第21話 猫耳少女はプレゼント
「セツナ!」
声の主はセツナ。昨日俺が干し肉を与えたらお礼に五百万をくれた猫耳の少女だ。
「ここにいるってことはハルトも大規模討伐に参加するの?」
「もちろん。強い仲間が欲しいからな」
「はは。そりゃそっか!」
ペロッと舌を出しセツナは自分の頭を軽く小突く。仕草が見た目通り猫っぽくてとても可愛らしい。
「セツナも参加するのか?」
「うーん。ある意味そうだね。ボクも新しい仲間がどんな人達か楽しみだし」
こいつは王族に召喚されたそうだから、今の仲間もさぞ強くて頼もしいんだろうなあ。敵となるからには十分警戒する必要がある。
「ハルト。その娘は一体なんなの? あ、あたしはエディカ。この男の主人よ」
セツナの姿を確認するや、早速コンタクトを図るエディカ。
「ボクはセツナ。ハルトと同じで最近こっちの世界に来たんだ」
「そうなの。あたしもこんなブ男じゃなくてあなたみたいな猫耳美少女が欲しかったわ」
「うるせえ引き弱」
こっちだっていい加減負担を減らすために強い仲間が欲しいんだよ。
「ハルトを悪く言わないで! 確かに顔は良く見積もって中の下くらいだけど大事なのは見た目じゃなくて中身なんだから!」
セツナ、お前も今さりげなく俺の容姿のこと蔑まなかった?
「残念ながら人は見た目よ。あなたの言う通り中身も大事だけど、あたしたち美少女がブ男に何を言っても慰めにすらならないから」
その顔の皮を剥いで俺のと交換してやろうか?
「でも! ハルトは空腹で倒れているボクを気にかけて美味しい肉を分けてくれたんだよ! 美味しい料理の店も教えてくれたし!」
「美味しい肉? あんた最近ヴェノケンの肉しか食べて無かったわよね。もしかして……」
「言うな」
俺だって好きで食ってたわけじゃないし。その時別の食べ物を持ってたら勿論そっちを渡してたさ。無い袖は振れぬってやつだ。
「ふーん。まあいいわ。それで話を変えるけど」
「なになに?」
「その見た目……単刀直入に言うけどあなた今回のイベントの報酬でしょ?」
セツナが? イベント報酬?
「へえ……どうしてそう思うのかい?」
セツナはにっこりとした表情で問いかける。
「そうだよ。セツナは見た目通り獣人だけど、獣人なら他にもいるぜ。ほら。見ろよ」
俺は他の戦功者らしき人達を指差し、エディカを否定する。周りにはセツナ同様猫耳の人や兎耳をした人だっているし、セツナもその一人であろう。
「ハルトの言う通りだよ。ボク以外だってこういったなりをしてる人達がこの場にはいっぱいいる。根拠が全然無いじゃないか」
「いいや。それはありえないわ。そもそも普通に考えて、王族がこの時期に趣味で召喚をするなんてありえないのよ」
「お前には王族もそんなこと言われたくないだろうけど…しないのか? 魔物狩りの依頼だってあるし強い魔物を狩りたいから召喚で強い人を呼んだりとかすると思うんだけど」
「王族がわざわざ自分の命を危険に晒す魔物狩りを趣味にするわけないじゃない。私有の狩場があるんだし」
うーん。確かにそういわれれば納得できるが……でも。
「確証が無いんだ。それにどのみちイベントで上位に入れば報酬かどうかすぐにわかるんだし、今は気にしなくてよくね?」
「そうそう。楽しみは取っていおいた方が良いよ。エディカちゃん」
「「ねー♪」」
まるで長年付き合っている恋人のように息ぴったりの俺とセツナ。そんな俺を嫉妬のような眼差しを向け、地団太を踏みながらエディカは反論する。
「気にするわよ! あたしはその娘が欲しいの! そうだ、星眼鏡よ! 星眼鏡を使えば良いんだわ! 貸しなさい!」
「わわ! おい!」
無理やり俺の手の星眼鏡を奪いレンズ越しにセツナを見るエディカ。そんなことをしてもわかるのは星の数だけだって。意味無いっての。
ところがエディカはにやりとただ一言呟く。
「……やっぱりね」
星眼鏡を俺に叩きつけるように返すとエディカはいきなりセツナに抱きついた。
「な、なんだい⁉」
驚くセツナにお構いなしに頬ずりをするエディカ。
「ちょっと! やめてよ!恥ずかしいじゃないか! 周りの人達だって見てるんだし!」
「あら。女の子同士なんだから別にいいじゃない。減るもんじゃないんだし」
「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいよ! 離してよ!」
「やーだ。報酬だったのに違うってあたしに嘘をついた罰としてハグを要求するわ。一分経ったら離してあげるから」
「だ、だからその根拠が無いじゃないか! いいから離れてよ!」
「あら、根拠ならちゃんとあるわよ。ハルト。星眼鏡であたしとこの娘を見なさい」
「あ、ああ……」
見る、って言ってもこれでわかるのは個人の星の数と限界突破の数、あと文字の翻訳じゃないか。見てなんの意味があるんだ……か?
「星三と……星五⁉」
星眼鏡はエディカの星とセツナの星の両方を表示した。星五とは驚きだ。かなり強いじゃないか。ただ、セツナの方は星の横に〈present〉と表示されていた。
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