淡々としています。
主人公は、少しも悲しんでも怖がってもいない。
自分の心身が蛇になっているのに。
そこが怖い。
視点となる、変わりゆく主人公は
ただただ暮らしを続けています。
そんな場合じゃないのに。
徐々に蛇になっているのに。
抗うことを思いもしないのです。
そして結末。
蛇は何の象徴として描かれてきたのか?
己を噛み咥え、環になる蛇は。
その事が読む者に思い起こされ、最後の一打ちが加えられます。
既に定まった事からは逃れられない。
成る可くしかない。
本当に気味が悪いです。
※褒めています。
醜悪さも、狂躁もなくただ淡々と、忌まわしさへと向う。
怪談好きな方は、この上質な変身譚を、是非に御一くださいますように。
強烈な作品を読んだな、と読後にしみじみと感じ入りました。
主人公の身に起こった『ある変化』。
人間とは違う『別の生き物』の感覚に侵食されていく。その様子がありありと描かれ、『異形の感覚』というものを強烈に追体験させられることになります。その描写が強烈で、読者はぐいぐいと引きこまれることになります。
途中、主人公が卵を丸呑みするシーンがあり、故・楳津かずお先生の『蛇女』の絵柄がふと脳裏をよぎりました。改めて蛇というテーマとホラーとの相性の良さを強く実感させられました。
感覚的な過程の描写もさることながら、ラストの締め方もとても巧い。『蛇』というテーマならではのこの構図は、お見事と言いたくなる仕上がりでした。