概要
すまない、この研究室は三月末で解散だ
「今年の春から関西の大学に移ることになった。なのでこの大学の研究室は解散になる」
研究室のグループリーダーである猪俣准教授からの突然の異動報告。准教授は実は定年制のポジションではなく、10年の任期付きで今年度で終了だった。
佐々木はT大大学院修士課程の一年生。固体物理学の理論、いわゆる物性理論を研究する大学院生だ。T大学大学院のグローバル卓越プログラムの審査に通って、二年生になる春からは月額22万円の生活費が約束されたばかり。先生の指導を受けるために先生について行って関西の大学に移動したら、そのお金はパーである。やっと仕送りなしで生活できると思ったのに。なので至急別の研究室に受け入れてもらわなければならない。
理論系大学院生の知られざる生活。
『この仕事がおもしろい! 「働くヒト」
研究室のグループリーダーである猪俣准教授からの突然の異動報告。准教授は実は定年制のポジションではなく、10年の任期付きで今年度で終了だった。
佐々木はT大大学院修士課程の一年生。固体物理学の理論、いわゆる物性理論を研究する大学院生だ。T大学大学院のグローバル卓越プログラムの審査に通って、二年生になる春からは月額22万円の生活費が約束されたばかり。先生の指導を受けるために先生について行って関西の大学に移動したら、そのお金はパーである。やっと仕送りなしで生活できると思ったのに。なので至急別の研究室に受け入れてもらわなければならない。
理論系大学院生の知られざる生活。
『この仕事がおもしろい! 「働くヒト」
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★ Very Good!!研究者のリアル
自分自身も理工系学部の学生でしたが、聞き覚えのある話題が豊富で共感しながら読みました。SF小説などで出てくる「研究者」のような印象とは違い、より現実に近い研究室の日常を描いていると思いました。
自分はお世辞にも優秀な学生とは言えず、修士を追い出されるように卒業した人間ですが、博士を経て研究者になる主人公の物語はとても興味深かったです。具体的な地名などが書かれていたのも、場所をイメージしやすくて良かったです。
小説の文章も読みやすく、出来事を淡々と描いているようで、主人公の成長物語の要素もあり、地味に思われそうなテーマを面白くする技術が凄いと思いました。 - ★★★ Excellent!!!身につまされる親近感。「卓越自宅警備員」すら実在するらしくて。
浮世離れしているように見える象牙の塔も、内実はそうでもない。
いかに予算を獲得できるかが、優秀な研究者で居続ける要件だ。
文科省の政策で「役に立たない」分野の研究費は削減傾向にあり、
少子化とも相まって、日本の研究界はどの分野も元気がない。
そもそも日本の大学が持つ研究費の規模は、アメリカの約1/10。
アメリカは、政府の予算が大きい以上に大富豪からの寄付がある。
その潤沢な資金を求め、世界トップ層の研究者がアメリカに集う。
科学のあらゆる分野でアメリカが独走するのも当然のことだ。
T大は、日本の中では予算に恵まれた研究機関の1つと言える。
それでも、スタッフの任期制度を巡る問題は予てか…続きを読む