第2話 チュートリアル2
舌打ちと共につかれるため息。女は「最後のチャンスだったのに…」とわかりやすく肩を落とす。うん。いろいろと言いたいことがあるが最初にこれだけは言わせてくれ。
「はずれってどういうことだよ!?」
目眩が治まり気がつくと目の前に一人の女。しかもそいつにいきなりはずれ扱い。そして辺りをよく見ると先ほどまでいた道ではなくいつの間にかどこかの建物の中に俺はいる。せめて今俺はどういった状況に置かれてなんではずれなのかということを説明して欲しい。
「言葉通りの意味よ。あんたは特別な能力も技も何も持ってないカスよ」
「カスって……そんな言い方は無いだろ!?」
「だって事実じゃない」
なんなんだこの女は? 初対面の相手に対していきなりはずれって言い放ったあげく能無しのカス呼ばわりするなんて失礼にも程がある。
「ほんとなんでなのよ…あたしの予定だったらもっと可愛くて強い、それであたしのことを『お姉ちゃん』って呼んでくれるような女の子が来るはずだったのに……それがなんでこんな三枚目でパッとしない、中途半端な野郎が出てくるのよ……」
「三枚目で悪かったな。というか出てくるってどういうことだよ?」
女は俺のことを無視して嘆き続けている。話くらい聞いてほしい。
「エディカ、貴女の気持ちも分かりますがこの男の人は悪くありません。悪いのは貴女の運です」
「そうだけど……でも!」
「でもじゃありません。怨むなら妥協をしなかった自分を恨みなさい」
「うぅ……」
いつの間にかもう一人女が現れて、俺をはずれと罵った女―エディカに小言を言う。水晶の様に透き通った白い肌。同じく白くさらさらとした髪の毛。琥珀色に輝く瞳。そして安らぎを与えるような顔立ち。見るからに天使って感じだ。見た目からしていい人に違いない。
「分かりましたか? どの道、今の貴女には彼に協力してもらうしかありませんよ?」
「こんな野郎いても焼け石に水よ」
「枯れ木も山の賑わいという言葉もあります。捨て駒にはなると思いますよ?」
「それもそうね」
前言撤回。この女、天使は天使でも堕天使の方だ。
「あんた、名前は?」
「……
「ハルトね。あんた今日からあたしたちの仲間だから。死にたくないならきっちり働きなさい」
「え、やだよ」
「なんでよ」
「常識的に考えて初対面の相手に対してはずれとかいう奴の仲間になんてなりたいと思うか? 思わないだろ? そういうことだから、出口を教えてくれ。それと帰り道も」
「あらあら。それは無理なお願いですね」
「? どういうことだ」
「だってあなたはもう元の世界に帰ることが出来ないんですから」
は? この女何を言ってるんだ? 元の世界に帰れないだって? それじゃまるでここは別の世界だってことじゃないか。
「いやいや、冗談言うなよ。その格好だってなんかのイベントの衣装なんだろ? なんのイベントか知らないけどコスプレに熱中してキャラになりきるのもいいけどそういうことは抑え気味にしたほうがいいと思うぜ」
「冗談なんかじゃないわよ。あんたは別の世界からやってきた。それは事実よ」
「はいはい、そういう設定なのね。もう十分わかったから出口を教えてくれ。早くしないと試験に遅れちまう」
「……わかったわ。出口はそこの扉よ」
「なんだ。やけにあっさりしてるな。じゃ、俺は行くからな。もう会うことはないだろうが」
「いいえ。どうせすぐに戻ってくるわよ」
「はいはい」
ともあれ、これでやっと学校へ行ける。さっさとこの場を離れよう。
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