31 VS.不法雇用



31 VS.不法雇用サクシュ ノ シクミ




  あちらの世界とは違う‘ この世界の在り方 ’。


 神々と邪神群と神使が、‘ 人の在り方 ’を巡って争そう世界とは違う世界の在り方。


 “ 人間が、‘ 獣としての在り方 ’と‘ 人としての在り方 ’の狭間で争いあう在り方 ”を探る中。



 教授が殺されたのは、彼とチョウが知り合って一月もたたないうちだった。


 原因は、たわいもないいさかいで、空き缶収集をしていた教授に、縄張りを主張した男が襲いかかったのだとニュースでは報じられた。


「笑われてカッとしてやった」

「殺す気はなかった」 

「今は反省している」

「犯人は元ニート」 

「ひきこもりで親が死んだ後にホームレス」


 ニュースではそういった趣旨の1分にも満たない報道だったが、週刊誌では少しの記事が書かれ、それも教授が、元出版社社長であったという記事を最後に消えた。


 マスコミと呼ばれる‘ 情報の操作売却組織群 ’にとって、教授の存在は、価値より害が多いものだったらしい。


 出版社を含むこの国の‘ 情報の操作売却組織群 ’は国内外の利権によって、工作員と化した社員が多く存在している。


 スパイ天国などと揶揄したマスコミの内部が、そういった状態なのは、第二次世界大戦が原因らしい。


 この島域の‘ 統治組織 ’は、第二次世界大戦と呼ばれる“ ‘ みかけ ’同士の共食い ”による被害で、一度滅びている。


 この世界の‘ みかけ ’の仕組みでは、滅びたはずの‘ 統治組織 ’の財産と負債は、まったく別の組織である新たな‘ 統治組織 ’へと受け継がれる。


 その事実こそが、この世界の‘ 統治組織 ’がその構成員を征服して財産として扱う‘ 征服組織 ’である事の証拠なのだろう。


 そうでなければ、滅びた組織の負債が、受け継がれる訳がない。


 倒産した会社という組織の跡地に建った別の会社が、その会社の財産を受け継ぎ、負債の全てを負うなどという事がありえないのに、国家という組織では、それが当然受け継がれるという理屈。


 それが、‘ 武族 ’による‘ 征服統治組織 ’だった大日本帝國が滅び、勝利した連合国と呼ばれる“ ‘ 武族商人 ’による‘ 征服統治組織群 ’ ”によって、日本国という‘ 征服統治組織 ’が造られた事を示していた。


 結果、日本国という‘ 征服統治組織 ’は、複数国家の利権が絡み合う場所となり、‘ スパイ天国 ’となったらしい。


 マスコミと呼ばれる‘ 情報の操作売却組織群 ’は、その性質上、利権争いの先兵の巣窟になっているようで、通常は事件の報道に何らかの意図を混ぜている。


 そういう意味での価値が、教授の過去にないわけではないから、害のほうが多かったのだろう。


 そう考えて、調べたところ何人かの‘ みかけ ’が見つかり‘ 魔 ’を祓う事になった。


 教授を殺した男は、‘ みかけ ’ではなかった。


 ‘ みかけ ’の仕組みについていけなくなった自覚のない無邪気な共犯者だった。


 教授は、争いを嫌う人だったから、笑って無邪気な共犯者の主張を受け入れた。


 だが、それが‘ みかけ ’の仕組みに従い卑屈な共犯者となる事が、‘ 勝ち組 ’で自分が‘ 負け組 ’だという誤魔化しを信じ込まされた男には理解できなかった。


 自分と同じ‘ 負け組 ’に嘲笑あざわらわれたのだと、そう思った。


 そして、復讐心とすらいえない怒りのままに、教授を突き飛ばし、不運にも後ろによろめいた教授の足が、潰した空き缶で滑り、頭をコンクリートの角にぶつけて、教授は帰らぬ人となった。


 勝ち負けとは、争いの場だけで決められるもので、それで‘ 人の在り方 ’を測る‘ 卑しさ ’を理解できなくなれば、‘ 魔 ’に魅入られていくだけなのだ。


 ‘ みかけ ’の犠牲者が、‘ みかけ ’の犠牲者を害する‘ 搾取の仕組み ’。


 教授はその連鎖の果てに生命いのちを奪われた。


 それは不幸な事故ではあったが、‘ みかけ ’の仕組みによる必然でもあった。


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