どうしようもない男の、爽快感など無縁の、それでも読み進めてしまう物語

原色ばかりが強い古い洋画を見ているような、そんな錯覚を覚えます。


主人公の男は、学ぶ機会のない、意志も強くないし正義感のような、所謂「主人公らしさ」は何もありません。
機会があったという理由だけで犯罪に手を染め、そして騙され、命を繋ぐという悪運だけで辛うじて生き残っている、そんな男です。

生き方も衝動的で、後のことなど考えないか考えても浅いところしか至っておらず、当然のように追い出され痛めつけられる。

都合の良い展開どころか、都合の悪い展開ばかりです。

でも、それが人間性を剥き出しにして突き付けてくるようで、そのどうしようもない生き方の先を見たくて、読み進めてしまう。

そんな作品です。

エンタメとしては是非にとお勧めは出来ませんが、人間の弱く愚かな、それでもどこか惹かれてしまう一面を垣間見たい、そんな方は読んでみてはいかがでしょうか?

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