第32話 キング・オブ・ゾンビ
炎が収まり、陸に上がるとゾンビの群れは炭と化した。
「やったぜ! この調子でいけば優勝できるんじゃねえの?」
『ぜぇ、ぜぇ、……それまであたしたちの魔力が持てばいいんだけど』
『魔力を温存するための囮作戦です。ハルトさん。すみませんがもう少しだけ頑張ってください』
「了解」
ゾンビの頭を袋に詰め終え、作戦を続行。この天才ラッパー一ノ瀬遥翔に呼べない魔物などいないわ‼
「来い来い♪
濃い恋♪
故意に乞い♪
屍怖がれ♪
恋い焦がれ♪」
あれだけ派手にぶち殺したせいか、二十分ラップを歌い続けても今度は一向にゾンビが来る気配がない。警戒させまくっちまったか? 一回やめて様子を伺ってみよう。
「ふう……どうした‼ いるなら来いよ‼ 俺は逃げも隠れもしないぞ‼」
しーん。
ただ風だけが爽やかに吹く。そうかよ……そんなに俺が怖いのかよ。
「ならこれはどうだ‼」
俺は身に着けていた武器、薬を全て投げ、完全な丸腰となる。
「どうだ! 武器は捨てたぞ! これなら怖くないだろ‼」
完全にゾンビを挑発しているがこれも金と未来の仲間のため。与えられた役割を徹底的にこなしてやる‼
『……イインダナ?』
「⁉」
誰だ今の声⁉ 明らかにエディカやローネルじゃない。ゾンビが喋るはずもないし、別の戦功者なのだろうか?
『ソナタガオカシタツミ……バイニシテカエシテヤロウ」
茂みから声の主が現れる。声の主はマントを羽織り、奇妙なことに右腕がヒグマのように大きい。俺はそいつを直感的に、人間ではないと理解した。その証拠に服から見えている皮があるべきところには皮が無い。人体模型の様に筋肉が露出している。一応顔には申し訳程度の皮膚があるが、それでもおぞましい姿であることには変わりない。
「ワガナハエビルズ……アンデッドノオウ……ニンゲン……ヨケルナヨ?」
「え?ええええ⁉」
見えなかった。俺の身体は大きな右手で殴られ、湖を超えるほど遠くへ飛ばされていた。
「ガッ……ゲホッ‼」
地面に勢いよく叩きつけられる。口の中を噛んでしまい、思いっきり血を吐き出す。なんなんだ……なんなんだよあいつ‼
「マダオワッテナイゾ」
「この野郎……‼」
エビルズとか名乗ったそのゾンビは、いつの間にか俺の目の前に立っていた。
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