38 VS.教育制度



38 VS.教育制度マインドコントロール







 一瓏イチロウが進学する先として選んだのは、この島域でも名門と呼ばれる一貫教育学校の初等科だが、入学までのハードルは高かった。


 それは、一瓏イチロウが、要保護児童だったからだ。


 名門と呼ばれる学校の初等科では、それが入学の障害になった。


 この島域の統治組織は、表向きとはいえ民主主義を掲げているが、同時に‘ 民主主義を望まない自由 ’を認めてもいるので、私立学校という名目であれば、‘ 反民主主義の権威主義 ’による学校運営も可能だ。


 ‘ 民主主義によって保証される自由 ’で、‘ 民主主義を望まない自由 ’を保障するという本末転倒な誤魔化しだが、それが資本主義の権威で階級を造る‘ みかけ ’の仕組みだ。


 ことわりを誤魔化し、歪めた理屈りくつを積み重ねて人々を欺き、人々がその詐術を見抜かないように考える力を子供から奪いながら育て、抗わないように人々の繋がりを断つ欲望を煽り、人の心に‘ 魔 ’をばら撒く。


 民主主義を掲げながら、権威主義で社会を運営している場所での‘ みかけ ’の仕組みとは、そういうものだ。


 ‘ 自由 ’自体は、民主主義を悪用する‘ みかけ ’の仕組みの騙る‘ 誤魔化しの正義 ’を蔓延はびこらせないために必要な考え方だが、‘ みかけ ’は‘ 自由 ’もまた悪用する仕組みを造っているという事だ。


 金銭がなければ選挙に勝ち抜くどころか参加すらできず、平等な立場で政治の場に立つ事ができなくされた制度と。


 政治を敬遠どころか嫌遠けんえんといっていいほど人々の生活から切り離すような風潮操作マインドコントロールが行われ。


 この島域の政治の場では、‘ 自由 ’の名の下に表向きは対立しあう与党と野党に別れて、一見別の正義を主張しているようなふりをしていても、利権の代表として‘ みかけ ’の仕組みの共犯者として行動しているにすぎなくなっていた。

  



 教育組織でも、それは例外ではなく、表向きは平等に受け入れるといいながらも、‘ 誤魔化しの自由 ’を悪用して、人間を‘ 境遇で差別 ’する。


 その人間が、どれだけ‘ 魔 ’を心に育てているかを見れないからといって、‘ 魔 ’がもたらした行動は調べられる。


 その行いをもって、個人を差別する‘ 必要悪 ’を語る者がいる。


 そして、個人ではどうしようもない‘ 境遇で差別 ’する事を、‘ 必要悪 ’と騙り、あるいは‘ 反民主主義の権威主義 ’こそが正義と傲慢にうそぶく‘ みかけ ’もいる。


 その偏見は、国家という統治組織同士の争いを煽る‘ みかけ ’の仕組みである“ ‘ 人種差別 ’や‘ 民族差別 ’と‘ 国家主義ナショナリズム ’の間で使われる誤魔化し ”と同じものだ。


 そういった‘ みかけ ’とその共犯者が、社会的弱者を差別する事で、階級主義ワールドカーストを造っているのが、この島域の現状だった。


 そして、その‘ みかけ ’の仕組みと戦う者達も、また‘ 武族 ’によって造られた古い‘ みかけ ’の仕組みや、‘ 平等と協和いう共産主義の理想 ’を悪用した新しい‘ みかけ ’の仕組みによって動く者達が多く。


 世界は、無数の‘ みかけ ’の仕組みに別れ、争い合う事で‘ ジメツ’を生み出し続ける巨大な‘ みかけ ’の仕組みとして機能していた。


 それは、文明という‘ ジメツ’に抗う仕組みを創るために、‘ 人 ’が否定したはずの‘ 自然淘汰という獣の理 ’を模していながら、獣の内に潜む‘ ジメツ’によって起こされる共食いそのものになった仕組みで。


 ‘ 魔 ’が見える討魔者から見たならば、巨大な‘ 魔 ’を生み出そうとする仕組みだった。


 その仕組みは、討魔者としても‘ 人 ’としてもそのままにしておいてはいけない概念ものだ。


 それに‘ 人 ’として抗うのだから、障害はあって当然なのだろう。


 一瓏イチロウという‘ 人 ’の前に立ちはだかった障害とは、具体的には二つだ。


 ‘ 資本主義社会 ’という“ 貨幣を持つ量で造られた階級主義ワールドカースト ”による境遇差別。


 ‘ 権威主義社会 ’という血縁や社会的地位で造られた階級主義ワールドカースト ”による境遇差別。

 

 ‘ みかけ ’の仕組みによって生まれた‘ カネとコネによる選別 ’と言われる階級主義ワールドカースト が、 一瓏イチロウという‘ 人 ’を、要保護児童という事だけで判断する境遇差別を、教育制度は許していた。



 “‘ 法の精神 ’と呼ばれる ‘ 人 ’が‘ 法 ’を護り、‘ 法 ’が‘ 人 ’を護るという法の在り方 ”に反し、‘ みかけ ’の仕組みによって歪められたルール


 そんなルールに従う必要はないが、ルールに従うしかないと思い込んでいる人間を害して、ルールを壊すのは、‘ 魔 ’を生み出すだけの行いだ。


 だから、一瓏イチロウは‘ 人 ’として‘ みかけ ’の仕組みに抗わなければならなかった。



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