組織群 ’だ。


 だからこそ、‘ 擬身 ’と‘ 擬似生命 ’による情報収集は、不可欠だった。

 

 ‘ 擬身 ’は、感情を、‘ 擬似生命 ’は事実を。


 その二つを理解できなければ、この世界では、人生は虚構に成り果てる。


 一瓏イチロウという‘ 人の在り方 ’を定めるための情報収集を兼ねた‘ みかけ ’探し。


 それは、この世界の在り方を探るものでもあった。


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