40 VS.教育制度


40 VS.教育制度マインドコントロール





 学校という言葉に含まれる‘ 校 ’という文字が、かせという拘束器具や、さくという獣を遮り止める設備を表し。


 比べて矯正するという意味を持ち、やがて軍の指揮官を指す言葉となったように。


 この島域の教育制度マインドコントロールには、秩序と堕落は、対極のもので、秩序に従えない者は堕落しているという考え方があった。


 だが、実際にその二つは‘ みかけ ’の仕組みに従って共犯者として生きるか、‘ みかけ ’の仕組みを信仰して、‘ みかけ ’になる道を選ぶかの違いでしかなくなっていた。


 教育で教えられるべき、‘ みかけ ’の仕組みに抗う在り方は、教育制度マインドコントロールでは軽視され。


 ‘ みかけ ’の仕組みに抗う者は、‘ みかけ ’の仕組みの共犯者と‘ みかけ ’に共に現実を知らない愚か者と蔑まれる。


 現実を知って、尚も抗い続ける事を、マスコミや世間や教育制度といったマインドコントロールが、理解させないように広がらないように導いているからだ。


 ‘ 適者生存 ’や‘ 弱肉強食 ’という“ ‘ 人 ’が生存戦略として選ばなかった暴力原理 ”を、“ ‘ 人 ’が生存戦略として選んだ共存原理 ”で造り上げた世界に持ち込んだ本末転倒の‘ 誤魔化し ’で。


 あるいは、“ ‘ 理想 ’などを語る資格を持つのは、穢れを知らない特別で人間離れした存在にのみ許された行いだ ”と敬遠させる‘ 嘘 ’で。


 あるいは、“ ‘ 善 ’であろうとするのは愚かな子供の行いで、大人になるとは‘ みかけ ’の共犯者になる事だ ”というで‘ 蔑み ’で。


 あるいは、“ 不器用に欲望に抗い続けるのは、時代遅れの敗残者だ ”という‘ 貶め ’で。

 

 ‘ みかけ ’の仕組みを受け入れられない者を、‘ あざけり ’、‘ しいたげ 、’さいなむように仕向ける事で、人間の心に‘ 魔 ’を呼び込むマインドコントロールは‘ みかけ ’の仕組みを支えている。



 ‘ みかけ ’という“ 人間の記憶と欲望を持ったまま心を失った‘ 魔 ’ ”を祓い、人間にするのは、討魔者の役割だ。


 だが、‘ みかけ ’が造った仕組みを変えるのは人間の役割だ。


 だからこそ、一瓏イチロウは、人間として、それを成そうとしなければならない。


 例え、‘ みかけ ’の仕組みに縋りつく者達に憎まれ、貶められ、殺そうとされても。


 生命いのちがある限り、‘ 人 ’として‘ みかけ ’の仕組みに抗い続ける。


 そのためには、多くの同じ思いと志を持つ者達が必要だった。


 権力や利権といったものの利益を最も多く享受した裕福な子供達が、一瓏イチロウが通うことになる学校には多く存在する。


 この島域の統治組織の利権を継承するだろう子供達の中で‘ みかけ ’に抗う者達を創る事。


 権威主義 という‘ みかけ ’の仕組みに縋りつき、“ ‘ 個人主義 ’や‘ プライバシー ’という甘い毒 ”に浸る事をマインドコントロールで広めて、‘ 民主主義 ’を形だけのものにする生き方を選んだ‘ みかけ ’の共犯者を変えるのは難しい。


 だが、それが、一瓏イチロウが‘ 人 ’として選んだ道だった。


 討魔者としても、この3年の成果は、‘ 心の穢れ ’を見つけ、《浄化》スキルを自動使用できる‘ 霊体擬似生命 ’を大量に造った事くらいで、‘ みかけ ’から‘ 魔 ’を自動で祓う‘ 擬似生命 ’の開発は難航している。


 ‘ みかけ ’の仕組みを‘ 人 ’として変えていく事も、全ての‘ みかけ ’を消し去る事も、まだ長くかかるだろう。


 だが、それは決して届かない目標ではない。


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