★★★ Excellent!!! 眩しい太陽の島で起こる暗闇の犯罪。光と陰のコントラストが鮮やかな一作 柊圭介 中世のシチリア島を舞台にしたミステリです。 太陽の光が降り注ぐ眩しい島のイメージとは裏腹に、ここでうごめくのは犯罪に手を染めた人間のどす黒い欲と業。 底辺で暮らしてきた若者の必死で泥臭い生きざま。 明るく強い光が刺すほどに濃くなるような心の暗闇、その陰陽のコントラストがこのシチリアという舞台に映えます。 淡々と低めのトーンで語られる描写にも中世の匂いが濃く漂い、重みのあるリアリティを感じます。ミステリ展開のみならず、この時代のイタリアの風俗や社会を写し取った臨場感ある部分も読みどころです。 主人公が盗んだルビーは、果たして彼にどんな人生をもたらすのか。 渋い後味を残すラストシーンまでその行方を追ってみて下さい。 レビューいいね! 2 2022年3月5日 04:08
★★★ Excellent!!! 大衆作品にして豊かな文學、これぞ作家先生の筆! 汐凪 霖 (しおなぎ ながめ) たとえばホープ・ダイヤモンドの如く、あるべき場所から動かされるたびに、不幸を招き、死を呼ぶ。そう、それこそに、人は魅了される。悪人であればあるほどに。 悪党や小悪党や凡人。 赤い宝石に向かって、囲んで手を伸ばすように、幾人もの行動や言動が重なる。あっちこっちに所有されながら、その周囲に災難を散りばめさせる。関係無関係を問わず。 そして、波乱を呼ぶ。 文學表現の鮮やかさ、言い回しや言葉の選択に見える作者の教養深さが魅力的。 物語を描く。 文章を書く。 どちらにも秀でておられます。 美しいワインは色だけでなく、香りも、味も、極上なのですよね。 レビューいいね! 1 2021年7月13日 11:59
★★★ Excellent!!! 夜陰のなかでも力強く生きていく人々 月船みゆ シチリア島といえば、地中海を望む美しい景色が印象的です。文明の交差点でもあり、そして、「シチリアの晩祷事件」など、おどろおどろしい事件の舞台でもあります。 そんなシチリアの島で、青年ラウロは、パレルモ大司教の副葬品を盗み、大金を手に入れようと企みます。ところが、神の罰であるのか、仲間に裏切られ、毒を盛られ、どん底の人生を行くことになります…… 静かに、だけれど確かなる、自己肯定感を得たい方にオススメの作品です。 というのもこの作品、主人公は盗賊だし、出てくる人はほぼ悪人しかいないのですが、命の尊さを書いている、と思える作品なのです。 もちろん、ラウロをはじめ人を騙し利用したり、人を踏みにじるような人たちばかりの中で、様々な人が悪あがきして、それでも「生きていく」という様を、作者ならではのフラットな目線で描写しています。 第16話で、「人間に、簡単に死なれちゃ困るんだ。」ととある登場人物が言いますが、まさにそのとおりで。 この作品は、全体として晩祷が行われる夜陰の印象がありますが、そのなかでも力強く生きていく人々の姿が印象的でした。 この作品を読むと、自分も、彼らのようにバイタリティを持って生きてみたいなあ、と、ふと思います。 暗いけれど元気になれる、そんなまさに「文学」らしい素晴らしい作品ですので、ぜひご一読を。 レビューいいね! 2 2021年3月20日 17:38
★★★ Excellent!!! ラストの余韻がいいです 坂井令和 中編です。 シチリア島を舞台にしてます。 ミステリー的な要素もあります。 ラストの文学的な終わり方が印象的でした。 レビューいいね! 2 2019年7月8日 19:41
★★★ Excellent!!! 火の神エトナが人類の心を試しているように思える不思議な物語☆ 愛宕平九郎 この作品の舞台となっているシチリア島には、世界でも有数の活火山として知られているエトナ火山がある。作中のキーアイテムとして出てくるルビーの指輪には、この火山の神が遣わした使者のようにも見えた。 ルビーの指輪を求めて争う者たちの心の中。欲望まみれかと思いきや、ふとした時に見せる優しさや孤独から解放されたい気持ちも描かれていて、読んでいて不思議と心地良い気分になってくる。特に、ラウロと呼ばれる主人… 続きを読む レビューいいね! 3 2018年5月23日 14:22
★★★ Excellent!!! 地中海の島々と気候、イタリア、時代は14世紀中頃だろうか 深川 七草 このように物語の世界をしっかり想像させてくれる。 そしてその舞台では、人間臭い欲や邪推をめぐらせる醜い面が出てくる。しかし、信仰や後悔など単純ではないところも書かれている。 無駄な説明がなく詰め込んである。中編ということもあるので、ゆっくり考えながら読むのもいいのではないかと感じた。 レビューいいね! 3 2017年11月13日 21:00
★★★ Excellent!!! 悪意が普通に存在する島! 悠木 柚 中世という舞台設定から、何やらファンタジックな感じを受けて読み始めましたが、そんな優しい感じは一切なく、生きる事に執着する主人公の周囲で起こる悪意の連鎖が凄まじかったです。 人間の本音の部分を書いておられるのだなと感じました。 ラスト近くで主人公の心情が若干変化するのですが、それすら普通に生きていると誰にでも起こりうる変化であり、彼が特別な人間だと示唆する物ではありません。 これからも主人公… 続きを読む レビューいいね! 3 2017年9月16日 14:31
★★★ Excellent!!! 欲と物と人が織りなす、ドラマ。 ロドリーゴ 舞台はルネサンス時代頃、シチリア。静かな語り口で泥臭くも人間臭い物語が語られていきます。 決して楽で明るいお話ではないのですが、最後がこんなに輝かしいのはなぜでしょう。読後感は個人的には「ワクワク」といった感じでした。 作者様の文章力も、非常に高いと思います。 レビューいいね! 3 2017年8月28日 18:19
★★★ Excellent!!! 波乱な人生を送る男の物語。 ゆうけん イタリアにあるシチリア島。時代は現代ではなく古い設定で描かれています。奴隷商人が普通にいる時代です。 主人公であるラウロが墓荒しをするシーンから始まります。物語は進行に緊迫感があり読み耽ってしまう面白さ。裏切りや野蛮な行為が主人公を容赦なく襲います。墓荒しという悪行をしているラウロ。彼もまた生きる為に必死です。 私は読んでいて、いつ主人公が死んでしまうのかハラハラしました。それほど淡々と物語… 続きを読む レビューいいね! 3 2017年7月28日 04:08
★★★ Excellent!!! 異国の風を感じる不思議な物語 トカチェフ・シンジ 本作は詩・童話・その他に分類されていますが 確かにミステリーでもあり、歴史・時代・伝記っぽくもあり 最後に恋愛要素まで入って来るので、分類が難しいです。 舞台は中世のイタリア、泥棒稼業に身を置くラウロという男が主人公 このラウロがどう見ても泥棒には向いていない人物。 運がいいのか悪いのか、とにかくラウロの人生は行き当たりばったりです。 大司教の墓から奪った赤いルビーの指輪を巡って、いろんな人… 続きを読む レビューいいね! 3 2017年7月15日 08:42